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第50話

 刺繍をし始めてから一週間ちょい。ようやく心配と迷惑をかけた方々の分のハンカチの刺繍が終わった。

 長きに渡る己の精神との戦いであった。完成が先か、私の指の寿命がくるのが先か案じられたものの、全てをやり遂げた今、なんだか達観できた気がする。

 アンジュにはちょっと凝ったウサギとクマの刺繍でしょー、アルド様には薔薇の刺繍、プレアデスには桜の刺繍、スティードには向日葵の刺繍、カミーユ様には桔梗の刺繍を施した。後は日の日に料理長のジョセフと一緒にお菓子を作ればお父様とお母様への女子力のアピールにもなるし、月の日には渡せるし一石二鳥ね!

 そうだわ。お菓子はいっぱい作って他の攻略対象者の方やアマルシスさんにも渡そうかしら。これからアンジュがお世話になるかもしれない方々だからね。繋がりは大切にしなくちゃ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 


 その翌日、学園に登校して1時間目に席替えがあった。くじ引きで私は窓際の後ろから二番目の席になった。アンジュは・・・、あぁ、私の斜め後ろね。つまり、窓際から二列目の一番後ろだ。

 ・・・何かおかしな力でも働いているのか、私の後ろにスティード、私の隣はアルド様、私の前はプレアデスとアドアンキャラ大集合だった。

 まぁ、普段仲のいいメンバーだしなんら問題は無いのだけど、ただ、私とアンジュの席逆じゃね?と思ったので交換してもらう事にした。


「アンジュ、私一番後の席って座ったことないから交換してくれないかしら?」

「良いですよ」


 ガタガタと机を動かすと、プレアデスが「俺この席だとアンジュが黒板見えないかもしれねぇから後ろ行くわ」とか言い出して私の右隣の生徒と交換してしまった。おい!プレアデスが移動したら、わざわざ私がアンジュと交換した意味が全く無いじゃないか!

 

「それもそうだな。ふむ、じゃぁジゼル。俺と交換しようじゃないか。俺が前だと黒板見辛いだろう(プレアデスのやつめ。ジゼルの隣にはさせん)」

「え、でも私一番後の席が・・・」


 そもそも“一番後ろの席になった事が無いから”という理由でアンジュと席を交換したのにと言おうとしたが、


「黒板が見えなくて成績が下がっては元も子もないだろう?」


 というアルド様の一言で打ち消されてしまった。


「あぅ・・・、はい」


 アルド様の威圧感に押されて結局最初に決まった席の隣に移動しただけになった。でも、アンジュが隣だからまだいいか。


「アンジュ、これから暫く宜しくね」

「こちらこそ、ジゼルが隣でとても嬉しいです」


 くぅぅ。天使!あぁ、もう天使!!アンジュをアンジュ(天使)と名付けた神父様は先見の明があったのね。アンジュの柔らかな笑顔を見る度にこればかり考えてしまう。私は生まれてこの方、こんなにも美しく優しく淑やかな女性は見た事がない。なのに後のやつらはなんでアンジュに惚れないの?アンジュ以上の女性なんてこの世界のどこを探しても居やしないのに。私を好きだとか血迷った事言ってるけど、自分で言うのもなんだけどさ、趣味が悪いんじゃない?

 

「なぁ、あそこの席だけもの凄いオーラを放っているよな」

「あぁ、アンジュ様というか、主にジゼル様を見ると後の二人が物凄い形相で睨んでくるしな・・・スティードはそんな事ないけどさ」

「俺もこの間、ジゼル様に先生の配ったプリントの説明をしてるだけでプレアデス殿下に睨まれて、視線だけで殺されそうになったぞ」

「「「触らぬ神に祟りなし、だよな」」」


 なんだかクラスの男子達がこちらをチラチラ見て、ヒソヒソしている。そういえば、最近クラスの男子に話しかけるとそそくさと手短に済まされてしまうのだけど私何かしたかしら?前世では引っ込み思案だったから、せっかくお嬢様に生まれたこの世界ではリア充を目指してみたいのだけど。

 もしかして、机にナイフが刺さってたとか拉致事件とかあったから絡みづらいやつって思われてるのかしら?


 休み時間にアンジュと一緒にアマルシスさんのクラスを訪ねてみた。

 

「あっ、杏・・・じゃないジゼル様!ご機嫌よう!」

「ご機嫌よう、アマルシスさん。アマルシスさんにアンジュを紹介しようと思って」

「あの、初めましてアンジュ・オーランシュと申します」

「ほ、本物・・・!あっ、じゃなかった!アマルシス・レクターです!よろしくお願いします」

「アマルシスさんはとーっても絵が上手いのよ!だから、今度美術室へ見学に行きましょうよ」

「まぁ!私は絵が下手なので、羨ましいです。是非、お見せ頂きたいです!」

「どうぞ、どうぞ!毎日放課後は美術室に居ますので、是非いらしてください!」


 うんうん。そしてアレク様とアンジュが親密になれば・・・。ふふふ。


「あっ!そうだ!アマルシスさん、明日はお暇ですか?」

「え?えぇ。特に用事は・・・」

「あっ、じゃぁ相談したい事があるので家に来てもらえないですか?」

「ジゼル様の家にですか?いいんですかね?」

「いいんですいいんです。ちょっと他では出来ない話なので・・・」

「わかりました。それでは明日お伺いしますね」

「ありがとうございます。あ、丁度休み時間も終わりましたね!それでは明日!アンジュ、行きましょう」

「はい・・・」


 私とアンジュは自分達の教室に戻って席についた。心なしかアンジュが元気無いような・・・。


「ごめんなさい、アンジュ。無理に紹介してしまったかしら?」

「い、いえ!とんでもないです。とても素敵な方でしたね」

「そうなのよ!アマルシスさんは私が尊敬している人なのよ〜」

「・・・羨ましいです。その、ジゼルにそんな風に思ってもらえて・・・」

「えっ?何言ってるのアンジュ。私はアンジュだって尊敬しているわよ!」


 アンジュが落ちこんでいたのは私のせいだった。アンジュの前でアマルシスさんを家に呼んだのは配慮が足りなかったわね。

 でも、アンジュの事を相談するのに、アンジュを呼ぶわけには行かなかったし・・・。アンジュが大切な人だからこそなのよ!


「アンジュは、こんなガサツな私とずっと一緒に居てくれるし、大切な大好きな人よ」

「はぅっ・・・!う、嬉しいです!私もジゼルが、だ、大好きですっ!」


 やだ、アンジュってば顔をまっかっかにして。まるで告白しているみたいじゃないの。

 だから、何故その様な可愛らしい顔を私に見せるのよ。その顔を私に見せるのは勿体無いって!

 

「なぁ、俺は俺は?俺の事も大好き?」


 斜め後ろのプレアデスが私の背中をツンツンしながら甘い声を出して問いかけてきた。この人、最近声にバリエーションを持たせてくるのよね。プレアデスの顔を見ないと、大好きな声優さんが色んなキャラを演じているみたいでキュンキュンしてしまう。なんだか本気で私を攻略に来ているみたい・・・。頑張る方向が違うんだけど・・・。


「おい!今は授業中だぞ!」

「ちぇーっ。アルドだって気になる癖にぃ。ジゼルが自分の事どう思っているか」

「ふん。貴様の挑発になぞ乗らないぞ。ジゼルの心を掴むのはこの俺だとわかっているからな。そんな小さい事は気にならん」

「へぇぇ。すっげぇ、自信だなぁ。って、めっちゃ鉛筆の芯折ってるじゃねぇか!気になってるなら無理すんなよ!」

「なっ!気にならないと言ってるだろう!」

「へえへえ。立派立派!」

「貴様っ・・・!!」

「あ、あの二人とも、落ち着いてくださいよ。アンジュ様とジゼル嬢の勉強の邪魔になってしまいますから・・・」

「「うっ・・・」」


 スティードがアルド様とプレアデスに注意をして、この話題は終了した。後ろは後ろで賑やかだなぁ。二人の勢いに気圧されて小さくなっていたスティードに注意をされて、二人ともおとなしくなった。

 ていうか、アンジュの前でそういう会話するのはやめろぉ。

ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました┏○ ペコリ

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