8ー6 哀訴
8ー6 哀訴
「さて、と」
ラザニエルさんがぐっと中身を飲み干すと杯を置いた。
「供物をいただいた以上は、あなたたちの望みを叶えないわけにはいかないわね。なんでも言ってごらんなさいな」
「はっ!」
ひれ伏している婆さまがラザニエルさんの方に顔を上げる。
「今、山では、封じられていた神が目覚め害をなしております。それを鎮めていただけないでしょうか?」
「そんなことなら容易いご用よ」
ラザニエルさんがにんまりと笑った。
「あたしが出るまでもない。この下僕のクロウズ君で十分ね」
はいっ?
俺がぎょっとしていると婆さまたちがざわめく。
「精霊の使い魔だったとは!」
「やはりただびとではなかったのか!」
いや。
俺は、ちょっと恨めしげにラザニエルさんを見上げる。
ラザニエルさんは、可愛らしくちろっと舌を出しているし!
「俺が山の神を鎮めるために力を貸します。ですが、もちろん精霊様もご尽力いただきますよ?」
すべてを俺に押し付けようとしているな!
俺がじっと冷たく見つめるとラザニエルさんがふふ、っと笑う。
「当然!」
ラザニエルさんが婆さまに告げた。
「これより我らが山の神を封じる。だが、その前に『聖女の心臓』の在処は、どこかしら?」
「それは……」
口ごもる婆さまの背後からコーザが口を挟んだ。
「それは……俺の許嫁の体内に」
「ふぅん?」
ラザニエルさんがコーザに命じる。
「なら、その許嫁は、どこにいるの?油を注がずに火を燃やすことはできないのよ?」
「……それは」
コーザが言い淀むがすぐに意を決したように顔を上げた。
「精霊様!どうか、どうか、俺の許嫁を……ライザをお助けください!お願いします!」
コーザの訴えに俺は、ラザニエルさんを見た。
ラザニエルさんは。
にやりと怪しい笑みを浮かべて何かぼそぼそと呟いていた。
「いいっ!エキゾチックな美青年にお願いされるの、たまらん!」
また、この人はっ!
俺は、ごほん、と咳払いをした。
「精霊様?」
「ああっ!」
正気に戻ったらしいラザニエルさんが今さらの真面目な顔になる。
「その許嫁をここに連れてきなさい」




