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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

パルパルパルパル...

予約ミスってて投稿時間遅れたけど気にしない!!

 暗い々い、くらーい世界。


 太陽の光なんて無く、ともすれば人間の眼では自分の身体も見えなくなるような闇の中...。

そこには生命力に満ち充ちた存在など無く、在るのは、やっとのことで視界を確保出来る程度の妖しい光を放つ、少々の苔や蔦。たまに小さな音を立てる蜘蛛や百足だけ。

 じめじめとして生温い、居心地の良い空間。

そんな陰気渦巻く場所だから、私のようなモノが集まる。


 ......あぁ。そういえば、煩いぐらいに元気な奴等も居たっけ

一応、同族に示される彼・彼女達。

でもあの乱痴気騒ぎには着いていけない。元々、一緒に騒ぐ気なんかないのだけれど......。

彼等も私が騒がしいのは好きじゃないのは判ってるので、無理に誘ってくるような事はしない。


 なので、私は、一人暗い闇の中。


只、独り。


妬ましいあの人の事を想う。




 元々『彼』は、普段はお調子者だが、ふとしたときに誠実さを覗かせる不思議な人だった。


 私たちは正式には婚約をしていなかったけれど、強い絆で結ばれた、仲の良い男女だった…と、思う。

彼の隣りに居ると、心がぽわぽわして、同時に胸を締め付けられるような感じがして...。

でも、そんな感覚も決して嫌いではなかった。

私は一生、この感覚が続けばいいと思い、彼にもその思いを伝えていた。



しかし、彼は裏切った。


 時々、彼が塞ぎ込む様なしぐさをしていたのには気づいていたけれど、気にも留めなかった。どうせ、小遣いが少ないとでもぼやいているのだろうと…。

しかし、そんな気楽な考えも、彼が一人の女を連れてきた事で間違いだったと知る。


『旅先の宿で寝惚けて襲い、孕ませてしまった。もうお前と一緒に居る事は出来ない。』


 その言葉を聞いたとき、天が揺れ、地面が近づいた。

 もちろん、揺れ、膝から崩れ落ちたのは私の身体のほうである。そんな私に思わず駆け寄ろうとしたのだろうあの人は、肩幅ほど脚を踏み出したところで立ち止まった。


(何故…?)


 その理由は、彼の小袖を、横に立つ女が握りしめていたからだった。

まるで、自分のものだと主張するかのように、強く、皺が出来るほどに…。

そしてそのまま、彼は私に背を向け去って行った。微かに肩を震わせながら。


茫然自失の体でソレを見ていると、女が首だけで振り返る……。

そして、にやり……と、淫逸な笑みを浮かべた。


その瞬間、理解した。


 恐らく、彼を最初に襲ったのは、あの女のほうなのだろう。

艶やかな服でも着て、彼に迫ったのだろう。自分を求めて欲しい…、と。

そして事が終われば、『貴方の子が出来た、責任を取れ。』と追い打ちを掛けるだけでいい。彼はお調子者ながらもとても誠実な人だったから、それだけで引っかかってしまったのだろう…。









 そう頭では理解していても、あの人が憎い。

私の事を求めておきながら、『責任を取らねばならないから』と、それだけで切り捨てる。

そんな彼が許せない。

今まで、私に向けてくれたあの笑顔を、他の女に見せているのが赦せない。


 何より、私のナカを滅茶苦茶に掻き回したモノを、あの女に突っ込んでいるのが気に食わない。



 そんな想いから私は神に頼み込み、すがり付き、鬼へとその身を変えた。

彼のモノを根元から引き抜き、浅ましい女を六つに分けた。

 彼も女も、最初の一度だけ跳ねるように全身を動かしたが、その後はまるで物にでもなってしまったかのようにピクリともしない。

私はそれに構わず、塊の絶対数を増やしていく。

ボグリ、ボグリ、ボグリ、と。

人間であった頃の非力さが嘘のように、腕力(かいなぢから)だけで裂けてゆく四肢。

あぁ、本当にこの身は鬼に堕ちてしまったんだなと、遅蒔きながら思う。

しかし、腕に込める力だけは変わらず、寧ろ一つ塊が増える事に力が増した。

 その時、裂いた塊の一つにある谷の間から中を覗いて見れば、ナカには誰も居らず、彼は謀られたのだと知った...。



 しかしその様な事はもはや関係無い。

女は皆、一度は駆け落ちに憧れるものだ。

なればこそ女の事など捨て置き、私と生きて欲しかった。

生きる呵責に苛まれるならば、心中して冥土にまでも付き添ったと言うのに。新婚旅行が黄泉の国の責め苦巡りとは、なかなかに愉快ではないか。

 初物に目がないあの人ならば、嬉々として飛び付き、あの世でも自分のことを、洛中一、長い煙管で煙草を吸った男だと自慢していただろう。



ーーまぁ、そんなこと。

今考えたところで詰まりのない事なのだけれど。


 自らの許嫁を捨て、嫉妬に狂わせ挙げ句に言葉通りの鬼に身を堕とさせる男など、神が許しても私が赦しておくものか。

いや、その神も私のあまりにもあんまりな形相に、あの人を売ったのか。

そういえば、彼の肉親は大分前に亡くなったと聞いていた。

女?

あの人を拐かすのが目的で、そこには決して愛なんか無かったに違いない。

まだ二人で暮らしていた頃も、散歩の途中、大通りで会う年若い女の子に顔を紅く染められ、逃げられていたものだ。


 嗚呼、ならばあの人はやはり、誰にも愛されていなかったのだ。


 当たり前だ、自らの許嫁を捨て...。

ほら、結局この考えに回帰する。

やはり、あの人は皆から嫌われているのだ。

それこそ、神、にも。



全く、しょうがない人である。

所詮は私が居ないと何もできない。何もできやしないのだ。




「......くふ。くふふふふ......」




 何処からか聴こえてきた愉悦を孕んだ笑い声に、私は回想に耽っていた意識を現実に引き揚げる。

(『橋姫』の棲む場所で、こんなに愉しげに笑うなんて......妬ましいわね)


旧地獄街道の方から何かしらの物の怪でも流れて来たのかと辺りを見回すが、それらしきものは見当たらない。


「一体、誰なのかしら?......くふっ。

......あら?」


どうやら、音の出所は私の口腔からだったようだ。

知らず知らずの内に、私は愉しいことを考えていたらしい。

はて、愉しい事とは何ぞや?

自分の考えていたことを思い出そうとし、再び意識を脳内に移す。

瞬間、寸前まで考えていたことが浮かんできて、私は今度こそ意識しての歓呼の声を上げた。






















(あなたは誰にも愛されていなかった......。ならやっぱり......)







「私が愛してあげなくちゃ......ね?」

 どこまでも愛しいあの人を想いながら、懐の桐の小箱を一撫でした。

最初はパルスィとひたすらイチャコラするハズだったのに……。


不思議だわー、マジで不思議だわー(棒)

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