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鍼使いとドラゴンの子  作者: 琵琶まるお
一章 鍼使い
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始まりは唐突に

 昼休みにちょっとしたものを妻、つむぎに頼まれ買い物に出かけた。

昼休みは2時間とってあるので買い物に行ってもまだゆっくり弁当を食べる余裕があった。

買い物はよく行くドラッグストア。店はかなり大きく駐車場も広い。

運転が得意じゃない俺にとってはこの大きい駐車場はとても助かる。

最初に妻に頼まれたものをカゴに入れていき、その後自分の必要な物(ビールとおつまみ、お菓子)をカゴに入れていった。


「あとは…ティッシュをっと。…こんなものかな?」


 会計をサクッと済ませ再び車で帰る。

その途中だった。

交通量の多い大通りを走り、自分の店まであと5分というところ。

何とも言えない妙な異変に気付いた。

「ん?」

奇妙な違和感だった。

周りには多くの車が走っている。

バスもトラックもちらほら見える。

隣の車の運転手はなにか音楽を聴いているのだろう。

ノリノリで歌っているように見える。

なのに自分の耳には音が入ってこない。


最初は難聴かと思った。

しかし声を出せば自分の声はきちんと聞こえた。

外の音だけまるで聞こえなくなっていた。


異変はそれだけじゃなかった。

ほんの一瞬の事だった。

つい今しがた見えていた人や車が全て目の前から消えた。

道を走っているのは自分の車のみ。


歩いている人、世間話している人、買い物帰りの人、誰一人としていない。

風に揺られて葉が重なり擦れる音も、鳥の鳴き声も聞こえない。

ついには自分の車のエンジン音、自分の出す声も聞こえなくなった。

音がない。人もいない。

あまりにも静かすぎる世界。

まるで自分の周りの世界がすっぽりとなにかに切り取られてしまったような感覚だった。


気味が悪い、頭がどうにかなってしまいそうだ。

俺はどうしたんだ?耳も目もおかしくなったのか?

いったい何がおきている?


あまりにも非現実的な状況に頭が回らない。

その時、唐突に目の前に「魔法陣」が現れた。

まるでアニメやゲームで見るような魔法陣。

模様や文字が直径2メートルくらいの円形を形づくり光り輝いている。

その中心には黒い闇があった。

日の光すら飲み込んでいるような、まるでブラックホールのような黒だった。


「っ!?」

急に目の前に現れた魔法陣の壁との距離はあまりにも近かった。

大通りで大した混雑もなかったから50キロは出していた。

意味不明な状況で車を止めることすら忘れて走り続けていた。

回避不可能な距離。

(衝突は避けられない、ぶつかる!!)

覚悟をした。

衝撃に備え、目をつぶり全身に力が入る。


「っ!!!」

衝突した!骨すべてが粉々になってしまいそうな衝撃が……こない?

いつまでもその衝撃はこない。俺は恐る恐る目を開けた。

「あ…あれ?」

目を開けたはずなのにそこには光はなく闇のみだった。

目をつぶっていても開けていても目の前には闇しかいので自分が目を開けているのかどうかもわからない。


車に乗っていたはずなのに気づけばいつのまにかシートの感触も握っていたハンドルも消えていた。

闇の中に放り込まれたように、ふわふわと漂っているようにも感じる。

自分がその場に留まっているのか落ちているのか、それとも上にあがっていっているのかもわからなかった。

そんな状況なのに不思議と恐怖は感じなかった。

海の中のように獰猛な生物が見え隠れすることもなく、宇宙空間のように呼吸すらできないなんてこともない。

希望も絶望もないからこそ何も感じなかった。


もしかしたらあの壁のような魔法陣にぶつかって死んだのだろうか。

死んで意識だけ身体から抜け出たのだろうか。

「幽体離脱?フフ。」

わけがわからなくて笑えて来た。


その時、正面に小さな光が小さくうっすらと見えてきた。

電気のない長い長いトンネルの出口が見えてきたような。

光は徐々に強く大きくなってきた。

徐々に大きくなる光は俺の周りの闇を全て消し去った。

あまりの眩しさに俺は目をつぶった。

「うわぁっ!!」



2020年1月18日 一章完結。

           登場人物紹介を少しずつ書いています。大きなネタバレはなし。

           興味があれば是非お目通しください。

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