第14話「優しい温もり」
話し終わると一之瀬くんは、口元を手で覆ってしばらく考え込む。
やっぱり信じ難いよね、そう思っては私も膝へと視線を落とした。
「――じゃあ、さ……俺の家、くる?」
「はい!?」
突然の申し出に驚いて顔を上げる。
一之瀬くんは何かを企んでいるような笑みを浮かべていた。
「だって、家にその見知らぬ女がいる間、双葉は寝泊まりする場所ないんだろ?」
「そ、それはそうだけど……」
「俺の家なら三食付いて宿泊代ゼロ!お風呂とトイレも付いてるし」
確かに一之瀬くんの言うとおりなのだけれど、タダで人の家に寝泊まりするなんて申し訳ない。
そう言おうとしたけれど、それより一之瀬くんの方が早かった。
「あ、もし貞操の心配してるんなら――」
「そんな心配してません!じゃあせめて……ご飯くらい作らせて?」
高校生のお小遣い上、ホテルに泊まるなんて無理がある。しかもいつまでこんな生活が続くかわからない。
それならばいっそ、友達の家と思うも奈々ちゃんは家族と一緒に住んでいるため迷惑だ。
残る手段は野宿か、一之瀬くんの家か。考えるまでもない選択だ。
しかしそれでは私の気がおさまらないため、妥協案を提示して一之瀬くんを見上げた。
一之瀬くんは、私の言葉に驚いているのか目を丸くしていた。
「……じゃあそうしてもらおうかな」
私と目が合うと、一之瀬くんは小さな息を吐いた後、薄く微笑んだ。
相変わらずカッコいいな、なんて思ってしまっては顔を背けた。
「じゃあ、先に帰ろう。話はそれからってことで」
「話って?」
「帰ってからの秘密」
一之瀬くんは立ち上がると振り返って手を差し出してきた。
私はその手を取って立ち上がると手を放そうとしたが、できなかった。
一之瀬くんが手をつないだまま歩きだしたから。
手のひらから伝わる一之瀬くんの体温が、この闇の中でも歩き出す勇気をくれる。
軽く握り返しては、一之瀬くんの家に着くまで手をつないでいた。




