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9ー6 目覚め

 9ー6 目覚め


 夢を見ていた。

 暖かくてふかふかした布団に包まれて眠っている夢だ。

 そして。

 どこからかコーヒーのいい香りが漂ってくる。

 焼けたパンとベーコンの匂いに俺の腹がぐぅっと音をたてる。

 「クロウズ君」

 誰かの声が聞こえて。

 意識が浮上していくのがわかったけれど、俺は、まだ目覚めたくはなかった。

 もっとこの暖かい場所でまったりとしていたい。

 「クロウズ君!」

 白い手が伸びてくるのが見えたような気がして俺は、身をすくめる。

 まだ、目覚めたくはない。

 だが。

 「クロウズ君、いいかげん目を覚ましなさい!」

 俺の魂に直接触れてくるようなその声に俺は、強制的に目覚めさせられた。

 目を開くと。

 「クロウズ君……よかった。意識が戻ったのね!」

 目の前には半泣きのラザニエルさんがいて俺を覗き込んでいる。

 「……ここは……?」

 俺は、まだ半分眠っているような状態で辺りを見回した。

 薄暗い部屋の中央には、巨大な銀色の狼が横たわっていて俺は、そのふさふさの毛の中に横たわっていた。

 「もしかして……アネッサ?」

 『気がついたか、手のかかる奴だな』

 アネッサの声が頭の中に響く。

 俺の隣に腰かけて毛に埋もれかけているラザニエルさんが俺をぎゅっと抱き締める。

 「よかった……意識が戻って。もう、助からないかと思ったよぉっ!」

 俺に抱きついて泣いているラザニエルさんの背中をそっと撫でながら俺は、考えていた。

 これって、どういう状況?

 『主よ』

 魔鏡の声が聞こえて俺は、顔を上げる。

 空中に魔鏡が浮かんでいた。

 『あなたは、山の神……かつての魔王と呼ばれた存在を支配下に置こうとして限界を超えてしまった』

 マジですか?

 じょじょに記憶が戻ってくる。

 俺は、魔王を『下剋上』の力で隷属させようとしたんだった!

 それで。

 そこから思い出せないし!

 いったいどうなったんだ?

 『安心してください、主よ』

 魔鏡が答える。

 『あなたは、魔王を隷属させることに成功した。今のあなたは、魔王と呼ばれるモノなのです』

 「ほえっ!?」

 俺は、慌てて自分の全身に目を走らせる。

 白いイームス布で作られた夜着を身に付けている俺は、今までと少しも変わることのないお子さま体型をしていた。

  

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