第13話「質問」
「ごめんね?泣いちゃったりして……」
「いいよ。双葉の泣き顔見られたし」
「それ、どういう意味……?」
一度泣くと気持ちがすっきりした。
傍にいてくれた一之瀬くんに謝罪すると、小馬鹿にされたような気がして軽く頬を膨らませる。
そんな私の様子がおかしいのか、一之瀬くんは楽しそうに笑っていた。
辺りはもう、夜の闇に包まれて真っ暗だ。
ベンチのすぐ後ろにある外灯がついている。
「こんな遅くまで一緒にいてくれて、ありがとう。帰らなくていいの?お家の人心配するんじゃ……」
「大丈夫。俺、一人暮らしだから」
「え、そうなの!?」
一之瀬くんの心配をするも、不要みたいだった。
一人暮らしと聞くと、意外に思えてまじまじと見つめてしまう。
「じゃあここからは俺が質問。いい?」
「ど、どうぞ……」
「これは確認だけど……あの男とは恋人じゃないんだよな?」
あの男、そう一之瀬くんは言葉を濁したけれどすぐに誰だかわかった。
下駄箱での口論やあの写真を見てしまえば、疑わずにはいれないだろう。
私は自分の膝を見つめながら答える。
「……うん。私、告白なんかしてないし、あんな写真のようなことだってしてない」
はっきりと告げた。一之瀬くんには誤解をしてほしくないから。
一之瀬くんに視線を戻すと、一之瀬くんは真っ直ぐ私を見ていた。
「じゃあ、次。どうして家じゃなくてここにいたの?」
「そ、れは……」
一之瀬くんから視線をそらせなくなっていた私は、次の質問に対して少し戸惑ってしまう。
こんなあり得ない話を信じてくれるだろうか。けれど田中くんのことを信じてくれたから、きっと大丈夫だ。
一之瀬くんを信じて、私はここ数日の出来事をすべて一之瀬くんに話した。