令嬢と女中と王子様
ちなみにヴァンディ王国は、ウェールズと「オリビアが18になったら嫁ぐ」という約束をしました。なのでオリビアはいま、ぴっちぴちの18歳です。
「……お疲れ様でした、オリビア様」
ため息が止まらないオリビアにかかった労いの言葉は、女中のものだった。
「ありがとう。陛下の前はやはり緊張するものね」
オリビアが笑いかけると、女中も困ったように微笑んだ。
「それに、オリビア様は長旅でしたからストレスや疲れも大きいと思います。本日はお部屋にお戻りになられた方が」
確かに隣国とはいえ、国土の広いヴァンディからウェールズに渡るのはそれなりの時間を有した。体に負担が無いと言ったら嘘だ。
「そうね。今日は私の部屋に連れて行ってくれるだけでいいわ。お願いね、えっと……」
オリビアが言い淀むと、女中がにっこりと笑顔を浮かべて頭を下げた。
「申し遅れました。私はアリス・ミラーといいます。この折から、オリビア様のお付きを務めさせていただくことになりました。不行きな面もあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします」
「そうなの。よろしくね。同じ年頃の子で良かったわ」
オリビアが嬉しそうにアリスの手をとると、後ろで見ていた若い女中達も色めき立った。
もしかしたら、ウェールズ王国の王族は従者さん達と仲良くしてないのかもしれないわ。
だとしたら、私が従者さんと仲良くするのも、問題なのかしら。
「ねえ、アリス「オリビア・エヴァレット……?」
アリスに声をかけたところで不意に名前を呼ばれ、オリビアは硬直した。いや、名前を呼ばれたから硬直したのではない。この声に、心当たりがあったからだ。
背後からの凄まじいオーラに、オリビアは振り向くタイミングを失った。
気付けば女中達は、しっかり45度頭を下げて整列している。彼女達も心なしか動揺しているように見える。
そんな空気を知ってか知らずか、彼は傲慢な態度でなおも続けてきた。
「久しぶりだな。相も変わらず地味だな」
「ご帰宅は今日では無かったのではっ……」
「ふうん。俺が早く帰ってきちゃ邪魔だった?」
「んな事言ってません」
振り返るとそこには二年前より大人びた美青年が立っていた。長身に綺麗な金髪で、青い瞳は美しいが、その外見には中身が伴っていない事をオリビアは知っている。
エリック・ガーフィールド第一皇子。
彼がオリビアの6年前からの許嫁であった。
「言っとくけど。俺は結婚してもお前の事は愛さないから」
……言ってくれやがりましたわねあのボンボン……。
怒りに震えるオリビアとうろたえる女中を残し、エリックは颯爽と去って行った。
グダグダしてしまったー( ;´Д`)




