第46話
プレアデスに送ってもらい、我が家に帰ってまいりました。
屋敷の入り口まで両親とお兄様が出迎えに来てくれた。ボニーとユミルも後ろに控えて安心した表情を見せている。
「「「ジゼルッ!!」」」
お兄様が私をギュッと抱き締めてプレアデスを威嚇しています。が、やはり、威嚇だけで文句は言いません。
「ご両親にはお初にお目にかかります。私はプラネタリアの第一王子のプレアデスと申します。この度は大事なお嬢様を危険な目に合わせてしまった事をお詫び致します」
スッと私の両親に対してプレアデスが深くお辞儀をした。
「私がジゼルの父です。プレアデス殿下、もう顔を上げてください。今回の件は誰にも防ぎ様が無かったと、我が国の陛下より伺っております」
伯父さまっ!プレアデスを擁護してくれたのね。きっとアルド様が伯父さまにしっかりと説明してくださったのだわ。
「あーーーー!!!ジ、ジゼルの可愛い顔に傷がついてるっ!!」
「これ、ジルドラ!静かになさい!」
「だって母上!ジゼルが傷物にされたんだよ!?」
お兄様・・・お元気そうで何よりですわ・・・。お母様に窘められてもめげない。
「本当にすみませんでした!」
プレアデスがお兄様の反応を受けて再び深くお辞儀をすると、お父様がプレアデスの背中をポンと叩き、顔を上げさせた。
「そんなに謝らなくてもいいですよ。こうして娘も無事に帰って来た事ですし、君には前にも娘の命を助けて頂いた事があると侍女から伺っています。それに・・・」
ぎゃぁ!!ボニーかユミルがあの滝修行の事話したのね!?・・・まぁ、おかげでプレアデスのイメージがそんなには悪くないみたいで良かったけど。
「プレアデス殿下は娘の事に、とても心を痛めてくれているのが伝わってきます。今、ご自分がどういう顔されているかわかりますか?」
「っ・・・!いえ・・・」
「今にも泣きそうな顔をしています。あなたはジゼルが連れ去られている間、私達と同じ気持ちで居てくれたのでしょう。いや、それ以上かもしれませんね」
お父様・・・。
「逆に、いつも娘の事を気にかけてくださり、ありがとうございます。こんな事を言うのはおこがましいかもしれませんが、この通り、娘は何かとトラブルに巻き込まれやすいので、これからも娘の事を宜しくお願い致します」
「こ、こちらこそ・・・。温情ある措置をありがとうございました!」
深々とお辞儀をし合ってお父様の「良かったら中へ」との誘いを「今日はもう遅いから」と断ってプレアデスは自分の屋敷へと帰っていった。去り際の私に向けた視線が、凄く熱っぽく感じたのは私の自意識が過剰なせいだろうか。
しかし、お父様の言っていた、私がトラブルに巻き込まれやすい・・・のは反論しようがない。確かにここ数ヶ月で何度死にそうな目に合っているのか。私呪われてんの?ってくらいトラブル続きだった。ヤバイわ・・・。サポキャラなのになんでこんなにも主人公よりキャラが立っちゃってんの!?これじゃアンジュが目立たないじゃない!でも、ジゼル陰キャ作戦は逆に目立ってしまって失敗だったし・・・。何で、やる事なす事が裏目に出るのよ!
「一体どうしたらいいの!?」
「・・・とりあえず、部屋に戻って父さん達が居ない間に起こった事を色々とジゼルの口から説明してくれるかな?父さんの聞き間違いとかあったら困るからね」
「えっ!?あっ!!!」
私が思わず口に出してしまった自問自答に、自分に問われたと思ったお父様が答えた。ひぃぃ!お父様が笑顔なのに怖いわ!にっこにこしてるのに物凄い威圧感を感じる。これは・・・間違いなく怒っているわね。よく見たらお母様の頭にも角が見える!!・・・気がする。
「・・・という事があって、今回の事もこういう訳で・・・」
私は最初に暴漢に襲われた事、滝に行って溺れた事、そして今回の事件についてを全て当事者として包み隠さず報告した。途中でお母様が卒倒した為、お母様は途中退場となった。
「ぎゃぁぁぁぁ!!僕のジゼルが!父上!やっぱりジゼルには僕が付いていないと!!」
「ジルドラ、お前は黙っていなさい。・・・ジゼル、父さんが皆から聞いた話とほぼ寸分違わずって感じだったよ。・・・はぁ」
お父様は呆れた様に大きな溜め息を吐いた。
「・・・ごめんなさい」
「スゥーッ(深く息を吸う音)。そもそもジゼルは自分の身分を弁えていないからこういう事になるんじゃないかな?公爵家の令嬢らしく振舞っていれば避けれた事が大半だよね?最初の暴漢については不可抗力かもしれないけど、わざわざ滝に飛び込むとか、大体16にもなってそれがどんなに危険な行為か分からなかった訳じゃないよね?昔っからジゼルは注意力が散漫すぎるよね?木登りして降りれなくなったり、好奇心旺盛なのは良い事だけど蛇を捕まえて咬まれたらどんだけ痛いかを確認するとか、足元の小石に躓いて一回転してみたり、あぁ、そうそう!家族皆でピクニックに行った時は蝶々を追いかけて迷子になったなぁ。その後崖下に転落までがセットで。大した高さじゃなくて良かったよね。後は・・・くどくど・・・前も・・・くどくど」
ぎゃぁぁぁぁぁ!!!幼き頃の黒歴史が今全て掘り返される!お父様、もうジゼルのHPはゼロです・・・。お父様・・・どれだけ記憶力がいいのですか・・・。「もうね、バカなの?バカなんだよね?」というお父様の本心が心に刺さるぅ・・・。
「ち、父上・・・。もうその辺で・・・。ジゼルも反省してるよね?」
父のマシンガンの様な怒涛の勢いに流石のお兄様もフォローに回ってくれた。
「・・・とにかく、ジゼルは暫く外出禁止だよ!」
「そ、そんなぁぁぁ」
「ジルドラ、後は任せたからね!」
「はいっ♪ジゼル、暫く僕とずぅぅぅぅっと一緒だね♪」
お父様が私の部屋を出て行った後に残ったお兄様は、見るからに嬉しそうだった。
とほほー。外出禁止って・・・。
半ば放心状態になりつつも、ボニーとユミルを呼んで髪の毛をミレーヌ嬢に切られた長さまで切り揃えてもらった。丁度耳の下あたりのおかっぱ状態で、かなり短くなってしまったが、頭が凄く軽くなったのでこれはこれでいいかな。
「うぅ・・・。お嬢様になんて酷い事を・・・。髪の毛、こんなに失うとか・・・」
ユミルが床に散らばった髪の毛の量を見て涙ぐんだ。腰まであったものをバッサリなので、かなりの山になっている。
「外出なされる時は、せめて大きなリボンをつけましょうね」
そう言ってボニーが薄い金色のサテンのリボンを後頭部につけてくれた。おぉ!リボンのあるなしではだいぶ印象が変わるわね。益々こどもっぽくなってしまった様な気もするが。ふふ、ボニーよ、私お父様がまた領地の視察に行くまでは外出禁止ですのよ(泣)
「うはぁぁぁぁ!短い髪の毛のジゼルもなんて可愛いんだろう。ガラスのケースに仕舞っときたい位だよ」
「プッ。変質者みたいな台詞ですね。キモイです。クスクス」
あぁ、イアンさんも一緒に居たんだね・・・。放心してたから気付かなかったわ。
「ジゼル、何して遊ぼうか?トランプ?チェス?」
「いや、私お風呂入って寝ます」
「えぇーーーー!つまんないーーーー!!ま、いっか。明日から暫く遊べるんだしね♪じゃぁ、ゆっくり休んでね、ジゼル♪愛してるよ☆」
「はいはい、おやすみなさい」
はぁぁぁぁぁぁぁ。お父様、私に対して昼夜問わず、終始こんな感じのお兄様に私を任せたって事は、これは私に対する罰って事ですか?そうですか・・・。効果覿面でございます・・・。
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いつもありがとうございます。
12/1誤字を修正しました!すみませんでした!




