夢を見る月の見た夢ver謎猫
以前に私が投稿した「夢を見る月の見た夢」(http://ncode.syosetu.com/n0811du/)を謎猫さん(http://mypage.syosetu.com/571010/)が再構成してプレゼントしてくださいました!
私だけが読むにはあまりにも勿体ないので、謎猫さんの許可を得て投稿させていただきました。
僕は夢を見る。
夢と言っても、将来の夢や希望の類いではなく
寝ている時に見る方の夢だ。
別に、夢を見る事自体を特別な事とは想っていない。
でも、その夢は自分だけの特別な世界だとは想っている。
行った事も無い海外の街へ旅をしていたり
現実とも区別の無い様な学校へ行く日常の夢だったり
可愛い女の子と水族館に出掛ける夢だったり。
それこそ夢の中なら、空を飛ぶ事もできたり
猫と話せたり、地球外生命体に追われたり・・・
ただ、沢山の夢を見るものの
それ自体を選ぶ事は出来ない。
いつ、その夢から覚めるのかも分からない。
夢の中では、それが夢の中だとは認識出来ないからだ。
それが夢であった事を知る事が出来るのは目が覚めた時
その時に、初めて夢だったと知るけれど
夢と言うのは、数秒間で忘れてしまうほど脆く儚い記憶だ。
ただし、例外を除いては・・・
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僕は今、図書館の正面玄関前に居る。
「あっ!」
「にゃはは~♪」
目の前には、小さく笑う女の子が居る。
「また逢ったね?」
「そうですね~♪」
まるで、本屋やカフェで良く逢う常連客の様だ。
「今日は?」
「今日ですか?」
実は・・・
僕は小説作家をしている。
恥ずかしながら売れ行きは良くない・・・
けど、その娘は僕の書いた物語を読み
それ程多くは無いが、全ての作品への感想を
聞かせてくれた。
それはとてもうれしいことだった。
「まだ、新しい物語は出来上がってないけど」
「そうなんですかぁ・・・(寂)」
「何か新しいの書き上がった?」
「私ですか?」
その娘も、物語を書いているらしく
たまに短めの小説を僕に読ませてくれる。
「書き上がってるなら読みたいな」
「あうぅ~(///)」
「その顔は、今日持ってきているって事かな?」
「むぅ~(照)」
どうやら、彼女は書き上げた物語を
持ってきているらしい。
「小説が有るって顔に書いてるよ?」
「あ、あまり意地悪な事言うと読ませませんよ?(///)」
「ごめんごめん」
「むぅ!」
少し拗ねた顔をしながら、彼女はバッグからB5サイズの
ノートを取り出した。
「いつも想うけど、手書きってすごいよね?」
「私・・・ 機械が苦手で・・・」
「でも、慣れると楽だよ?」
「慣れとかじゃなく、なんか電波が苦手で・・・」
「電波?」
「・・・・・・」
「・・・・・・?」
「・・・・・・(困)」
良く分からないが、お互い困っている・・・
兎に角、彼女は電波が苦手らしい。
と言うか、そもそも僕は彼女の名前を知らない
顔を見る限り年下だとは想うけど、年齢も知らない
勿論、どこに住んでいるのかも知らないし
電話番号やメールアドレスの連絡先も知らない
知っている事といえば、見ての通り身長は
やや低めで黒髪の女の子。
ちょっと猫っぽい不思議な感じの娘という事。
そして、彼女の書く文字はいつも楽しそうで明るい。
小説としては、やや物足りなさを感じることもあったが
そこには僕を惹きつけるだけの魅力がある。
「そう言えば、まだ名前を聞いてなかったよね?」
「私の名前ですか?」
「そうそう、名前」
「う~ん・・・」
彼女は、難しい顔をして少し首を傾げた。
「言いにくければ、ペンネームとかでも良いよ?」
「ペンネーム?」
「僕は、夢見月って名前を使っているけど」
「あっ、本の作者名ですね」
そう言えば、彼女は僕の出版している本を
読んで居るのだから、僕のペンネームも
当然、知っているのだった。
「って! 僕のは知っていたよね!」
「にゃはは~ 知ってました♪」
「僕は、何て呼べば良いかな?」
「う~ん・・・」
彼女は瞳を閉じて小さく首を傾げている。
何やら、本気で考えて居るらしい。
「想い付かなければ、今度でも良いよ??」
「あっ!」
「うん?」
「決めましたっ!」
「想い付いたんだ?」
「はい♪」
明るい返事の後、口にした名前は
彼女のイメージをそのまま表したような
誰もが納得できるものだった。
「なぞねこ?」
「はい♪ 謎猫です♪」
「う~ん」
「だ、駄目でしたか?」
「いや、イメージ通りというか そのままというか」
「えぇ~ 不評ですか??(泣)」
「ち、違う違う!」
「むぅ~(困)」
彼女は、少し不機嫌そうな顔をしている。
「そうじゃなくて、あまりに違和感が無いなと」
「そうですか??」
「すごく似合っている名前だと想うよ」
「ホントですか♪」
今度は嬉しそうな顔をしている。
色々と表情が忙しい娘だ。
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気が付くと、そこはベッドの上だった。
僕は、起き上がりベッドから出る。
身体は軽かった。
そして、毎度の事ながら夢を見ていた事に気が付く。
その夢は、普段の記憶から薄れて消えゆく一歩手前くらいの時期に見る。
登場する相手はいつも同じで、風景や状況は違うのだが不思議な事に
前回まで見た夢の記憶が残っていて、目が覚めた後も忘れない。
「うーん」
軽くストレッチをしながら、夢の内容を頭の中でかき集める。
「いつも出てくる、あの娘は一体・・・」
頭の中ではハッキリと顔の輪郭や風景の様子が分かっているのに
何故なのか説明をしようとすると像がぼんやりと霞む。
今日は、休日だが図書館に借りた本や資料を返却に行く予定があり
早々に支度を済ませ家を出た。
「まだ、早めの時間だから空いているな」
電車を降り、駅から図書館までの間
珍しい事に誰ともすれ違う事は無かった。
世界は光彩を放ち、淡い色に包まれ、どこか懐かしい感じがした。
図書館の正面玄関にたどり着くと
そこには、一匹の黒猫がいた。
「あっ!」
「にゃぁ~♪」
僕の顔を見て黒猫が鳴いた。
僕は迷うことなく答えた。
「また逢いましたね? 謎猫さん」
「にゃ~♪」
「夢見月です」
「にゃは~♪」
黒猫は、まるで笑っているかの様に
にゃぁ~ とゆっくり鳴いた。
そして、僕の夢はまだ続く。
謎猫さんの作品は日常風景が書かれることが多く、「これは、実体験なのでは?」と思うほどです。
是非一度、足を運んでみてください。
「黒猫のエプロン(http://ncode.syosetu.com/n5789cr/)」
「普通に学園祭♪(http://ncode.syosetu.com/n2418da/)」
「ミミと しっぽと エプロンと あとは何?(http://ncode.syosetu.com/n3445di/)」
私の個人的な好みではこの三つがおすすめです!