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あの事件から数ヵ月後
「本当に大丈夫なの?」
「大丈夫!こう見えても向こうではカフェでバイトしてたんだから!」
母の心配をよそに双葉はこの店をオープンさせた。
のどかな田舎町の、のどかな風景が広がる空間にぽつんとできた小さなカフェ。その不思議な光景に町中の住民が不思議そうに店を眺めるのだが・・・
「誰も来てくれない・・・(泣)」
そう思いながら、双葉はカウンターでコーヒー豆をミルへと移していた。
カランカラン・・・
「いらっしゃい・・・ませ・・・」
そこにいたのは、桧垣だった。
少し、おどおどしながら「ひ、ひさしぶり。」とぎこちなく笑顔を見せる桧垣に「お、おひさし振りです。」とぎこちなく返す双葉。桧垣はカウンターに座ると「ホットコーヒー・・・1つ。」と注文する。双葉はぎこちないそぶりで沸かしていたお湯をカップに注ぐと、ミルで砕かれたコーヒー豆をサイフォンにセットして湯を注いでいく・・・
「ど・・・どうぞ。」
白いカップにそそられたこの店最初のコーヒー。桧垣はそれを受け取るとカップを口に運んだ。そして、にこっと笑うと「おいしい。」といって追加注文。双葉は、桧垣のそのカップに再びコーヒーを注いだ。
数分後
「ありがとう、ご馳走様。」
桧垣は、カウンターにお金を置くとそのまま店を後にする。
そんな日が2ヶ月も続いた。




