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第13話

 あぁ、空が青く太陽がとっても眩しくていいお天気なのに、私の心はどんより曇り。いっそ雨でも降ればいつかは虹がかかるかしら・・・。


 と、今回は少々ポエミィな感じでお送りしております。明日は休みなので今日も1日頑張って乗り切るわ。


「おはよう、ジゼル嬢」

「あぁ、おはよう、スティード」

「どうしたの?今日はまたえらいご機嫌ナナメだけど」

「ちょっと嫌な夢を見てしまって」

「じゃぁ、はい。後で食べて元気出して」

「え・・・?」


 スティードがくれたのは袋に5つ入った一口サイズのメロンパンだった。スティードは相変わらず気さくで優しい。頭も顔も良くて、性格もいい。そして面倒見もいい。スティードに無いのは爵位だけ。爵位なんて無くてもスティードは充分魅力的だと思う。こりゃ女子も放ってはおかないわよね。


「俺が焼いたんだけど、口に合わなかったらごめんね」

「ありがとう、スティード!嬉しいわ」

「いや、昨日俺、ジゼル嬢に無理なお願いをしちゃったからそのお詫びって事で」

「まぁ!そんな!あれは私のスティードに対するお詫びなのに、これではお詫びのお詫びになってしまうわ!」

「へ?お詫びのお詫びって?」

「あっ!あわわ、何でもない何でもない」


 うっかりこちらの事情を口走る事だったわ。


「それよりも、これ、スティードが焼いてくれたのね」

「あぁ、うん。ジゼル嬢の事を想って焼いたんだ」

「え?」

「俺、ジゼル嬢の事・・・」

「おはようございます、ジゼル」

「おはよう。アンジュ。で、何でしたっけ?スティード」

「あ、あぁ、いや。たいした事じゃないからいいんだ。それより、おはようございます、アンジュ様」

「おはようございます、スティード様」


 あぁ、相変わらずアンジュは可愛い。私とスティードが話している時に声をかけてくるのは珍しいけど、アンジュがこうやって積極的なら問題は無いわね。


「おはよう、ジゼル。なんだ髪を元に戻したのか、お前は飽きっぽいのか?」

「おはようございます、アルド様。いえ来週の火の日にお兄様が帰ってくるとの事ですので・・・」


 あぁ、アルド様も今日も完璧ないでたちでキラキラオーラが眩しいです。


「はっ!?ジルドラが帰ってくるのか?なんでだ?」

「先日、暴漢に襲われた事がお兄様の耳に入ってしまった様で」

「あ、あー・・・。あれは心配ないとこちらからも連絡をしておいたんだがな。アイツはジゼルの事となると見境がなくなるからな」

「ジルドラ様は本当にジゼルの事大切に想ってらっしゃるのね」

「また、ジゼルを視察に連れて行くと言い出しかねないな・・・。ジゼル、一人で兄を説得出来なさそうな時は俺を頼れ。また説得してやるから」

「はい、ありがとうございます」


 両親と兄が領地の視察に出る際に、家族が長期不在の家に私一人だけ残してはおけないと一緒に連れて行かれそうになった所をアルド様が説得してくれたのだ。アルド様の手を煩わせる事が無いといいんだけど。


 

 昼休みを終えた午後、全校生徒がホールに招集されてダンスパーティーの相手を決めるイベントが始まりました。


「それでは、各自ペアの相手と二人一組になってください。まだ決まってない人はここで申し込みをしてください。なお、不参加の方は当日スタッフとして働いてもらう場合がありますので、不参加表明書を記入して提出をお願いします」


 先生のアナウンスで、アルド様とアンジュ、私とスティードがそれぞれペアになった。

 176cmのスティードはこうして隣に並んでみると、アルド様ほどではないが、少し見上げて話す感じになる。スラリとした体躯(たいく)が絵になる・・・。絵と言えばスチル・・・。スチルはどこに行ったら見れますか・・・?


「アルド様?あちらが気になりますか?」

「え?あ、いや。ジゼルはちゃんと踊れるのかと」

「ふふ、ジゼルのダンスはジルドラ様に教わって完璧なのを知っているではありませんか」

「そっ、そうだったな・・・」

「来年は、ちゃんとジゼルをお誘い出来るといいですね」

「ああ・・・。って!?アンジュ!?」

「うふふ。バレバレですよ、アルド様。気付いてないのは本人だけです」

「~~~~っ。・・・そうだな」


 ふふふ、アンジュとアルド様、話が盛り上がってるみたいで楽しそうだなぁ。アルド様が赤くなったり焦ったりしているのが珍しいです。眼福眼福。あぁ、スチルがダメなら写真を撮りたい。

 

「ジゼル嬢、俺上手く踊れるか不安になってきたんだけど」

「大丈夫ですわ、足さえ踏まなければなんとかなるわよ」

「ジゼル嬢に恥を欠かせてしまったら大変だぁ」

「楽しく踊れればそれでいいじゃない。ダンスは人目を気にして踊るものじゃないのよ。踊っている間は二人で楽しむのよ」

「ふっ、二人で・・・?ジゼル嬢と俺の、二人の世界・・・」 

「スティード?」

「ヤバイ・・・。俺、めちゃくちゃ幸せ者かもしんない」

「スティード??」


 スティードがなんかブツブツ呟いてるけどどうしたのだろう。でも、なんか楽しそうなので良かった。立派にアンジュの代わりを務めるからね!



 放課後。私達は懲りずに図書室に来ている。ルシアン様に挨拶をして、文献探しに励む。今日はアンジュは机で調べもの係だからねっ!

 私は農作物の本棚を探している。あ、あれ『世界の穀物』ってタイトルの本があるわ。私は手を伸ばして本を取ろうとしたが、手が届かなかった。あれ?私はつま先立ちで手を伸ばしてみたが、それでも届かなかった。

 仕方ないわね。脚立か何か無いかしら。ジャンプで取れないかな。

 ピョン、ピョンと飛んでみるが取れないものは取れない。うぎぎ、悔しい。

 その時、背後からスッと手が伸びて私が見たかった本を取った。


「え?・・・あ、ルシアン様」


 ルシアン様は無言で私に本を差し出した。


「ありがとうございます。助かりました」


 私がお礼を言うと、ルシアン様は軽く会釈をして元の席へと戻って行った。あ、ここはルシアン様の席から丸見えなんだわ。もしかして、私が本に届かないのを見てたのかしら。なんだ、無愛想だけど、優しいんじゃない。ってか、無愛想では無く人見知りの線も疑わしい所ね。

 ルシアン様とは何で仲良くなるんだっけ?んーと、アンジュが調べものをしていて・・・届かない本があって・・・それをルシアン様に取ってもらって・・・。


・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・。


 さっきのはイベントだったんかーーい!! 


 ま、またしてもアンジュ不在(居るけど)のまま突き進むイベント。なぜ、アンジュではなく私で発生するの?いやいや、私とはフラグは立たないはずなんだよね?

 そっそうだわ!さっきのはたまたまだったんだわ!その内相手がアンジュでも同じ事してくれるわよ。本を取ってくれる事なんて人として当たり前っていうか、よくある事だもんねっ!


 ・・・あのさ。思ったんだけどさ。私がアンジュとベッタリ過ぎてイベントが誤爆してんのかな?なんつーか、私がアンジュのイベント横取りしてる、みたいな。少しアンジュを一人で泳がせてみようか・・・?今の所、アンジュを虐めるエルミール嬢も鳴りを潜めているみたいだし、少し私がアンジュに対して過保護すぎたのかもしれないわね。

 私は世界の穀物の本を借りて帰ることにしたので、貸出カードに名前を記入して提出してアンジュと共に図書室を後にした。


「ありがとう、アンジュ。とりあえず調べ物は今日で終わりね。本当に助かったわ」

「えっ?わ、私なら大丈夫ですよ!!言ってくれればお付き合いします!」

「いいえ。アンジュの貴重な時間を私ばかりが独占する訳にもいかないし、ほら、私だって他にもやりたい事あるし」

「お手伝いします!」

「アンジュ。このままでは私がアンジュの未来を(せば)めてしまいそうで嫌なのよ」

「私はそれでもいいです!ジゼルだけが居てくれたらそれで・・・っ」

「アンジュ!アンジュが良くても私が、それは嫌なの。・・・アンジュの為にも私達少し離れた方がいいと思うわ」

「そ・・・う、ですか・・・」


 アンジュが泣きそうな顔をして俯いてしまった。

 うっ、これではなんだか私が、アンジュを虐めているみたいじゃない?でも、アンジュも少し私に依存している気がするのよね。アンジュの泣きそうな顔を見て、危うく冗談だとフォローしそうになったが、それでは意味が無いので、グッと拳を握り締めて堪えた。

ここまで読んでくださいまして、有難うございました(^^)

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