第34話
作戦会議の結果、相手が女性でも男性でもとりあえず大声を出す。ドレスにコショウと唐辛子爆弾をセット。コルセットは厚めのものを着用で様子を見ることに。流石に人目のある所では大胆な行動は出来ないと思うので、プレアデスの傍を離れない事を徹底する。以上の作戦で行く事になった。
「あ、後はプレアデス殿下を諦めさせるのが目的なので、ジゼル様はプレアデス殿下の恋人役の演技を完璧にこなさなくてはならないのでは?」
「えっ?演技?それ、必要?プレアデスについて回るだけで良くない?」
「いえ。失礼ながら普段のジゼル様とプレアデス様ではご一緒に居られても兄と妹としてしか認識されないでしょう」
うっ。ボニーってばズバッと言ったわね。
「ですので、当日は我々の出来うる範囲でジゼル様の外見を立派な淑女に仕上げますので、ジゼル様はよりプレアデス殿下と仲睦まじく振る舞う様に努めてください」
「えぇ〜?私のスローガンー・・・」
【不必要な身体的接触は避けるべし!早めにバグった攻略対象者の目を覚まさせるべし!!】
「とは言っても、私恋人同士の振る舞いとか良くわからないわ」
「お嬢様、こうですよぉ!ボニーさんをプレアデス殿下だとしたら、こう腕をプレアデス殿下の腕に絡めるんです。常にピッタリ付き従う感じで。後は殿下のエスコートで動けばいいんですよ。あ、殿下がどなたかと挨拶をする時は、腕は外して一歩後ろに下がって邪魔をしない様にしてくださいね」
「はい!!ユミル先生!やっぱりプレアデスとの身長差により、どうやっても妹感がぬぐえないと思いますが!!」
「あぁーーーーー・・・。そうですね。なんとかなると思います!」
「なんとかなるって・・・!(否定はしないのね)大体、女性ばかりのお茶会にプレアデスを呼ぶってのが間違いじゃない?」
「まぁ・・・、それは“私は王子様を呼べるのよ”って自慢したいんじゃありませんかねぇ。さて、そろそろお開きにしましょうか。ジゼル様も明日も学園ですので」
「あっ、そうね。いつも遅くまでごめんなさいね」
「いえ、お嬢様とお話するのとても楽しいので」
「こちらこそ、有意義な時間をありがとうございました」
ボニーとユミルを見送り、ベッドに潜り込んだ。お茶会参加もアレだけど、明後日のダンスパーティーでヘマをしてスティードに恥をかかせない様にしなくちゃだわ。うーん、なんかめまぐるしいわね。私のイベントよりもアンジュのイベントの方が重要なのに、次から次へとなにがしかが起きるから対応出来てないのが現状よね。それこそ、アンジュの恋が進展しない様にと、何か抗えない大きな力が働いているみたいよね。まぁ、気にしすぎよね。あっ!本当に早く寝なくちゃ明日起きられなくなるわ。私はそっと目を閉じた。
◇◆◇◆◇◆◇
学園に着き、席に座っていたスティードに私は声を掛けた。
「おはよう、スティード。今日、家のメイドがスティードの内に衣装を届けるから帰ったら袖を通してみてちょうだい」
「おはよう、ジゼル嬢。えっと、いいのかな?なんか悪い気がする」
「気にしないでちょうだい。せっかくのダンスパーティーなんだから、お揃いの衣装の方がいいもの」
「おっ、おそろい・・・。ありがとう!ジゼル嬢!!大事にするから!」
「えぇ。明日は誰よりもスティードを輝かせてみせるわ」
「えっ?ジゼル嬢?」
そう。私は変な方向にスイッチが入っていた。スティードをダンスパーティーで目立たせ、その格好良さを見せれば、アンジュはスティードの事も選択肢に入れてくれるのではないか・・・と。名付けてプロジェクトS.K.M(スティードの・かっこよさを・みせつけろ)よ!!
「スティード。明日は朝早く家のメイドと一緒に迎えにいくわね!」
「えっ?えっ?ど、どうして?」
「スティードの身支度を整えるお手伝いをしによ!明日は完璧なスティードで完璧なダンスを披露しましょうね!」
「えっ・・・。凄いプレッシャーを感じるなぁ・・・俺、上手く出来るかな・・・」
「だったら俺と変わるか?」
「あ・・・。プレアデス殿下!変わるって?」
「ジゼルを満足させてやれねぇなら、俺がパートナー代わってやってもいいぜ?俺相手いねぇし」
「えっ、プレアデス、相手居ないの?すっごい誘われてたんじゃない?」
「お前じゃないと嫌なのに、お前じゃないやつと踊ってどうするんだよ。なぁ、アルド?」
「貴様っ・・・!なぜ、俺を煽る・・・?」
「だって、少しでもライバルを減らしておくに越した事はねぇじゃん」
おいおい、まぁた揉め始めたわ。プレアデスもプレアデスよね。あれで中身28歳て・・・。殿方っていくつになってもお子様なのね。
「ジゼル嬢!!」
「は、はい・・・?」
「俺、絶対明日ジゼル嬢を満足させてみせるから!!」
「えぇ、宜しくね」
なんだか急にスティードもやる気になった事だし、明日は一番目立つ勢いで頑張るから見ててよ!アンジュ!!
放課後、帰り支度をしているとルシアン様が私を訪ねて教室まで来た。
「何の御用でしょう?」
「これ、遅くなったけどメガネのお礼・・・」
「えぇ!あれは弁償なのでお礼なんていいですよ」
ルシアン様が私に小さな可愛らしい紙袋をくださいました。でも、申し訳なくてもらえないと返そうとしたら、押し返されてしまった。
「いや、君の為に用意したものだから俺が持ち帰っても使えないし、貰ってくれると助かる」
「え、じゃぁ、かえってすみません。ありがとうございます」
「いや、こちらこそ、このメガネにしてから周りの世界が明るくなった気がするんだ。丁度買い替え時だったのかもしれなかったから感謝している」
「そんな、ふふ。ルシアン様はお優しいのですね」
スペアじゃなくて、私が選んだものをかけてくれている。
「それじゃぁ、また」
「はい、わざわざありがとうございました」
律儀な人なんだなぁ。
「ジゼル、ルシアン様といつの間に仲良くなったのですか?」
席に戻ると先に帰り支度を終えたアンジュが待っていてくれた。
「あぁ、アンジュが先に帰った日に私、ルシアン様のメガネを壊してしまって。日の日に弁償したんだけど、そのお礼だって。あぁ、アンジュ。ルシアン様って取っ付きづらいと思っていたのだけど、とても穏やかな人で優しいし、こうやって律儀な方なのよ」
さり気なくアンジュにルシアン様の良い所を言って、意識してもらおう。
「はい。図書室でも、ジゼルを見つめる目が優しい人だなぁって思ってましたよ」
「いや、そうじゃなくて」
「えぇと、ではどういう・・・?」
うぉぉ!だから、私の事はどーでもいーんじゃ!なんだろ、私が攻略対象者をアンジュに薦めれば薦めるほど、私が気になる殿方をアンジュに報告してる流れになってない?
「いや、アンジュに薦めてるんだけどね!ルシアン様はどうですかって」
あいやー。ぶっちゃけ過ぎてもう、さり気なくもなんともなくなったわ。
「え、ルシアン様ですか?私良く知りませんし・・・」
「いーの、いーの。皆最初は知らないものなの。一回一緒にどこかに遊びに行ってみましょうよ。そしたら、気になる存在になるかもしれないわよ」
ここは多少強引にでもアンジュと攻略対象者を引き合わせでもしないと話が進まないわ。
「ジゼル、ごめんなさい。私やはり、殿方とはお付き合い出来ません」
「そう・・・」
なんでー!?なんで乙女ゲームなのに恋しないのー?主人公の恋始まらないのー?もう5月も終わっちゃうよー。
このままの状態で夏休みとか入ったら・・・孤独エンド一直線よ!?どうする、私!?
ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました┏○))ペコッ




