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桧垣が移住して数ヵ月後の夜


双葉と桧垣は、夕方に店を閉め片付けと掃除に追われていた。

部屋の中にまだ残っているコーヒーのほろ苦い香り。その香りに包まれながら双葉の気持ちは徐々にオーナーから名倉双葉へと戻っていく。それは桧垣も一緒だった。そして、モップで床を拭きながら、桧垣は双葉に声をかけた。


「・・・名倉・・・」

「何ですか?」


「・・・ちょっと待っててもらえますか?」


いきなり、改まったような敬語で双葉に声をかける桧垣。双葉は、そんな桧垣の言葉に疑問を感じながらもカウンターに座り、静かに桧垣を待った・・・。


「お待たせしました(笑)」


キッチンから出てきた桧垣。その手には、ココットを逆さにして隠された何かがプレートの上に乗っていた・・・

そして、そのプレートが静かに双葉の前に置かれる。


「開けて・・・もらえますか?」


桧垣のその言葉に、双葉は静かに上に乗ったココットを手に取った。



「・・・えっ・・・」



茶色のココアパウダーで包まれた表面。そのティラミスの真ん中にダイアの指輪がきらきらと輝いていた。



「もう一度告白させてください。」



真剣な表情で桧垣は双葉を見つめならそう話す。


そして・・・



「俺の一生をあなたに捧げます・・・ずっと好きでした、結婚を前提に付き合ってください!」


「はい。よろしくお願いします。」



長い長い葛藤は、桧垣と一緒にここに居るうちに自然と終焉を迎えていた。双葉の気持ちはおのずと決まっていたのである・・・。



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