表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/92

第51話

 土の日、私はアマルシスさんをお招きするべく朝から張り切っていた。

 昨夜の夕食時に、友人を家に招待したいと家族に話した所、お兄様も同席すると言い張るので、お父様に言ってお父様の仕事をお兄様に回してもらった。これでお兄様対策はぬかりないわ。

 せっかくのチャンスをくだらない事で潰してなるもんですか。


「お嬢様、アマルシス様がお見えになりました」

「あぁ、すぐに行くわ!」


 私はアマルシスさんがここまで案内されてくるのを待ちきれずに、アマルシスさんを玄関まで迎えに行った。


「アマルシスさん、ようこそ!」

「ジゼル様、この度はお招き頂きありがとうございます」


 アマルシスさんは、いつものゆるふわ三つ編みで水色のボンネットを被り、アリスの様な水色のエプロンドレスを着ていた。かっ、可愛い!フリフリの服が超似合う。やっぱりアーティストは服のセンスもいいんだなぁ。


「私の部屋で語り合いましょう!こちらです」

「ふふ。ジゼル様のお部屋、楽しみですわ」


 アマルシスさんは最初こそオドオドしていたが、一度気を許してさえもらえれば、とても気さくな方だった。

 私の部屋まで案内すると、アマルシスさんは興奮した様子でこう言った。


「す、凄いです!ジゼルの部屋、ちゃんと設定資料通りですね!しかも、設定には無い、玄関からジゼルの部屋までの道のりとか見えない所まで、ちゃんとしてましたね!」

「ええ、私も最初は感動しましたよ」

「あっ、この机の引き出しにはあの、秘密の日記が・・・!!ふわぁぁぁぁ!本当に本当に私アドアンの世界に居るんですねぇぇぇ!」


 アマルシスさんは部屋の隅から隅まで眺めてはとても嬉しそうにしている。ここまで喜んでもらえたならば、招待したかいがあるってもんよ。私はアマルシスさんと一緒にいつもボニーやユミルと作戦会議や女子会をしているテーブルについた。

 最初の一杯目の紅茶だけ淹れて、メイド達には部屋から出ていってもらった。


「よし、ここではもう誰も居ないんでシズカさんとお呼びしますね!シズカさんも私の事は杏で。アドアンの話をするのにジゼルとは切り離して考えていただければ、と」

「はい、わかりました!杏さん!」

「んー、やっぱ同い年なんだし、敬語やさん付けはいらないかなぁ。よし!呼び捨てでいいですよ!」

「あ、は、はい。では私の事も呼び捨てで構いません」


 あー、なんかあのカシス先生が私の部屋に居るって浮かれ過ぎててグイグイ行ってしまったわ!焦り過ぎよね。引かれたかしら・・・。


「では、本題の相談したい事なのだけど・・・」


 私はシズカさん改め、シズカに前世の事から今現在置かれている状況や、()いてはプレアデスの事までもをざっくりと説明をした。


「えっ!何その胸熱な逆ハー(レム)展開は!そして、プレアデスまでもが前世が日本人とか!探せばまだまだ“前世が日本人”出てくるかもしれないわね!」

「でね、この状況は本編には無いし、プレアデスは絶対に隠しキャラだと思っているの。だって声が・・・私の大好きな尾畑大樹(おばただいき)さんなんだもの!!」


 尾畑大樹さんは私が一番大好きな声優さんで、ヒーローから悪役、ナレーションや吹き替え、さらには乙女ゲームやBLものまでそのイケボを披露している売れっ子声優さんだった。そういや、さっきシズカはプレアデスの事を呼び捨てにしたよね?と、言う事は・・・。


「うん、プレアデスは隠しキャラで間違いないわ。そしてCV(キャラクターヴォイス)も尾畑大樹さんでこちらも間違い無し」

「あぁ、やっぱり!」


 やっぱり、そう、よね。自分の直感が合っていたのがわかってスッキリはしたが、プレアデスが隠しキャラでアンジュの攻略対象者である事が確定した事に私は少なからずショックを受けていた。

 や、やだ。私なんでこんなに動揺しているのかしら。あぁ、そうか。大好きな尾畑さんのキャラをアドアンで攻略出来なかった事への後悔の念かもしれないわね。だって攻略どころかプレアデスルート未プレイなんだもの!どうせ死ぬならプレアデスを攻略してから死にたかったー!


「私はアドアンの世界なら、アンジュがイベントを起こして行くのが当たり前だと思っていたのだけど、当の本人(主人公)は恋愛毎に全く興味が無く、イベントも起こさず(なんならやんわりと避けている様なそぶり有り、さらに私に押し付けている様なそぶりも)、そしてフラグを立てない毎日・・・自分がサポキャラなのか何なのかわからなくなっているのよね・・・」


 私は思いの内をシズカに吐露(とろ)した。 


「うーん、もしかしたら設定はアドアンのまんまだけどパラレルワールドって可能性もありそうよね」


 シズカが一口紅茶を啜って、可能性の話をしだした。


「パラレル、ワールド?」

「そう。そもそもアマルシス()はともかく、ジゼルやプレアデスというメインキャラの前世が日本人だと言う事からしてアドアンの設定には無いし、こんな序盤から攻略対象者が告白してくるとか、もうバグというよりは別世界と考えた方がしっくり来ない?」

「それは・・・確かにそうだけど・・・」

「ジゼルの拉致事件とか、そんな大きな事件のイベントは本編では起こらないし」

「うっ・・・。それはそうなんだけど」

「だから、杏が誰か気に入った攻略対象者とお付き合いしても何も起こらないんじゃない?」

「えっ!そ、それはおこがましいわ!それに、何かあったら恐いからやっぱり卒業までは安心できないわ。そ、それより隠しキャラってプレアデスだけなのかしら?」

「ええ、本編での隠しキャラはプレアデスだけね。続編では新キャラが出てくるのだけど、リリース前だから存在しないと思うわ」

「そっかぁ。じゃぁ、今後出てくる殿方でフェルナンド(来年入学する攻略対象者)以外は気にしなくていいのね!」


 私は一安心して、お茶菓子のアップルパイをフォークで切り分けて頬張った。


「ジーゼールー♪お友達って女の子かい?もちろん女の子だよね?」

「あぁっ!ジルドラ様っ、今はジゼル様はお話中なので・・・」


 ガチャッとドアを開けてお兄様が部屋に入ってきてしまった。この人は本当に・・・っ。


「わぁっ!可愛らしいお友達だね!初めまして、ジゼルの兄のジルドラだよ。宜しくね」

「は、初めまして!あの、アマルシス・レクターと申します。よ、宜しくお願いしますっ」

「お兄様っ!お父様の仕事はどうしたんですか?」

「もう終わったよー!せっかくジゼルがお友達と遊ぶのにいつまでも仕事してられないよー」


 いや、私のお友達とお兄様は何の関係も無いじゃない。いや、余りの勢いにシズカが引いている。


「ご、ごめんね。アマルシス。ウチのお兄様少し特殊で・・・」

「いえ、面白そうな方ですね」

「わー、ありがとう。嬉しいな♪」

「プーックスクスクス!褒めてない、褒めてないですよ!なのにそんなに嬉しそうにして・・・クスクス」


 まー、お兄様が居るならもちろんこの人も居る訳で。


「もー!挨拶が終わったなら出ていってくださいよ!お兄様も、イアンさんも!!」

「えっ!?」


 二人の退出を促すと、シズカが驚いた様な声をあげた。


「え、どうかした?アマルシス」

「だ、だって・・・、新キャラ・・・!」

「へ?」

「あ、あの人・・・!」


 シズカがあの人と視線を向けているのはイアンさんだった。


「えっ!?まさか!!と、とりあえず、二人とも出ていって!」

「えー!せっかく仕事を早く終わらせたのにー!」

「ボニー!お父様を呼んできてー!」

「わ、わかったよ!もう!行くよ、イアン!」

「プーッ!骨折り損・・・!クスクス」


 良かった。今回の帰省はお兄様だけじゃなく、お父様とお母様も一緒で。二人は嵐の様に去っていった。


「で、イアンさんが新キャラってどういう・・・?」

「え、ええ。まだ、ラフ画だけだったからまさか存在しているとは思わなかったわ。え?彼はここの執事なの?」

「えぇ、お兄様付の執事だけど」

「うぁぁぁ。イアンは本当はアンジュの家に来る設定だったのよ」

「えっ!イアンさんは16歳の時から我が家に執事見習いで来てからずっと我が家の執事よ。今は私とメイド達のBL座談会のネタになる位お兄様と常に一緒に居るわ」

「・・・やっぱり、私はパラレルワールド説を推すわ!設定すら変わっているもの。今後どうなるかは、私にも検討はつかないわ」


 えぇー・・・。新キャラがイアンさんだなんて。アンジュとイアンさんねぇ・・・。いやー・・・。無いでしょ。確かにイアンさんは眉目秀麗だけど性格がなぁ・・・。うん、無いわ。あの人にアンジュは、とてもではないけど任せられない。

ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました(^^)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ