第68話
皆さんこんにちは。自分の前世が日本人だったと自覚してから早くも3ヶ月がたとうとしています。
私の周りでは色々なことが起きて、退屈しない毎日です。
・・・そして今日は夏休み前の試験の最終日でございます。今回は前回の失敗も踏まえ、家でお兄様とイアンさんという地獄から来た悪魔・・・ではなく家庭教師に教わったので、なんとかそこそこの点数は行けるのではないかと。今回はお父様もお母様も家に居るので、絶対に負けられぬ戦いでした。
「ジゼル、どうした?具合悪いのか?」
私がふらふらと歩いて席に戻ると後ろの席のアルド様が心配そうに言った。
「あ。アルド様。その、ここ数日あまり寝ていないもので・・・
テストが終わった安心感からか一気に眠気が」
「そうか。頑張ったのだな」
いつも厳しいアルド様がフッと私に向けた笑顔はギャップっていうのかな?破壊力バツグンである。あぁ。この笑顔が見れただけでも頑張って良かったな。
「ジゼルもプレアデスの母上の茶会に出るのだろう?」
「あ、はい。アルド様もですよね?」
「あぁ。お前、エスコート役は居るのか?」
「あー・・・。えぇと、イアンさんが」
「何!?アイツか・・・。うぅむ。アイツなら間違いなど起こさぬとは思うが・・・心配だ」
アルド様は顎に手を当てて何かブツブツと呟きながら考え込んでしまった。そして、ふいにアルド様が何かを思いついた様な素振りを見せ、私に有り難い提案をしてくれた。
「そうだ。シードゥスに何日か滞在するのなら我が家の別荘に泊まるといい。プレアデスの所の城より海に近いぞ」
「本当ですか?」
「あぁ。宿を取る事は無いと後で叔父上にも伝えておく」
「私は以前シードゥスのお茶会に行った時に、遠くからですが初めて海を見ました。キラキラとしていてとても綺麗でした」
「・・・お前が攫われるキッカケになったあの忌まわしい茶会か・・・」
「あ・・・。そ、そうですね・・・」
さっきまで機嫌良さそうだったアルド様から一転して瞬時にゴォッと音を立てて炎が燃え上がりそうな怒りのオーラを感じた。
「あ、アルド様。もう過ぎた事ですし、ね?」
「クッ。お前に免じて耐えるとしよう」
ふぅ、危ない危ない。プレアデスが席を外しているからいいものの、ここにプレアデスが帰ってこようものならアルド様がプレアデスを責めて一触即発の事態になっていたかもしれない。
解決した事件でまた揉めるなんて冗談じゃないわ。
何はともあれ試験は無事に終わった。後は夏休みを待つだけね。夏休みは、夏休みでカミーユ様の大会の応援とか、王家のお茶会とかイベントがごろごろあるから気合い入れてかないと持たないわね・・・。
「ジゼルー!帰るぞー!」
用事を済ませて戻ってきたプレアデスが教室の入り口から私を呼んでいる。
「ちょっと待って!じゃぁ、アルド様、また明日」
「あぁ。ゆっくり休め」
アルド様と挨拶を交して私はプレアデスの元へと向かった。
私とプレアデスはお互いに用事が無い日はなんとなく一緒に帰る流れになっていた。好きな人と下校とか、ゲームだったらあっさりだけど、実際にはこんなにもドキドキするものなのね。・・・まぁ、徒歩では無く馬車での下校だけど。
「ジゼル、いよいよ来週から夏休みだな」
「そうね。お茶会の準備しないと」
「そんなに堅苦しく考えなくていいからな?あ、そうだお前泊まる所は?」
「あ、アルド様の別荘に家族ごとご招待されてるわ」
「そ、そうか。(くそー!悔しいけど城よりアイツの別荘の方が海に近いんだよな)」
「あ、でも家族と一緒だから心配要らないわよ!?」
プレアデスが一瞬ピクッと反応したので、私は必死に再度家族も居るよ、と強めにアピールした。
「それもそうだな。滞在中は俺も毎日顔を出すから」
「うん。ありがと。あふ・・・!わ!やだ、ごめん!」
プレアデスが笑顔になった所で、ホッと気を抜いたらアクビが出てしまった。
「ハハ!眠かったら俺に寄りかかって寝ろよ」
「わっ!」
プレアデスがグイッと私の肩を抱きよせて、私の頭を自分の肩に乗せるように促した。私は寄り添うのが恥ずかしくて少し躊躇したが、押し寄せてくる眠気の波には勝てずプレアデスに寄りかかってそのまま心地よい眠りに落ちた。
「ジゼル、ジゼル!着いたぞ」
「ん?もう朝・・・?」
「ぶはっ!朝じゃねぇよ。寝ぼけてんだろ」
「んん・・・?えっ!?」
起きたら横になってプレアデスの膝枕で眠っていた。わぁぁぁ!私どんだけなのー!?めちゃくちゃ熟睡してた!
「ごっ、ごめん。爆睡してたわ」
「ん?いや、気にすんな。・・・その、俺も、お前とこうしてるの嬉しかったし」
「プレアデス・・・」
私ってば愛されてるわ。私はそっと起き上がり、プレアデスと見つめ合った。あ、この流れは・・・キス・・・?
「んっぉっほん!!ジゼルお帰り!!」
「ひっ!お兄様!」
お兄様が玄関まで出迎えててくれてたらしく、なかなか降りてこない私に痺れをきらした様で、馬車の中で見つめ合う私達の間に割って入ってきた。
「全く。少し目を離すとこれだから・・・。あ!プレアデス・・・様っ!僕はお茶会に招待されていないけど、僕もシードゥスには行くからね!」
「へ?マジかよ・・・。ジゼル、茶会の日は諦めたから、夏休みは絶対に二人きりでどっか行こうな!」
「う、うん・・・」
「ちょっと!僕の前でふしだらな約束しないでよね!」
うぅ。アルド様とお兄様とイアンさんとプレアデス。なんか前途多難な予感がする・・・。
それに、アンジェロ。アンジェロの問題もある。
「じゃぁ。また明日な、ジゼル」
「えぇ。なんかごめんなさい」
プレアデスの馬車を見送り、お兄様と共に家の中へ入るとお母様が心配そうな顔をして立っていた。
「お母様、ただいま帰りました」
「お帰りなさい。ねぇジゼル。最近よくプレアデス殿下と帰ってくるけど、何か粗相はしていないでしょうね?」
「大丈夫です!良くして頂いています!」
「そう・・・?あんな事があったばかりだし、いくら王子様といえどもアルド殿下とは全くタイプが違うから、お母さんちょっと心配なのよね」
つまり、幼い頃から良く知っている品行方正のアルド様と隣国の良く知らない危険な香りのするプレアデスを比べて心配になったって訳ね。お母様は多分、屋敷が襲われたり私が拉致監禁されたのはプレアデスにも責任があると思っているのだろう。
いくら事件を起こしたのはミレーヌ嬢であって、プレアデスは悪くないと聞いてはいても、親の立場からしたら微妙なのかもしれない。
「お母様。私はプレアデスは信用に足る人物だと思っていますわ。一緒に居て心が安らぐ相手です。それに・・・あの事件の事だって、自分の怪我よりも私の安否ばかりを優先して心配してくれた人の痛みの分かる心の優しい方です」
わ!自分の想いを口に出すことによって、自分がどんなにプレアデスの事が好きなのかを再認識する事となった。
私、自分で思っていたよりもずっと、プレアデスの事が好きなんだわ。
「・・・そうね。お茶会の時の振る舞いを見て考えさせてもらうわ」
お母様はまだ納得がいっていないご様子。
「お母様がきっと考えを改めてくれると信じています」
「ジゼル・・・。言う様になったわね。さ、そろそろ夕飯だからジゼルは着替えてらっしゃい。ほら!ジルドラもボケーっとしていないで、サラマンジェに向かいなさい」
「は、はい。でも母上、今なんかジゼルがプレアデス(※本人が居ないから呼び捨て)の事をめちゃくちゃ褒め称えたように聞こえましたが・・・まさかジゼルが僕以外の男を褒めるなんて・・・そんな事・・・」
「えぇい、女々しい!いい年して妹離れなさい!」
「ひぇぇ!ジーゼールー!!」
半ばお母様に引きずられるようにしてお兄様が去った後、私はお茶会の場がただでさえ混沌とした人間模様に加え、お母様によるプレアデスの品評会みたいになりそうな事を案じていた。
ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました((〇┓ペコリ
2/15 冒頭文章を一部修正しました!すみませんでした!修正前は、転生してるのに「この世界に来てから」とか素っ頓狂な事書いてしまいました。。。精進します、、、〇rz




