5ー3 生き残り
5ー3 生き残り
飛行魔法でアズールの町へと戻った俺は、すぐに薬を錬成しそれを家々に配った。
「これは、『ローム病』の薬ではないけど、症状を軽くすることができる薬です」
俺は、アイダさんを探すと2人で町長の家へと向かった。
町長とその妻の死骸は、ベッドに横たえられたままだった。
どうやら使用人は、ほとんどが逃げ出してしまったようだった。
もう、家には、誰もいないのか?
そう思い出した頃に微かな鳴き声が聞こえてきた。
2階の隅の子供部屋らしい部屋からその声は聞こえていたが、中に入ると藻抜けのからだった。
「変だな……」
俺が首を傾げるとアイダさんが唇に指をあててクローゼットへと歩み寄った。
そっと扉を開くと中には幼い金色の髪の少年が目に涙を溜めてこちらをじっと見つめていた。
「君は?」
問いかけるアイダさんにも少年は、答えない。
俺は、アイダさんに告げた。
「たぶん町長の子供だ」
唯一残っていた老婆が言っていた生き残りの坊っちゃんというのがこの子なのだろう。
「安心して。もう、大丈夫だからね」
アイダさんが子供を抱き上げる。
俺たちは、その子を連れてアネッサのもとへと向かった。
アネッサは、村の外れにある教会にまだ『ローム病』にかかってない人々を集めていた。
道々、少年に話しかけるがまったく返事もしない。
恐らく家族が『ローム病』に罹患した際にこの子だけは、隔離されていて罹患しなかったのだろう。
あの老婆のお手柄だ。
俺は、教会に着くとアネッサと一緒に人々の世話をしていた神官に町長の子供を渡した。
「薬をみなに配ったからたぶん2、3日もすればみな回復するでしょう。それまでここからみなを出さないでください」
「かしこまりました」
神官は、俺に恭しく頭を垂れた。
神官もアネッサと同じように口許をイームス布で覆っている。
俺は、神官たちに食料がどれぐらい残っているか確認した。
収穫の時期だったが、この町には、ほぼほぼもう食料の蓄えはないようだった。
というのもちょうど穀物の刈り取りの時期にこの『ローム病』の流行が重なったために収穫作業ができずにいたのだとか。




