第二話 変わり始めた日常
本作は、日常の違和感がじわじわ積み重なるタイプのホラーです。
俺は、純の鋭い目つきが、
何かを勘づいてる時の目だと、
気づいてしまった。
——ただし、
何に気づいているのかは、分からなかった。
そのことに気づかない信也は、
聞くのをやめない。
「ねぇ、なんでなの?」
「心霊サークルなのに」
しかし、翔太はなかなか答えようとしない。
「それは......」
「......」
それを見た心は、急いで信也を止めに入る。
「信也、もういいじゃん」
「しつこいぞ」
心はそう言いながら、
ちらりと純の方を見た。
すごく不安そうに言う。
「だって気になるじゃん」
「孝也だって気になってるだろ?」
突然俺にふられて、内心「ビクッ」とした。
「ま、まぁ」
そんな俺を見た信也は、
満面の笑みで「だろ!?」と言う。
その時......
「おい、いい加減にしろ」
純が、低い声でついに口を開いた。
あの鋭い目つきをしたまま......
「しつこいやつは嫌われるぞ、信也」
「ちぇ、わかったよ」
信也は、どこか不満そうに言って、聞くのをやめた。
「翔太、今のは気にしないで早く何するか決めよう」
純は優しい口調で言った。
その目は、さっきの鋭い目つきではなく、
いつもの目つきに戻っていた。
「あぁ、そうだな」
「じゃ、今日は人生ゲームをやろう!」
翔太は、元気よく言った。
(はぁ......結局分かんないままか......)
俺は、溜息をつきながら渋々参加する。
俺は、人生ゲームをしながらもみんなの顔を一人ひとり観察する。
信也は、さっきのことがなかったかのように楽しそうに遊んでいる。
さすがの明るさだなと思った。
翔太は、時々少し申し訳なさそうな顔をしながら遊んでいる。
ほんと、責任感強い部長だなと思った。
心は、ずっと不安そうな顔をしている。
しかし、それはさっきのことに対する不安ではなく、
人生ゲームが順調じゃないことに対する不安であろう。
「わぁ、ここで事故で一万円払うのかよ」
「ここからどうすればいいんだよ......」
不安になりすぎだろと思うが、
ゲームを真剣にやってるのが伝わる。
純は...
俺は、少し緊張しながら純の顔を見た。
見た瞬間......
俺は、鳥肌がたった......
純が、
俺の顔を「ジィィーーーー」と見ていたからだ。
(なんで、俺の顔を見てるんだ......)
(こいつ......まさか俺の何かを勘づいてるのか......?)
鳥肌が、なかなか治まらない。
それでも、俺は純から目を逸らせなかった。
「おい、何見てんだ?」
突然声をかけられ、体全体が震えた。
声の主は、信也だった。
「次、孝也の番だぞ」
「あ、あぁ......」
俺は、動揺しながらもルーレットを回した。
「よし、おばあちゃんに道を教えて五千円ゲットだ!」
みんなに悟られないように元気な口調で言った。
「うわぁ」
「なんだよ、いいな」
「やるじゃん、孝也」
みんなが、話す中、
俺は、無意識に純の方をちらっと見た。
純は、まだ俺を見ていた......
だが、
その目はとても優しい目だった。
もしかしたら、さっきのことを気にしてる俺を心配してくれていたのかもしれない。
――そう思うことにした。
気づけば、外は暗くなり始めていた。
なんや、かんや楽しめたのかもしれない。
翔太が口を開いた。
「今日はここまでにしよう」
「みんな、お疲れ!」
「今日は、孝也もいていつも以上に楽しかった!」
心が、背筋を伸ばしながら言った。
「孝也、明日も来いよ」
「俺たちといるの楽しかったろ?」
信也が自信満々に聞いてきた。
「分かったよ」
「たまにな」
「おい!なんでやねん!」
俺の自然な答えに、
信也がツッコミ、笑いに包まれた。
五人全員が笑った。
「でも、たまになんてダメだぞ」
「これからはちゃんと来い」
「お前も、このサークルに所属してる一人なんだからな」
翔太が冷静に言った。
「はいはい」
俺は適当に答えた。
「孝也、この時間に帰るの久しぶりだろ?」
「道けっこう暗い場所あるから気をつけろよ」
純が、先生みたいな言い方で言った。
「おう、わかった」
「じゃあ、お先に」
俺は、最初に教室をでた。
夜道は久しぶりだった。
暗かったが、家までは二十分ほどだ。
久しぶりの夜道だったが、危険を感じるほどではなかった。
「ガチャ」
家に着き、玄関を開けた。
一人暮らしなので、家事は正直面倒だ。
でも、テレビ一人占めできるし、趣味に没頭できるのは最高だ。
インスタントラーメンを食べ、風呂に入った。
(結局、心霊系をやらない理由は分からないままだった)
(純が、俺の顔を見てた理由も聞くの忘れたし......)
「ま、いっか」
そうつぶやき、風呂を出て部屋に戻った。
「さぁ、今日も怖い動画見て過ごすか!」
テンションを上げて、パソコンを開き、
怖い動画を検索する。
見始めてどのくらいたっただろうか......
瞼がどんどん重くなってくる。
「くそ、思っていたよりも疲れたのかな」
「あと、一本だけ......」
視界が暗闇になる。
途中、
「バン!!!!!」
という音がした気がするが、
きっと夢だろう。
「うー、うーん......」
俺は、太陽の眩しさで目を覚ます。
カーテンを閉め忘れていたようだ。
目の前にあるパソコンを見て気づく。
「そっか......俺、動画見ながら寝落ちしたんだ」
パソコンを充電し、顔を洗いに、洗面所に向かった。
鏡を見ると、ひどい寝ぐせだった。
「まぁ、いいや」
「先に、朝食食べよう」
無意識にテレビをつけた。
この時間は、いつもニュースを見るのが日課だ。
「二日前、不倫した元妻を殺害したとして逃走していた男が」
「昨夜、二十時に逮捕されました」
ニュースキャスターがいつもと変わらない口調で言った。
毎日同じようなニュースばかりだ。
「朝からごくろうさん」
俺は、自分でも理由のわからない上から目線で言った。
「続いてのニュースです」
「本日、二時頃」
「女子大生が、トラックにはねられて亡くなりました」
「はぁ、気分上がるニュースをやってほしいもんだ」
俺は、溜息をつきながら言った。
「事故が起きた場所は......」
「ピッ」
俺はテレビを消した。
朝食を食べ終わり、身支度をした。
「さて、そろそろ行くか」
外に出ると、太陽が雲に隠れていた。
いつもの道を歩いていると、
左奥の交差点が騒がしかった。
「何かあったのかな?」
気になって近づく。
目を向けると、人だかりができていた。
その先で、警察が何かをしていた。
無理やり人だかりの間に入り、先頭に出る。
そこには黄色い規制線が貼られており、
警察が通せんぼをしていた。
規制線の奥にいる警察官へ目を向けると、
メモを取ったり、現場に落ちている物を回収している。
(事故でもあったのかな......)
「あ、学校行かないと」
学校を思い出し、その場から離れようとした。
人だかりから出ようとした時、近くにお守りが落ちているのに気づいた。
よく見ると、「学業お守り」と書いてあった。
(事故にあった人、学生だったのかな......)
(可哀想に......)
その時......
「よぉ!」
信也が、肩を叩きながら言ってきた。
「何やってんだ?」
「いや、ちょっと気になって」
「早く行かないと講義に遅れるぞ」
「あ、あぁ......」
俺たちは、走りながら大学へ向かった。
俺と信也は、それぞれ別の講義を受けるから、
学校に着くと別れた。
今回は事故現場を見て、そのあと走ったから眠くならなかった。
だから授業を、珍しくちゃんと受けた。
昼になり、学食へと向かう。
いつもは一人で食べている。
結構広いから、席も多く、知り合いと会うことはめったにない。
でも、
この日は違った。
こちらに向かって、歩いてくる足音が聞こえた。
その方向を見ると、
翔太と心だった。
「よお、孝也」
「ここで会うなんて珍しいな」
翔太が嬉しそうに言った。
「孝也、一緒に食べようよ!」
心も嬉しそうに言った。
俺は驚いたが、
「いいよ、座ってくれ」
と快く返した。
「さっきの講義、珍しく寝ないで受けたよ」
「あはは、珍しくってなんだよ」
そんなくだらない話で盛り上がっていると、
翔太が急に話を変えた。
「なぁ、ニュース見た?」
翔太が、真剣な顔をして言った。
心も、真剣な顔になって俺が答えるのを待っている様子だ。
「いや、テレビはつけてたけど、内容忘れた」
「急にどうしたんだ?」
「実は、この大学の近くの交差点で事故が起きたんだ」
「事故......?」
その言葉を聞いて、朝の光景がよみがえった。
「あ、そういえば朝、登校中に見た」
「あれ、ニュースになってたのか?」
「あぁ」
翔太は少し悲しそうな顔をした。
「深夜二時に、トラックにはねられて亡くなったんだって......」
心が、ぶるぶると震えながら言った。
「深夜二時......」
俺は、昨日の夜の自分を思い返してみた。
いつものように怖い動画を見ていたら、眠くなってきたこと。
視界が暗闇に包まれた後に音がしたこと。
(ん......?)
(音......?)
その時、俺は理解した。
昨日、夢の中だと思っていた「バン」という音は、
現実だったということを......
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
三話目もなるべく早く投稿する予定です!
次回は、さらに日常が変わっていくので
よければ続きを読んでください!




