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銀河最強の厄災竜(フィアンセ)が、俺の部屋で「人間社会、チョロすぎw」とくつろいでいる件  作者: 秦江湖


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進路希望:建築家。……そして、卒業しない先輩

学校生活が再開して、数週間。  季節は冬。世間は受験シーズン真っ只中だ。


 俺、九条湊は、放課後の教室で「進路調査票」と睨めっこをしていた。


「……はぁ」


 ため息が出る。  項目には『第一志望』『就職』『その他』の欄。  宇宙戦争が終わって平和になったのはいいが、今度は「自分の将来」という、ある意味で皇帝よりも手強い敵と戦わなきゃいけない。


「悩んでいるな、湊」


 隣の席から、リュミエが顔を覗き込んできた。  彼女の調査票はすでに記入済みだ。覗いてみると――


 【 第一志望:九条湊の嫁(永久就職) 】  【 第二志望:九条家の警備隊長 】  【 第三志望:銀河女帝パートタイム


「……お前、先生に怒られるぞ」 「なぜだ? 本気だぞ。……湊の家は、私が守る。それが私のキャリアプランだ」


 リュミエは胸を張って言った。  まあ、こいつらしいと言えばこいつらしい。  でも、俺はそうはいかない。


「俺は……どうしようかな」


 俺は窓の外を見た。  校庭では、エクレア先生が竹刀を振り回して部活の指導をし、ヴォルグが校舎の壁を増強工事している。  あいつらは、自分の居場所を見つけた。  じゃあ、俺は?


 ふと、この間の「リフォーム」の時のことを思い出した。  ボロボロになった家を、父さんが泣きながら撫でていた姿。  そして、新しくなった家で、みんなが笑っていた光景。


「……建築、かな」


 俺はボソリと呟いた。


「建築?」 「ああ。……俺、もっと家のことを知りたい。父さんが命懸けで守ろうとした『家』ってものを、俺の手で作りたいんだ」


 どんな敵が来ても壊れない家。  家族が安心して帰ってこられる最強の家。  それを設計するのが、俺の役目かもしれない。


「……ふっ。悪くない」


 リュミエが優しく笑った。


「貴様が作った家に、私が住んでやる。……最高の『巣』を作ってみせろ、湊」 「ああ……!」


 俺はペンを走らせた。  【 第一志望:建築学科進学 】  迷いはなかった。


   ◇


 その日の帰り道。  俺とリュミエ、陽葵、そして権田の四人で歩いていると、校門の前に一台のリムジンが停まっていた。  窓が開き、中から優雅にワイングラス(中身はグレープジュース)を傾ける男が現れた。


「やあ、諸君。進路の悩みは解決したかい?」


 西園寺先輩だ。  彼は3年生。もうすぐ卒業だ。


「先輩。……俺、建築家を目指すことにしました」 「ほう! それは素晴らしい!」


 先輩はリムジンから降りてきて、俺の肩を抱いた。


「実は僕も、西園寺グループで『宇宙不動産部門』を立ち上げる予定でね。月面に別荘を建てる計画があるんだ。……将来、君に設計を頼むよ」 「ええっ!? 月面ですか!?」 「ああ。君なら、宇宙人の襲撃にも耐えられる家を作れるだろうからね」


 先輩はウィンクした。  さすがだ。スケールが違う。  ……でも、ということは。


「先輩とは、もうすぐお別れですね……」


 陽葵が寂しそうに言った。  西園寺先輩は卒業したら、経営者として忙しくなるだろう。こうして一緒に馬鹿をやることもなくなる。  しんみりとした空気が流れた。


「……ふむ? 何を言っているんだい?」


 先輩は不思議そうに首をかしげた。


「お別れ? 誰が?」 「え? だって先輩、もうすぐ卒業式じゃ……」 「ああ、それなら心配無用だ」


 先輩は懐から、一枚の書類を取り出した。  そこには、赤字でデカデカとハンコが押されていた。


 【 留 年 】


「「「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」


 俺たちは絶叫した。  天下の西園寺先輩が、留年!?


「い、いや、成績優秀な先輩がなんで!?」 「出席日数だよ、九条くん。……忘れたかい? 僕は君たちと一緒に宇宙へ行っていたんだぞ?」


 あっ。  そういえば、第3部の間、ずっと宇宙戦艦に乗っていた。  その間、学校はずっと欠席扱いだ。


「加えて、頻繁に海外(および宇宙)へ商談に行っていたからね。……出席日数が3日足りなかったのさ」


 先輩は「やれやれ」と肩をすくめたが、その顔は全く残念そうじゃなかった。  むしろ、楽しそうだ。


「それにね。……僕は思ったんだよ。まだ、君たちと遊ぶのも悪くないってね」


 先輩はニヤリと笑った。


「ということで、僕は来年も3年生だ! 九条くんたちが卒業するまで、この学校の『ぬし』として君臨することにしたよ!」 「そ、そんなのアリですか!?」 「アリさ。……なんなら、理事長に寄付金を積んで、校則を変えさせてもいい」


 出た。伝家の宝刀、金の力。  でも、俺たちはホッとしていた。  西園寺先輩がいなくなるのは、やっぱり寂しいからだ。


「ふふふ。なんだ、西園寺。貴様もまだ学生気分が抜けないのか」


 リュミエが嬉しそうに笑う。


「まあよい。貴様がいるなら、退屈せずに済みそうだ」 「お手柔らかに頼むよ、皇女殿下。……来年は修学旅行もあるらしいからね。僕のプライベートジェットを出そうか?」 「おお! それは楽しみだ!」


 盛り上がる二人。  俺と陽葵、権田は顔を見合わせた。


「……これ、来年も騒がしくなりそうだな」 「だねー。……まあ、湊と一緒ならいっか」 「俺は西園寺先輩の留年記念パーティの幹事やるわ! 会費は先輩の奢りで!」


 建築家という目標は見つかった。  でも、まだ俺たちは高校生だ。  最強の先輩(留年決定)と、最強の彼女(皇女)がいる限り、俺たちの青春はまだまだ終わりそうにない。


 続く日常。終わらない放課後。  これが、俺たちが勝ち取った「未来」の形だった。

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