第58話
プレアデスと両想いになった日から一夜が明けた。まるで昨日の事が夢だったのではないかと思うほど私は浮かれて地に足がついていなかった。
しかし、これからアルド様やスティードに告げなければならない事をすぐ様思い出し、シャンと背筋を伸ばして気持ちを切り替えた。
学園に着いて、深呼吸を2、3回してから教室の中に入った。
教室の中にはアンジュとアルド様が席に着いて談笑していた。スティードとプレアデスはまだの様だ。
二人に挨拶をして、自分の席に着いた。思えば小さい頃から私達3人はずっと一緒だった。アルド様が士官学校へ行ってからは少し疎遠になってはいたが、アンジュとはその間もずっと一緒だった。
まさか、私がアンジュに好きな人を告白する時が来るなんて。しかもサポキャラの癖に攻略対象者を好きになってしまうなんて。
「よーっす!お前ら朝早いな」
がタンッ
ヤバい。プレアデスの声にビクッと反応してしまった。思った以上に私は緊張しているらしい。
“好き・・・。プレアデスが、好き”
“俺も・・・、俺もお前が好きだ。ジゼル”
わぁぁ。駄目だ!昨日のやり取りをプレイバックしたらドキドキが止まらないっ!
「なー、ジゼル」
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「なっ!?」
プレアデスにポンと肩を叩かれて思わず叫んでしまった。
「ジゼル、様子がおかしいぞ?何かあったのか?まぁ、プレアデスに触られて不快な気分になったのかもしれんがな」
「おいっ!アルド、てめぇ!俺はれっきとしたジゼルのカレ・・・」
「プレアデス!!」
アルド様の言葉に対して勢いで私達の関係をカミングアウトしそうになったプレアデスを慌てて制す。
「アルド様、お騒がせしてごめんなさい。昨夜ボニーとユミルと怪談をしてしまいまして・・・。まだ少し怖いのを引きずっているのですわ」
「そ、そうか。そういえばお前は怖いの苦手だったな」
あぁ。アルド様。そんな眩しい笑顔を向けないでください。アルド様はプレアデスの言葉を途中で遮った私に一瞬訝しげな顔をしたが、何かを思い出したのかフフッと優しい笑みをこぼした。
ヤバい。手汗が半端ない・・・。
「皆、おはよう」
「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
「よーっす!」
「おはよう、スティード」
えぇと、役者は揃ったわね。
「あの、皆に伝えたい事があるのだけど・・・。昼休み、中庭に集まってもらえるかしら?」
「はい、もちろんです。ご飯もご一緒しましょう」
アンジュがにこにこ微笑みながら了承してくれた。
「あぁ、俺も構わないぞ」
「俺も大丈夫だよ」
続いてアルド様とスティードも了承してくれた。普段からほぼほぼ同じメンバーでお昼を共にしているのだけどこんなにも、心構えの要る昼食は初めてだ。
本来のアドアンならば、アルド様やスティード、カミーユ様が私ではなくアンジュの事を好きになっていれば・・・こんなに辛い思いをする事は無かっただろう。でも・・・だとしたらプレアデスも私の事を好きになる事は無かっただろう。
自分に都合の良い事ばかり考えてしまう。なんて私は自分勝手なのだろう。
でも。
私は他の誰でもなく、プレアデスと共に居たいと願った。
昼休み、私は皆を前にして覚悟を決めた。
「あの、あのね。私は・・・」
皆の視線に臆しそうになる。プレアデスを見ると、プレアデスは真っ直ぐに私の目を見て頷いた。うん、貴方が信じてくれるなら、私は頑張れる。
「あの、アルド様もスティードも私を好きだと言ってくれて嬉しかったです。でも、私は二人の気持ちには寄り添えません。なぜならば私は、プレアデスの事が好きだと気付いてしまったからです」
私はアルド様、スティード、アンジュの目をしっかりと見て最後にプレアデスと目を合わせました。
「だから、ごめ・・・」
「謝らなくていい」
「えっ?」
ごめんなさい、と言いかけた私をアルド様が制した。
「お前は悪くないのだから謝る必要はない」
「そ、そうだよ。俺なんとなくこうなる気がしてたし」
アルド様に続いてスティードも口を開いた。アンジュは気まずそうにオロオロしている。うぅ、ごめんね。
「それに、俺はお前がプレアデスを好きでも諦めるつもりは無いぞ?」
「へ?」
思わずマヌケな声を出してしまった。ち、ちょっと待ってよ?あれー?
「人の心は変わるものだ。この先ずっとお前がプレアデスを好きだとは限らない」
「アルド様・・・」
「お、俺だって!俺の気持ちは俺のものだから。俺がジゼル嬢を諦める時は俺が自分の気持ちに区切りをつけた時だけだよ!」
「スティード・・・」
「「隙があればプレアデスから奪う!」」
「テメェら・・・上等だぜ。取れるもんなら取ってみな!」
あれ?なんか変な方向に行ってない?私二人を傷つけたくないって死ぬ程悩んだのに、二人は悩むどころか俄然やる気になってるんですけど?
二人の宣戦布告にプレアデスも臨戦態勢に入ってるんですけど。
「おめでとうございます」
にこにこしながら、KYにも私とプレアデスにお祝いの言葉を述べたアンジュ。今はこの異様な空気をバッサリと断絶してくれたアンジュに感謝だ。
「お前が思い詰めた顔をしているから何事かと思ったぞ。さぁ、昼食をとろう」
「俺も凄く心配したよ。ジゼル嬢の顔色凄く悪かったから」
アルド様もスティードも何事も無かったかの様に昼食をとり始めた。え?二人にとって大した事無い話なの?あれ?好きな人が他の人を好きなのって一大事じゃないの?私は腑に落ちないながらもいつも通りに接してくれている二人に感謝した。もしかしたら私を悲しませまいと振る舞ってくれているのかもしれないから。
私はいつも通りの雰囲気のまま昼食を終えた。
放課後、カミーユ様が部活に行く前に少し時間を取ってもらい昼休みにアルド様とスティードに伝えた事を同じ様に伝えた。
「へぇ、そうなの?ジゼルちゃんの好みってあぁいう感じなんだー。んー、でも高校生活はまだまだあるし俺もジゼルちゃんの事諦めたくないなぁ」
「えっ?」
「俺の格好いいところ、沢山見てもらわないとだな!そうと決まれば練習あるのみだね!善は急げ〜!じゃあね!」
カミーユ様はそう言い残すと走りながら運動場に走っていった。
カミーユ様、あなたもですか!いや、私のどこにそこまでの魅力があるのか。周りを見てみましょうよ!素敵なレディ達が沢山居ますよ?
なんだろう、この世界の殿方には諦めるって選択肢は無いのかな?
しかし、私には他に好きな人が居る、私はプレアデスの事が好きなのだと伝える以上の事は出来ない。それこそ、スティードの行った通り皆の気持ちは皆のものだから。私が、私の事を諦めてくれと皆の気持ちの行き先を決めるべきでは無いと思った。
校門へ向かうとプレアデスが私を待っていてくれた。私は、プレアデスの姿を見つけるとホッと安心した。
「ジゼル、大丈夫だったか?」
「うん。あのね・・・」
私がカミーユ様の返事を伝えると、プレアデスは「アイツもか」と項垂れてみせた。
「まぁ、誰にも渡す気なんてねぇけどな!」
プレアデスがそう言って私を自分の方へグッと抱き寄せた。
「ちょっと!人が見てるじゃない!」
「いいだろ?俺のもんだって見せつけとかねぇとな」
そう言ってニッと自信たっぷりの笑顔を見ると心がギュッとなった。あぁ、やっぱり私はこの人の笑顔を見ると幸せな気持ちになるし、心からこの人の事が好きなんだと思った。
ここまで読んでくださいましてありがとうございました!
なんとかギリギリ正月三が日以内に更新できました。1分前とか、めっちゃギリでしたが。このコメントは日付が変わってから書いていますので改稿日は4日になりますがね(-∀-;)
かなり遅くなりましたが明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します。




