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第49話

 こちらを向いてビクビクしているアマルシスさん。彼女は緑の髪を2つに分けたゆるふわな三つ編みをしており、気弱そうな印象である。まぁ、いきなりよく知らない人が訪ねて来られたら恐いわよね。


「アマルシスさん、ですか?私は同じ1年のジゼルと申します。先程は廊下でぶつかってしまってすみませんでした。お怪我など無いですか?」

「あっ!こ、こちらこそ、すみませんでした!散らばった紙を拾ってくださったのにお礼も言わずに逃げてしまって・・・」


 おどおど、わたわたしているのがとても可愛らしい。


「その、紙に書いてあった絵の事で少しお話を伺いたく・・・」


ガタタッ


「ひぇぇぇ!すみませんでした!お友達のあんな絵を・・・、直ちに焼却処分致しますので!!」


 アマルシスさんは物凄く狼狽して、椅子ごと後ずさりをした。


「い、いえ!そうではなくて、もっと良く見せてほしいのですが!いや燃やすくらいなら私にください!!勿体ない!」

「・・・・・・・・・・・・え?」

「ですから、あなたの描いた絵に興味があって参りました。決してあなたを非難しにきたわけでは無い事を信じてほしいのですが・・・。エリク様の許可も頂きましたので、是非隣の部屋でお話をしてみたいなぁ・・・と。ダメ・・・ですか?」


 アマルシスさんは、クリっとした垂れ目を真ん丸くして驚いた後、ホッとした様な表情を見せた。


「あ、あの。そんな風に言っていただいてありがとうございます。わ、私で良ければ是非・・・」

「ありがとうございます!嬉しいです」


 美術室の隣の部屋に来た私とアマルシスさん。教室と同様に一列に等間隔で並んでいる机の内の1つをくるりと後ろに向けて、机の正面と正面をくっつけてお互い対面に座った。


「あの、こ、これがぶつかった時に散らばった絵です・・・」


 アマルシスさんがおずおずと紙の束を私に見せてくれた。アルド様やプレアデスのあられもない姿、スティードまでもが一糸纏わぬ姿で・・・ふぉぉ・・・これは・・・ふむぅ・・・なるほど・・・けしからんですな・・・!

 ていうかこの絵!!散らばった時に見た時は一瞬だったから気がつかなかったけど、甘苺カシス先生の絵にめちゃくちゃソックリなんですけど!!


「カシス先生・・・」


 もはや懐かしささえ感じてしまう。思わず先生の名前を呟いてしまった。私は先生の絵が好きでアドアンを買ったと言っても過言では無い。


「えっ!?あ、あ、あの・・・ジゼル様、今何と・・・?」


 何故だか、アマルシスさんの挙動が少しおかしい。そわそわと落ち着かない様子。


「えっ?あ、いや。大好きだった絵描きさんの絵と似ていてなんか嬉しくなってしまいました」

「も、もう一度その方のお名前を伺っても宜しいですか?」


 いや、言ってもわからないでしょうけど。何か気になるのかな?


甘苺(あまい)カシス先生です」

「ひっ!ひぇぇぇ!!やっぱり聞き間違いじゃなかったぁぁ!な、何故その名前を知ってるんですかぁ・・・?」

「えっ?ど、どうしたのですか?アマルシスさん!?」

「ブツブツ・・・まさかこの世界に甘苺カシスを知っている人が居るなんて・・・しかもそれがサポキャラのジゼルだなんて・・・ブツブツ・・・」


 アマルシスさんはガタガタと震えながら机の上で両手を組んでおでこにつけて俯いてブツブツ呟いている。いや、なんか、ちょっと気になる発言呟いているー!!


「この世界?サポキャラ?あ、あなたこそ何故それを!?」

「えっ!?ご自分がサポキャラだって自覚あるんですか!?」

「いや、むしろ私がサポキャラだって知っているんですか!?」

「「 ア ド ア ン の ! ! 」」


 いやー、見事にハモったわねぇ。


「あのー・・・・・・、アマルシスさん、BLって知ってます?」

「ビーッ!?」


 私の問いかけに対し、ビクゥッと反応したアマルシスさんの顔がみるみる赤くなっていきます。あ、これ、意味をちゃんと知ってるわ。なので私は核心をついてみた。


「もしかして前世が日本人、とか?」

「ひっ!な、な、何故、それを?今までひっそりと目立たずに暮らしていたのに、ここで私の人生ゲームオーバーですか!?」

「あぁ、そうでは無いです!私、私も前世が日本人なんです!」

「・・・・・・え?まさか」

「20XX年の大晦日の夜にコンビニで強盗に襲われて・・・」


 私はプレアデスの時と同じ様に現在に至るまでの説明をしました。


「う・・・そみたい!私は、大変お恥ずかしながら杏さんの死亡した日の翌日、20XY年の元旦の日に実家でお雑煮を食べていた所、お餅を喉につまらせてしまって・・・気付いたらこの世界でアマルシス・レクターという伯爵家の次女として転生していました」


 杏さんと呼ばれるのは久々である。さんざん呼ばれ慣れていた筈なのに、新鮮な感じがする。


「せっかくアドアンの続編も製作が決定して、私も新キャラの絵とか色々考えていたのに・・・」

「えっ!?アドアンの続編決定していたんですか?あぁぁー、もう私なんて隠しキャラすら未プレイですよ」


 ん?ちょっと待って。今アマルシスさん何て言った?新キャラの絵を考えていたとか言ってなかった?じゃ、じゃぁ・・・!


「あの・・・。もしかしてなんですけど、アマルシスさんて甘苺カシス先生だったりします?」

「は、はい。アドアンのキャラデザを担当しておりました、甘苺カシス・・・本名は雨居(あまい)シズカです」

「えっ?本当に?えっ?えっ!!!?ふわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ちょっ!杏さん!?」

「私、大ファンだったんですぅぅぅ!!薄い本だってほとんど持ってますし(※プレミアがついている初期の本は高騰しすぎてて買えなかった)、まさかこんな所でお会いできるとは・・・っ!」

「な、泣かないでください・・・っ」

「もう感激で胸がいっぱいです・・・!こ、この絵頂けないでしょうか?ぜ、是非サインつきで」


 失礼を通り越して不躾(ぶしつけ)なお願いではあるが、私の悲願であった。どうしても譲れなかった。だってまさかまさかの甘苺カシス先生ご本人ですよ!!?


「は、はい。構いませんよ。ふふ。でも私もまさかこの世界でアドアンの話が出来る人と出会えるとは思ってもみませんでした」


 アマルシスさんは手元にあった、アルド様がプレアデスにシャツ1枚で後ろから抱きついている絵にサラサラッっとサインをしてくれた。ふぉぉぉぉ!本物のサイン・・・!!この絵から察するに、アマルシスさんはアル×プレ推しね!!これは絶対に本人達に見られないように厳重に大切に保管しなければ!アルド様なんてショック死してしまうかもしれないものね。


「今度ゆっくりお茶でも飲みながら語り合いましょう!なんならアンジュとアルド様とプレアデスも呼びますから!!」

「そ、それはなんて魅力的なお誘い・・・!!」


ガシィッ


 私達はどちらからともなく、お互いの手を両手で固く握り合った。腐女子同盟設立の瞬間であった。

 今後このカシス先生(本名シズカさん)ことアマルシスさんが私にとってアンジュと同じくらいかけがえのない親友となっていくのである。


 エリク様にお礼を言って、アマルシスさんに部活の邪魔をした事を詫びて私はホクホク気分で帰路に着いた。

 この時の私は、カシス先生ご本人に会えた事で興奮してしまい、自分がアンジュを差し置いて攻略対象者から告白をされてしまった事を相談するのと、隠しキャラが誰なのかを聞くのをすっかり忘れていた。

 

 それにしても、私も含めて自分がデザインしたキャラ達がうようよ居る世界ってどんな感じなのかしらね。

 あぁぁぁ、今日はなんて素敵な日なの!苦手な刺繍も今ならスイスイとこなせそうよ!いてっ!!あ、やっぱそれは気のせいだったわ。

ここまでお読み下さいまして、ありがとうございました┏○ ペコリ

寒くなって参りましたので、皆様におかれましては風邪など引かぬようお気を付けくださいませ( ´ ▽ ` )ノ

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