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(双葉)
双葉は、ある交差点の前にいた。
信号機の真下には、花や酒、タバコが置かれていた。
「先輩がいなくなって、もう半年なんですね・・・。」
そういいながら、双葉はタバコを置いた。
「名倉?」
双葉の前にいたのは、もう一人のサークルの先輩、桧垣恭介だった。
「桧垣先輩・・・。」
「久しぶりだな。」
そういいながら、桧垣は、酒を手向ける。
二人の間に少しの沈黙が続く・・・。
「お前・・・桜井のことずっと好きだったんだよな?」
双葉は、しばらく沈黙したあと、泣きながら重い口を開いた。
「ずっと・・・忘れられないんです。まだ、好きなんです。でも先輩は・・・あの日・・・」
「もういい。」
そういって、桧垣は、彼女を抱きしめた。
「忘れられるわけないよな。好きな人間が、目の前で死んだなんて現実。半年しかたってないし・・・」
半年前
双葉が好きだった先輩、桜井悠馬は、ここで事故に遭い亡くなった。
双葉が桜井に思いを告げ、結果が出たその直後、目の前で・・・
(名倉、ごめんな。俺は、その気持ちに答えられない。だから、俺のことは忘れてほしい。)
今でも、双葉の心の中で、今でも聞こえてくる声。
今でも、夢に出る記憶。
(じゃあな。また明日な。)
まだ消えない
消すことの出来ない
記憶
双葉は泣いた。
桧垣の中で、ただひたすら・・・




