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カランカラン・・・
「いらしゃいませ。」
双葉の視線の先には桧垣。
これがいつもの光景になっていた。
ある日のこと
扉を開けた桧垣は、双葉の目に映っていた“いつもの桧垣”と違っていた。スーツ姿の桧垣。卒業式以来この姿の桧垣を見ていなかった双葉。そして、ドアを閉めていつもの様にカウンターに座るとかばんから何かを取り出す・・・
「こ、ここで働かせてください!」
そういいながら、写真つきの履歴書を双葉に差し出した。びっくりしながらもその履歴書を見ると、その希望欄に・・・
“名倉双葉様に、私の人生のすべてを差し上げます。”
この一文が書かれていた。
動揺する双葉に桧垣は「本気・・・ですから・・・。」と恥ずかしそうに話す。双葉は静かに気持ちを抑えると「では、アルバイトとして来週からお願いします。」と店長としての顔でそう返答した。
それから、桧垣は双葉の町に移住。
朝早くから出勤し店の掃除をはじめ、たまに来る客の接客や皿洗いをする。そして休みの日は、調理の勉強を独学で学ぶ。そんな日をすごしていく。その姿を双葉は目の当たりにし、少しずつ気持ちが変化していくのを実感していた。




