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木暮は、家に着くと、すぐに冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取り出し、キッチンで一気に飲み干した。それでもまだ苦しいのか、うまく呼吸が出来ず“ハァハァ”と過呼吸を繰り返していた・・・。
葵は、ほの暗い部屋で木暮の名刺を見ながらソファーで寝転がっている。心の中では、まだ葛藤が続いていた。
そんな時、葵の携帯電話が着信を知らせるために光りだす。
“名倉双葉”と表示して・・・。
「あれ・・・葵ちゃんでない・・・」
双葉は、駅のホームから葵に電話をかけていた。今日の様子を見て不安になったから・・・。
不審に思いながら携帯をきり、電車に乗り込んだ。
電車の扉にもたれながら、双葉は遠くの景色を見つめている。
薄暗い赤が青と紫を経て黒に変わっていく景色を・・・
翌日
双葉は心配になって、葵の家を訪ねる。
インターホン越しに聞く葵の声は・・・元気といえるものではなかった。
「葵ちゃん、大丈夫?顔色悪いよ。」
「大丈夫・・・上がって。」
双葉は、不安になりながらも葵の家に上がった。葵はふらふらとしながらも、キッチンに行きグラスにジュースを注いで双葉の前に持ってくる。
双葉はあるものに気づいた。机の上に置かれた小暮の名刺。葵が不調の原因を突き止めたかのように感じた双葉。しかし、少し様子を見ることにした。唐突に質問するのは葵を苦しめてしまうと感じたから・・・
葵が座って少し経ってから・・・




