第4話
今週のアンジュのメインイベントは、金の日に起こる、“学園の新入生歓迎ダンスパーティーのパートナー選び”である。今現時点で仲が良いと思われるのはアルド様よね。まだ、スティードとは距離がある様なので、スティードとの仲強化週間としようかな。
他の攻略対象者はというと、図書室の君、ルシアン・ルークス。ルシアンは一学年上の紺色の髪の毛に切れ長の漆黒の瞳。メガネをかけた2年生の学力トップの御方。身長は178cm。伯爵家の次男なので、アンジュの婿にもなれる!ただね、結構取り付くシマが無いのよね。気難しいというかなんというか。まぁ、そんなもんはアンジュの優しさの前では屁でもないけどね。
次はカミーユ・シャルドン。この方も2年生でラクロスとか、フェンシングとかのスポーツに秀でた方。薄い緑の色をした髪でアンバー色の瞳。女性の扱いに慣れたナンパ野郎・・・とと、フェミニスト。168cm。この人が一番背が低いわね。各種スポーツが得意で運動オンチなアンジュを見かねてマラソンのコーチを買って出てくれるわ。ただし、見返りは週末のデートなのだけれど。最初は軽いけど、デレてからはアンジュ一筋になるからまぁ、多めに見てあげようかなってとこかな。お城に使える騎士団長の息子できままな三男坊。この人のお家の爵位は子爵。
後は3年生のエリク・ロワンティーヌ。こちらは芸術に秀でた方で、アンジュを絵のモデルにと誘ってくるのよね。この人は待っていても大丈夫。こちらに来た時にきちんとした対応が出来れば好感度は上がってもまず下がる事は無いわね。身長は181cm。アンジュとどっこいな位サラサラな金髪ロングの髪を一つに束ねている。瞳の色はパープル。色っぽいフェロモンが出てる・・・ような気がする。宝石商を営んでいるライズ伯爵の長男。
最後は新1年生で、学園に入学前の年下なのでこの子は来年入学してからに期待するとして・・・。
以上アルド様とスティードを含めた計6人がアドアンの攻略対象者であります!後は隠しキャラ・・・。隠しキャラって事はちょっと特別な設定の殿方よね。アルド様より特別な方ってこの学園に居るのかしら。
気付けば昼休みの時間になってしまっていた。うわ、私どんだけ熟考してたんだか。アンジュ・・・アンジュは・・・?とと。おぉ、アルド様と一緒に居るわね。じゃぁ、邪魔せずに私は学食へと参りましょう。
教室を出る際にスティードを見かけましたが、机に突っ伏していて昼食を取らない模様・・・ってか、私がスティードの昼食のパンを取っちゃったんじゃない!いくらスティードが皆から一目置かれているとはいえ、貴族ばかりの学食に行くはずも無く。わぁぁ!私の体調管理の拙さにスティードが巻き込まれてる!育ち盛りだというのにこれではあまりにも申し訳ない。私は急いで学食へ走り、手軽に食べられるバゲットサンドを2つと、ミルクを購入してスティードの元へと向かった。
教室に戻るとアルド様とアンジュの姿は無く、スティードは変わらず机に伏していた。アンジュはアルド様と温室で昼食かな。良き良き。
「スティード、ちょっといいかしら?」
私が声を掛けるとスティードはガバッと顔を上げた。
「ジゼル嬢?どうしたの?」
「今朝、私にパンをくれたけど、あれはあなたの昼食だったんじゃない。ごめんなさいね」
「いや、あれはいいんだよ!一食くらい抜いたって平気なんだからさ!」
「いいえ、駄目です!殿方はちゃんと食べて力をモリモリつけなくては、いざという時に大事な方をお守り出来ませんわよ!で、これ。貴方と一緒に食べようと思って買って来たんですけど」
「ジゼル嬢、でも」
「なんですの?レディにこれ2つたいらげろって言うんですの?私が太ってしまったらスティードのせいですからね!」
「・・・そりゃぁ、責任重大だ。ありがとう、ジゼル嬢」
「貴方のお家のパンより劣ってしまうけど」
「そんなこと無いよ。ジゼル嬢が俺の為に買って来てくれたものだからね。今までで一番美味い食べ物かもしれない」
スティードはバゲットサンドを一口頬張り、ニコッと笑った。
「大袈裟ですわよ」
そう、順調に行けばアンジュとお弁当交換イベントが来るから、その言葉はその時に使うのが正解よ。
「あ、ジゼル、もうご飯食べてたのね。ずっと温室で待っていたのだけど」
「えっ?待っててくれたの?ごめんなさい!私話を聞いてなかったかも」
アンジュが教室に戻ってきました。
「私今朝、スティードの昼食を食べてしまって、そのお礼をしていたのよ」
「そうだったのね。ふふ。ジゼルは何かに夢中になるとご飯を食べるのも忘れてしまうものね」
「はは。面目ないわ」
「あははっ。ジゼル嬢は何だか放っておけないね」
「そうなんです。昔からジゼルは無茶ばかりするんですよ」
「ちょっとちょっと!そんなこと言うけどアンジュだって結構抜けてるとこあるじゃない!クッキーのお砂糖とお塩間違えてみたり。でも絶妙に美味しかったわね、アレ」
「も、もう!ジゼルったら恥ずかしいわ」
ふふ。さぁ、スティードよ。この恥ずかしがってるアンジュをご覧なさい。超絶可愛らしいから。我ながら上手い切り返しよね。
「そうだ、今度スティードのお家にパンを買いに行きましょうよ!とーーーっても美味しかったのよ!」
「そうなんですか?是非、私も食べてみたいです」
「あ、なら俺、明日ご馳走するよ。ウチのパンなんかで良ければ」
「流石に悪いわよ」
「いいっていいって。ウチのパン褒めてくれて嬉しかったからさ。あ、アルド様の分も用意するから是非に」
「え、催促してしまったみたいですみません」
「いいえ。お気になさらず」
これを機にアンジュとスティードの仲が良くなれば良いわね。アルド様だけじゃなく、様々な殿方と出逢ってその中で良い方が決まれば後はその方のルートに突入するのみよ。惜しみなく協力するわよ!
帰りはアンジュとアルド様に誘われたけど、気を利かせてご辞退する事にした。もう、アンジュのラブゲームは始まっているのだから、私は少し遠慮しなくては。
家に帰ってお米を作る方法とか模索してみるのもいいかも。お米が食べたい・・・。お米が食べたい!!
でも、稲とかどっから調達すれば良いのか・・・。はぁ。なまじ杏の頃の記憶があるだけに、食文化の違いの大きさに嫌でも気付かされる。
パン・・・。スティードの家のパンなら毎日食べても飽きなさそう。そうだ!料理長に言っていつものパンをスティードのお家から取り寄せてもらおうかしら?
そうと決まれば善は急げよ!!私は待たせていた馬車に乗り、急いで屋敷に帰った。
帰るなりその足で調理場へ向かい、料理長のジョセフに提案をしに行った。
「へぇ、美味しいパン屋ですか・・・。料理人としてプライドが傷つきますが、私はどうもパンはまだまだでしてね・・・」
ジョセフは肩を竦めて大袈裟にお手上げポーズをした。
「ごめんなさいね。同じクラスの方のお店で、ジョセフもそのパンを召し上がってみるといいわ!驚くから」
「了解しやした。来週からそちらのパンを仕入れる事にしやしょう」
「やった!ありがとうジョセフ」
「やれやれ、俺は昔からお嬢様には敵わないなぁ」
「あぁ、こちらに居たのですね!ジゼル様!」
ボニーが息を切らして私を呼びに来た。
「どうしたの?ボニー、そんなに慌てて」
「で、殿下がお見えになっているので、お待たせしてはいけないと思い・・・っはぁはぁ」
え?アルド様が?一体何の用かしら。
ここまで読んでくださいまして、ありがとうございましたm(_ _)m