第25話「家族」
あの後――
父はなんとか一命を取り留めた。
母と私は安心して、父がだいぶ回復してから今回のことを説明した。
けれど父はあの時の『私』が私じゃないことを知っていたらしい。
「どうしてわかったの?お父さん」
「それは秘密だ。また二人で入れ替わられたら大変だからな」
「もうそんなことしないよ」
私たちは父の左右を歩きながら言葉を紡ぐ。
母は私の隣を歩きながらくすくすと笑っていた。
平和な家庭、当たり前の家庭。姉が求めていたものを私はずっと持っていた。
だから今度はいつも教えられていた半分こ。どちらかが持っているものは、お互いで共有する。
「久々の我が家だな……」
「お父さん!録り溜めてる映画を一緒に見よう!!」
「あ、ずるい!パパは私とバラエティーを見るのよ!」
「ほら、二人とも。あんまりお父さんを困らせないの」
姉と私が喧嘩を始めそうになるのを母が仲裁して止める。
二人で同時に父を見上げると、父は何とも困った様子で少し後ずさった。
「じゃあ間をとって、朱姫は俺とデートってことで」
「い、一之瀬くん!?ずっと待ってたの?」
家の前の塀にもたれかかっていたらしい一之瀬くんが、少しすねた様子で間に割って入ってきて私を引き寄せる。
父争奪戦をしていたからうっかり気付かなかった。
「あ、朱姫は……」
「お父さん?」
「パパ?」
ぷるぷると俯いて震えだした父。
どうしたんだろうかと心配になった私と姉が父を呼ぶと、ばっと父が顔を上げた。
「朱姫はまだ嫁にださんー!!」
「わっ!?」
「行こう」
父が私に飛びついてくるが、それをかわすように一之瀬くんは私の手を取って走り出した。
後ろでみっともなく泣きわめく父を母が制裁する。
この間までのことが嘘みたいで、心がいろんなもので満たされている。
人間ってどこまでも身勝手で、汚くて、恐ろしい生き物だ。けれど理性を手に入れたからこそ、できることもある。
それを思い知ることができた、短い間の私の話。
――あなたにとってこの世で一番恐ろしいものはなんですか?
それは理性を持つ人間だけに与えられた――なのかもしれない。
はじめまして、作者の姫柊 優莉愛と申します。
ここまで読んで下さった皆様方には大変感謝いたしております。
この作品は、高校生の頃に思いついたネタでした。
書く機会を見失っていた折に、今回の『夏のホラー2014』に出会いました。
お気づきの方もいらっしゃると思いますが、少し種明かしをしたいと思います。
この作品の主人公の名前についてです。
双葉 朱姫、苗字はお分かりかと存じますが、双子であるという意味を込めまして『双』という字を使わせていただきました。
同じく名前の方なんですが、こちらは少し頭をひねってみました。朱姫という名前、分解すると『女』と『未』という字を含んでいます。
もうおわかりだと思いますが、この漢字を合わせると『妹』という字になります。主人公が『双子の妹』と暗示してありました。
こちらを読んで少しドキッとされたら嬉しく思います。
長らくの間ありがとうございました。




