第9話「その三、写真」
――数日後――
あの日以来、田中くんが私に絡んでくることはなくなった。
その代わり、あの日の出来事のせいで私の周りにはたくさんの人が押し寄せている。
「双葉さん!一之瀬君とどういう関係なの!?」
最近はずっと、これを聞いてくる女子たちに絡まれていた。
それだけではなく、ひそひそとあらぬ噂をたてられたりもしているらしい。
奈々ちゃんが教えてくれたけど、噂に食いつくほど私もバカではない。人の噂も75日、呆ればすぐに終わる話だろう。そう思っていた。
そんなある日、いつも通りの時間に家を出て学校に登校し、上履きに履き替え教室に行こうとした時だ。
「これ……マジ?」
「映っているのって二年の田中っていうやつでしょ?」
「でもこの相手って……」
玄関前の掲示板にものすごい人だかりができていた。いつもなら気にも留めないのだが、聞こえた名前のせいか嫌な予感がする。
そっと近寄っていくと、私に気付いた人たちが周囲の人たちに合図を送り、瞬く間に騒然としていた場所が静かになった。
私が掲示板に近づくたび、周囲の人は一定の距離を保って後ろに下がる。
やっと辿り着いた掲示板には、写真がたくさん貼られていた。
「な、に……?これ……」
どれも卑猥で下品な写真ばかり。いわゆる男子と女子がそういうことをしている最中の写真だった。
ただそれだけなら幼いとかで済んだかもしれないが、問題はその写真に写っている人物だ。
男性は田中くんや、撮影に協力した人たちだろう。
そして女性の方は、私に似た人が映っていた。
「これってやっぱり双葉さんだよねー?」
「でも双葉さんってこの人と付き合ってないって言ってたことない?」
身に覚えのない写真に、ぞっと鳥肌が立つ。
いったい何が起こっているのか、自分でも把握できないでいた。
「これ合成だろ?今の世の中だったら簡単に作れるって」
「でもあまりに生々しくない?」
「双葉さんがこんな底辺を相手にするわけねーじゃん!まあでも……してくれるなら、な?」
女子たちからの白い目と、男子からのいやらしい視線。
何であんな写真があるのかもわからないし、ここに私の味方はいない。
「――双葉?」
「い、ちのせくん……」
背後から聞こえてきた声にばっと振り向くと、この場に一番いてほしくない人がそこにいた。
一之瀬くんの視線は最初は私に向けられていたけれど、私の様子に気づくと掲示板へと移る。
普通の表情をしていたけれど、それを見た途端目を見開いていた。
「あーあ、一之瀬くん可哀想ー」
「まさか双葉さんがこんな人だって誰も思ってなかったもんねー」
一部の女子生徒がわざと大きめな声で告げると、再び周囲の人も騒ぎ始める。
私は一番見られたくない人に見られてしまったショックで何も言葉にできず、一之瀬くんの隣を通り過ぎて学校から出て行った。
「朱姫、おは――」
途中すれ違った奈々ちゃんにも気付かず、私はひたすら走り続ける。
あんな写真、身に覚えがないことは私が一番知っている。でもじゃあ何故あんなものが存在するのか。
合成にしては出来過ぎているように見えた。
残す可能性は一つ――
『ねえ、ドッペルゲンガーって知ってる?』




