第30話
昨日は散々な目にあったわ。あの後ようやく下に降ろしてもらったのは、それこそお昼にアンジュのお弁当を頂くために向かった東屋だった。
でも、アンジュもアルド様も楽しそうだったので良かったわ。
そして今日は二年生コンビと一緒に私が壊してしまったルシアン様のメガネの弁償と、図書館での勉強の約束の日だ。なんだか、乙女ゲームの主人公並みに休み無しのスケジュールな気がする。
今日は歩いたり、図書館で勉強するので、かさばらない様に紺色の短めの裾のワンピースに黒のレースのボレロを羽織り、白いタイツに黒のエナメルの靴にした。髪の毛はボニーにサイドアップにしてもらった。
「じゃぁ、行ってくるわね」
「「行ってらっしゃいませ」」
ボニーとユミルに見送られ、街まで馬車で移動をして約束の場所へ。
既に2人は待ち合わせ場所で私を待っていた。うわぁぁぁぁ!お二人の私服姿!!レアじゃない!?
カミーユ様は、白いブラウスに黒のと金のストライプのベストに黒いズボン。そして折り返した襟幅の広い黒いロングコートを羽織っており、ロングブーツを履いている。艶やか〜な感じがして色っぽいなぁ。
ルシアン様はというと、グレーの細身のズボンと革靴、白いシャツに紺のブレザーとワインレッドの色のネクタイをしています。ふぉぉ!学生服みたいですが、学園の制服は軍服に近いのでまた新鮮であります!!ブレザーとメガネ!!
「ジゼルちゃん、今日の服装凄く可愛いね」
「ありがとうございます。カミーユ様もルシアン様も素敵です!」
「今日はわざわざすまない」
「いえ、こちらこそ休みの日を潰してしまってすみません」
「さ、メガネ屋行って用事済ませちゃおうよ」
メガネ屋は街の大通りを少し抜けた所にあり、落ち着いた佇まいの店である。
「どんなメガネがいいですか?」
「見えればどんなでも・・・」
「ジゼルちゃん選んであげれば?」
「えっ、そうですね。ルシアン様の目は切れ長なので、細めのレンズでもいいですね。で、ルシアン様の視力だとレンズが厚めになるから、フレームは太めの選べば横から見ても目立たないと思いますよ」
私が居た世界とは違って薄くするという技術が無い為、ガラスレンズオンリーなのだ。
「へぇ、ジゼルちゃんなんか詳しいねぇ」
「えぇ、私もメガネかけてたので視力が悪い人の気持ちわかりますので・・・」
「えっ?じゃぁ今は!?メガネ無くても大丈夫なの?」
やばい!ジゼルはメガネなんて掛けてないじゃない!うっかり前世の話しちゃった!しかもガッツリと・・・!えーと、えーと、どうしよう?
「あっ!やだ!私今朝見た夢と混同しちゃいましたわ!視力が悪くなった夢を見たから・・・」
うわぁ。怪しさMAXだよね!うん!私もそう思う!カミーユ様がジーッとこちらを見ています。いたたまれない。
すると、ルシアン様がすっと飾ってあるメガネを1つ手に取って眺めた。
「へぇ。俺は余りデザインに拘りなど無かったが色々あるのだな」
「そ、そうですよ!色々かけてみてくださいよ!」
ルシアン様のおかげで私の視力の話が逸れたので勢いでこのまま流してしまえ!
私はアレやコレやルシアン様にかけてもらい、一番良さそうなフレームを選んだ。
「掛け心地は悪くない」
「じゃぁ、これにしましょう。すみません、このフレームでメガネを作って頂きたいのですが」
私は店主に話しかけ、ルシアン様の視力を測ってもらい、レンズをはめてもらった新しいメガネを購入した。
「はい、ルシアン様。今回は大変ご迷惑をお掛けしました」
私はメガネの入った袋をルシアン様に渡して改めて謝罪した。
「いや、こちらこそ。ありがとう。もっと早く本を取ってあげれば良かったのだが」
あっ。あの時ルシアン様が私の後ろに居たのは私に本を取ってくれようとしたんだ。
「次からは欲しい本が届かなかったら声をかけてくれて構わないから」
ルシアン様はフ、と優しい表情で微笑んだ。
「あ、ありがとうございます」
そうか。この人はデレるまでは素っ気ないけど、本当は優しい人なんだよね。エンディングも優しい時間を一緒に過ごすという他の殿方と比べたら派手ではないけど素敵なものだったわ。うーん、この世界の草食系アンジュにはこういう人のが向いているかしら・・・。
「じゃぁ、軽く何か食べてから図書館行こうか」
「あ、はい。何が良いですかね?」
「図書館の近くに美味しいクレープのお店があるんだけど、そこでいい?」
「わぁ!クレープ大好きです」
「じゃぁ、決まりだね!行こう」
カミーユ様は背丈こそ低いのだが、それ以外は何事に対しても器用な人でスポーツは万能だし、成績だって悪くはない。学園一のモテ男という称号は伊達ではなく、女性に対してはどんなこどもからおばあさんまで平等に優しい。
特に女性に関する情報収集には余念がなく、美味しいスイーツのお店や、可愛い小物が売っている雑貨屋などにも詳しい。歩く情報誌みたいな人である。
図書館近くのクレープ屋さんは、淑女達で賑わっていた。その中の数人がカミーユ様に気付いて近寄ってきた。
「カミーユ様、ご機嫌よう。最近お忙しそうですけど、今日は妹さんとこちらに?」
「カミーユ様、今度私の家のお茶会に来てくださいませ」
「カミーユ様」「カミーユ様」
うぉぉ、凄い。この女性達皆さんお知り合いなの?わーっと有名人でも見かけたかの様にあっと言う間にカミーユ様は淑女達に囲まれてしまった。
ど、どうしよう。ルシアン様を見上げたら、ルシアン様も呆気に取られていた。
ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました┏○))ペコッ




