取り調べ
「いい加減に認めたらどうなんだ!」
取調室の前で、刑事は言う。
「だから俺はやってねえって言ってるだろ」
K容疑者は被害三千万円ほどの窃盗の罪を否定する。
「俺が犯人だと思うなら、証拠かなにか見せてみやがれ」
「証拠ならある」
「なにィィィ!!!」
刑事は少し間を置いてから、話を元に戻す。
「証拠はあるんだぞ。どれだけ粘ろうと無駄だ」
「ハッ!誰が認めるか、そんな罪。此処で俺がやりました、って言ったら犯罪者として情けねえよ!」
「…」
「…」
「やっぱりお前だったんだな」
「やっちまった」
動揺する二人。
「どうしてこんな事したんだ。被害三千万円だぞ」
「金が無かったんだよ!」
「仕事は何をしていたんだ」
「無職だよ」
「どうして就職しようと思わなかったんだ」
「思ったよ。だがこんな不況の世の中じゃ就職したくてもできねえだろうが!」
「こんなんじゃ、天国のお母さんやお父さんが泣いてしまうぞ」
「父と母はまだ生きてるよ!ったく、失礼なヤツだ」
刑事とK容疑者の会話は続く。
「生計はどうやって立てていたんだ」
「盗んだものに決まってんだろ!」
「そうか。他になにか犯罪をしたりはしたか?」
「そんな事訊かれたって、詐欺で大金を手に入れたなんて言えねえだろ」
「言っちゃったな」
「…」
「ところで、お前は法律というものを知っているか?」
「知るかンなもん!知らねえから此処にいるんだろうが!」
「お前、何を勉強してきたんだ?」
「どうやって金を巻き上げるか考えてたんだよ!そうじゃなければ成功するわけねえだろ!」
「それは昔からか?」
「そうだよ」
「じゃあ、お前の親は詐欺師だったのか?」
「どうしてそうなるんだよ!俺が何を考えてるかは俺の問題だろ」
「そうか。お前は大変だっただろうね」
「お前なんかに同情されたくねえよ」
「じゃあ、今度一緒に飲みに行かないか?」
「何でだよ!」
「いい飲み屋知ってるからさ」
「もういい!俺は呆れた」