第3話「発端」
午前の授業が終わって昼休み、奈々ちゃんと昼食をとるのが日課だ。前の席にいる奈々ちゃんが振り向いて、私の机の上にお弁当を広げる。
「そう言えば朱姫、近くに大きなショッピングモールが先週の日曜日にオープンしたの知ってる?」
「うん、テレビで見たよ?オープンの式典やってたの」
私も自前のお弁当を鞄から取り出して、食べる準備をしながら答えた。お箸を手に取り、いただきますと小さく一礼して、一つ目のおかずに箸が触れた時だ。
「あれ、家にいたの?実際に来てたんじゃなくて」
「え?」
奈々ちゃんの言葉にいったん手を止めて顔を上げた。奈々ちゃんは話しながら一つ目のおかずを口に放り込んだみたいで、もぐもぐと口を動かしている。
「行ってないよ?その日はお母さんと一緒に夕飯の支度とかしてたから」
「でも朱姫にそっくりな人が、テレビの人に『取材させてくれー』って頼まれてたんだけど?」
「私まだそのショッピングモールに行ったことないし……他人の空似じゃない?」
奈々ちゃんの言葉に耳を傾けながら、私も食事を取り始めた。途中、奈々ちゃんがテレビの人の真似をする様子がおかしくて笑みを浮かべる。
「朱姫を見間違えるわけないとおもうけどなー?でも朱姫が行ってないって言うなら空似だったんだよね、きっと」
納得したような奈々ちゃんに一安心して、さらに箸を進めていった。けれどふと思い出したように奈々ちゃんが言葉を発する。
「あ、でもでも!もしドッペルゲンガーっていう奴だったらどうする!?」
どことなく楽しそうに聞いてきた奈々ちゃんの様子を見て、オカルト好きだなあと思ってしまった。
私は苦笑しながらそれにこたえる。
「それは怖いね。出会ったら私消えちゃうもん」
「そんなのヤダ!!私が朱姫を守ってあげるからね!」
小さい頃聞いた怪談を思い出して何気なく言っただけだが、奈々ちゃんは鵜呑みにして私の左手を握った。真剣な目の奈々ちゃんの言葉が嬉しくて、私もお箸をおいて右手を重ねて微笑む。
「ありがとう、奈々ちゃん」
「当然!朱姫と奈々は親友だから!!」
にこっと天使のような笑顔で奈々ちゃんはそう言った。




