第23話
とりあえずはアルド様の告白に返事をしたのだけど、諦めてくれないアルド様。現状維持っぽい結果だけど、私は逃げずにちゃんと向き合ったよ。
次はアンジュと話し合わねば、だ。
自分の席についてグデーっとしている私にスティードが話しかけてきた。
「おはよう、ジゼル嬢」
「あぁ、おはよう。スティード」
「あのさ、昨日アルド殿下に告白されたって噂になってるけど」
「あー・・・。周りに皆居たもんね」
「やっぱさ、ダンスの相手はアルド殿下の方が・・・」
「えー!?何でよ?」
「え・・・。だって、その。こないだ家に来た時も手を繋いでたし・・・」
「・・・あれは・・・。兄妹ごっこだと思って・・・。それにアルド様にはお断りしたし・・・」
「えっ!?」
「だから、私はパートナー変更なんて考えてないんだけど。スティードは嫌?」
「そ、そんな!嫌なもんか!俺だってジゼル嬢の事が好きなのに!!」
「へ?」
「あ・・・っ!!いや、その・・・」
スティードさん?アナタ今何て言いました?
「へぇー!お前見る目あんじゃん!」
自分の席からわざわざこちらまで来て、スティードの肩をポンと叩いてドヤ顔しているプレアデス。
「へ?プレアデス殿下!?」
「ジゼルー、お前モテ期入ってるんじゃねぇの?」
「う・・・ぁ・・・?」
ちょ・・・、話を広げないでよ・・・。
「ほぅ。この俺の前で、ジゼルに告白出来るとはいい度胸ではないか。スティード」
うわぁ。アルド様までやってきました。あ、やめて・・・。私これ以上目立ちたくない・・・。
もはや口をパクパクさせるしか出来ない私。プレアデスもアルド様もスティードも何故今告る?
「でも、告白したヤローの本気度を確かめる為に、コイツは卒業式を迎えるまでは誰とも付き合わねぇぜ?お前それまで我慢できるか?ん?」
スティードの肩を抱き、若干上から目線のアドバイス?を施すプレアデス。
「で、出来るさ!!」
スティードが王子二人にはさまれて、気圧されつつも力強く問いに答えた。
な、な、な、何が起こっとるとですか?モテ期?何それ、アンジュを差し置いてそんなのある訳ないじゃん。
「あ、の・・・。好きな人と一緒に居て、手を繋ぐのもキスも我慢できる?」
私は3人に聞いてみた。私は・・・。卒業式を迎えた時に一歩踏み出せるだろうか・・・。
「まぁだ、そんな事グチグチ考えてるのかよ!俺は我慢出来るっつったろ?」
「俺も、お前が俺の事を好きになるまで待つつもりだが。無理強いする趣味など無い」
「お、俺だって。ジゼル嬢の事大切にしたいから、我慢、というか、俺は傍に居られるだけでそれで充分だよ!」
3人が3人とも同じ答えだった。あ・・・。じゃぁ、待ってくれなかった元カレは?好きだから我慢出来ないのでは・・・?本当はそんなに私の事が好きじゃなかった?
「ちょっと待て。プレアデス、貴様は既にジゼルに手を出したではないか!お前の待てるは信用ならん!待ても出来ない駄犬が!」
「そっ!そう言えば!プレアデス殿下は戦う前から負けているではないですか!」
「うっ・・・!!黙っていれば良かった!牽制したつもりが仇になったぁ!!」
「あのー・・・盛り上がってるところ申し訳ないですが、そろそろ授業を始めたいんですけどー・・・ぐすん」
やいのやいの騒いでいる3人とさめざめ泣いている担任を他所に私の意識は遥か彼方、宇宙まで到達していた。
ここは宇宙。ふよふよと私は浮いている。真っ暗な宇宙を漂っていると、水色をしたキレイな惑星を見つけた。私はそのキレイな惑星に降り立った。そこは遥か上の方から流れる滝と光溢れる緑の大地。滝には虹がかかり、滝壺はキラキラと光ってとても幻想的な場所だ。
私は腰を降ろし、滝の流れをただただ見つめていた。
『ジゼル!こんなところに居たんですか?皆探していましたよ』
そこに現れたウサギの耳をつけた可愛らしいアンジュ。アンジュは私の横に腰を降ろした。・・・可愛い。
『ジゼル!!探したではないか!何をやっているのだ?』
今度は鹿の耳と立派な角をつけた眩しいオーラを放っているアルド様だ。アルド様は立ったまま私と同じ様に滝を見上げた。・・・尊い。
『あぁ、ここに居たのか!何で俺を探しに来ないんだよ!』
次は狼の耳と尻尾をつけたプレアデスだ。嬉しそうにかけよると、私を後ろから抱きしめる様に座った。・・・けしからん。
『あっ、皆ここに居たんですね!ジゼル嬢ー!“素敵なもの”みつかったかい?』
スティード!スティードは鳥の羽根をバサバサと羽ばたかせ、私の前に降り立った。・・・格好いい。
私、私、この楽園で暮らすわ!!
「・・・ル!ジゼル!!」
「・・・・・・へ?」
「あっ、ようやく気付きましたね!反応が無いので心配しました!もう昼休みですよ」
アンジュの呼び掛けに一瞬にして宇宙からの帰還。あれ?
「ウサ耳が無くなってる!!あっ、でもウサ耳無くてもアンジュは可愛いわ!」
「え?ジゼル?ウサみ・・・?」
「ここは楽園じゃないの!?」
「ジゼル・・・。熱はないみたいですね・・・」
アンジュが私のオデコを触って私の体温を確かめた。私はアンジュのヒヤッとする手の感触で我に返った。
「うわっ!!ここ教室じゃないの!!アンジュ、私今すっごい夢を見たのよ!もー、私にモテ期が来る夢・・・って」
アンジュの後ろに並んで立っているプレアデス、アルド様、スティードの3人。あれ?夢じゃ・・・無い?
「わ。わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
ガタガタン!!
椅子から落ちた私。
「ジゼル!大丈夫ですか!?顔が真っ赤です!やっぱり熱があるのでは?」
「だ、大丈夫・・・。そのっ、頭が・・・少し活動限界を迎えているだけだから!」
ちょっと待って?逃げちゃダメだっていうアレでしょ?頑張って逃げずに向き合ったけど、なんかだんだんと変な方向に話が進んでいませんかねぇ?
卒業式までの期間、“ジゼルの恋人の座を賭けた耐久レース”みたいな話になってない?
「俺たちはジゼルを好きな男同士、抜け駆けしない、卒業式までお前に“好き”と言わないと決めた」
何を言っているんだプレアデス?
「フェアにいこうではないか。フッ・・・。全く負ける気がしないがな」
アルド様までっ!!
「二人に比べたら俺は何にも無いけど、ジゼル嬢と俺の未来の為に頑張るよ!!」
スティード!?ダメよ、この特殊な二人に感化されては。あなたの純潔が汚されてしまうわ!
「あ、あ、アンジュ。今日はもう帰りましょう?私の家は・・・今お兄様が居るからダメね・・・。そうね、アンジュのお家に行きましょう?」
「え・・・、あの。家は構いませんが・・・」
アンジュがチラッと後ろの3人を気にしている。こうして見ていたら、アンジュを守る3人の騎士みたいでいいのに。もっと周りを良く見て!いい娘居るでしょぉ?一人に決めないでもっと青春しなよぉ?
「いいの、いいの。私 女 の 子 同 士 で語り合いたいから。では、みなさん、御機嫌よう。さっ、いきましょ。アンジュ」
「は、はい・・・。それでは、すみませんがお先に失礼します」
「あぁ、まっジゼル。あんま考えすぎんなよ!」
「また、明日お前の顔が見れる事を楽しみに待っているぞ」
「アンジュ様、ジゼル嬢。気をつけて帰ってね!」
迷走しているとしか思えない3人の紳士達を残して私とアンジュは午後の授業をブッチして学園を後にしたのだった。
「アンジュ・・・。この状況は一体何なのかしらね・・・」
私は馬車の窓から遠くを見つめながら向かいに座っているアンジュに問いかけた。
「ジゼルには人を惹きつける魅力がありますからね」
「いや、それは私じゃなくて、アンジュの方よ。主役はアンジュで、私は脇役で丁度いいバランスなのよ」
「そんな事ありません!ジゼルは・・・ジゼルは脇役なんかじゃありません!!」
珍しくアンジュが声を荒げた。アンジュが・・・あの、アンジュが・・・大きな声を出した・・・。
ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました┏○))ペコッ




