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第五話 信也がくれたお守り

本作は、日常の違和感がじわじわ積み重なるタイプのホラーです。

「……いや」


純のその短い言葉に、なぜかそれ以上踏み込めなかった。


「さ、さあ俺たちももう帰ろうよ」

心がそう言った瞬間、

教室の空気が、ふっと軽くなった気がした。


「そうだな、一緒に帰ろう」

「純も一緒に帰るか?」


「いや......俺はいい」

純は、難しい顔をした。


「じゃ、またな」


そう言ったが、

純は返事をしなかった。


俺と心は教室を出た。



「純、どうしちゃったのかね?」


「分かんないけど」

「信也が、急に純のマネをしたのが関係してそう」


「あー、あれね」

「正直、ちょっと怖かったよ......」

心は、苦笑いを浮かべた。


「俺もだ......」


どうしても、あの瞬間の信也の顔が

忘れられなかった。


家に着いた。


俺は、すぐベッドの上に寝転がった。


「なんでこんなにモヤモヤするんだろう......」


俺は、頭をスッキリさせようと風呂に入った。


「あまり、スッキリしないな......」

ため息をついた。


風呂から出た。


髪をタオルで拭きながら、何気なくスマホを見る。


通知が一件。


——信也。


一瞬、指が止まった。


なんでだろう。


嫌な予感がした。


恐る恐る通知をタップした。


次の瞬間、


俺は......一気に鳥肌が立った。


そこに表示されていたのは、


「孝也の家行ったんだけど......」

「孝也......いなかった」


「ドア、開いてた」


俺の背中に、冷たい汗が流れた。


追加でメッセージが来る。


「ま、鍵かけ忘れて出てったのかもしれないよな」

「あいつ、そういうところありそうだし」


……数秒後。


「でも、部屋の奥、なんか寒かったわ」


俺は、これ以上話を聞くのが怖くなった。


画面を持つ指が、わずかに震えている。


「あ、明日詳しく話してくれ......」


スマホを伏せ、布団を頭までかぶる。


……なのに。


なぜか、寒気が消えなかった。



通知が鳴った。


静まり返った部屋に、その音だけがやけに大きく響く。


俺はビクッと体を震わせた。


布団からそっと顔を出し、恐る恐る画面を見る。


──信也。


「分かった!」


……たったそれだけ。


なのに、なぜか胸のざわつきが消えない。


俺は、もう寝ることにした。


スマホを伏せ、目を閉じる。


部屋は、やけに静かだった。


俺は、電気を消すことが

できなかった。



目覚まし時計の音で目が覚めた。


何とか寝ることができたようだ。


「テレビつけよ......」


人の声を聞くと、少し安心できた。


さっさと学校に行こうと思い、身支度をして

いつもより早く家を出た。


午前の講義は、頭にまったく入らず、ただ時間が過ぎるのを感じるだけだった。


お昼を食べようと歩いていると、廊下で心と出会った。


「おはよう翔太......」

元気がなさそうだった。


「おはよう、心」

「お前にも信也からメッセージが来たのか......?」


「うん......」

「孝也がいなかったって......」

心は震えていた。


「きっと出かけてたんだよ」

「鍵をかけ忘れたまま......」

俺は、小声で言った。──できるだけ心を安心させるように。


心は、手を握りしめながら震えた声で言った。

「そのメッセージが来てから不安で仕方なくて、眠れなかった......」


「俺も同じだよ」


ふと、俺は心の手元に目をやった。


そこには、普段は絶対に持っていないものが握られていた。


「そのお守りどうしたの?」

俺は、不思議に思って聞いた。


「さっき信也に会ったときにくれたんだ」

「これで少しでも安心できるようにって」

心は、ぎこちなく微笑みながら、小さくお守りを握り直した。


「そうなんだ」

「いいやつだな」


胸の奥のざらつきが、ほんの少しだけ消えた。


心が俺の顔を見た。

「今日どうする?」


「この状況で、ホラーやるのも遊ぶ気分にもならない」

「じゃあなし?」


俺は、少し考えて言った。

「いや、とりあえず純と三人で信也に話を聞こう」


「分かった......」

心は、ポケットの中に手を入れ、ぎゅっと握った。



授業終わりのチャイムが鳴った。


俺は、ほとんど無意識のままサークルの教室へ向かった。


教室に入ると、すでに純がいた。


「純、早いね」


「あぁ、信也に詳しく話聞きたいからな」


そう言った純の声は、妙に低く、

どこか感情を押し殺しているようだった。


ドアが開いた。


「二人とも早いね」

心が入ってきた。


手には、あのお守りが強く握られていた。


「心、そのお守りどうしたんだ?」

純は、少し鋭い目つきをした。


「朝、信也にもらったんだ」


「......そうか」

純は少し考えるように言った。


俺は、お守りを見ていて、あることに気づいた。

「あれ、お守りに少し黒いシミ、ついてない?」


「あ、ほんとだ!」

「落としたときに汚しちゃったのかな」

心は、残念そうな顔で言った。


その時、またドアが開いた。


「ごめん、遅くなった!」


信也が申し訳なさそうに入ってきた。


「信也、孝也のことで聞きたいんだけど......」

俺は思わず口を開いた。


「うん、俺もそのことを話そうと思ってたところだ」

信也が、感情の読めない顔をしていた。


「昨日、孝也の家に行ってチャイムを鳴らしたんだ」

「でも、出てこなくてさ」

「……ドアノブを回したら、鍵、かかってなかった」


信也は、感情の読めない顔のまま話し続けた。


俺は、信也の話を聞きながら、不安だけが膨らんでいった。


「......ということなんだ」


信也の話が終わった。


だが、結局――

何も分からないままだった。


信也は時計を見て「あっ」という顔をした。


「ごめん! 俺、用事があるから先に帰る!」


そう言い、そそくさと教室を出て行った。


「孝也のこと心配だね......」


「うん、どこ行ったんだろ......」


俺たちは、余計に不安になってしまった。


教室の空気が、妙に重く感じる。


ふと見ると、心は無意識にお守りを強く握りしめていた。


黒いシミが、さっきより広がっているように見えた。


「......俺たちも帰るか」


「そうだね......」


俺と心は、無言のまま帰る準備をした。


「......」

純は、ずっと無言だった。


「純、俺たち先に帰るね」


「......あぁ」


純は、元気をなくしてしまっているのか、小さい声で返事した。


教室を出ようとした時、


俺は、思わず一瞬、純を見た。


純は――


俺たちを、瞬きもせず見つめていた。


その目は、

さっきまでの純のものとは、どこか違って見えた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


最初に比べて日常が変わってきたのが分かりますね......



次回は、もっと怖くなるかもです。


よければ続きを読んでください!

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