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銀河最強の厄災竜(フィアンセ)が、俺の部屋で「人間社会、チョロすぎw」とくつろいでいる件  作者: 秦江湖


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男たちの挽歌(ギャグ)。金持ちと土木作業員、戦場に立つ

「急げ! 皇帝の玉座は最上層だ!」


 格納庫を突破した俺たち――俺、リュミエ、エクレア、ヴォルグ、そして西園寺先輩は、敵艦の長い廊下を疾走していた。  目指すは銀河皇帝の首ただ一つ。


「待ちたまえ、ネズミども」


 その行く手を阻むように、空間が歪んだ。  現れたのは、全身を黄金の鎧で固めた、キザな男だった。  背中からは4本の機械アームが伸び、それぞれに光る剣を持っている。


「……ゲ、ゲオルグ!」


 ヴォルグが驚きの声を上げ、足を止めた。


「知り合いか、ヴォルグ?」 「はい……。かつての同僚、近衛騎士団『黄金のゲオルグ』です。実力は私と互角、いや、装備の差で向こうが上か……」


 ゲオルグと呼ばれた男は、ヘルメット姿(安全第一)のヴォルグを見て、鼻で笑った。


「フン。落ちぶれたな、ヴォルグ。『銀の牙』と呼ばれた男が、今や薄汚い作業着姿とは。……下等生物の猿(人間)とつるんで、現場仕事か?」 「……訂正しろ、ゲオルグ」


 ヴォルグが静かに前に出た。  その手には、愛用の武器――工事現場から持参した**「高周波振動ツルハシ」**が握られている。


「彼らは猿ではない。私の誇り高き『友人』であり、最高の『施主』だ!」 「くだらん!」


 ゲオルグが4本の剣を構える。  殺気。このままでは全滅だ。


「……湊殿! ここは私が食い止めます!」


 ヴォルグが叫んだ。  いわゆる「ここは俺に任せて先に行け」だ。


「バカ言うな! お前一人で勝てる相手じゃ……」 「一人じゃないよ」


 スッ、とヴォルグの横に並ぶ男がいた。  全身包帯姿、片手にはワイングラス(中身はスポーツドリンク)。西園寺玲央だ。


「さ、西園寺殿!?」 「フッ。騎士道精神あふれる君を、一人で死なせるわけにはいかないな」


 西園寺先輩は俺たちを振り返り、キザにウインクした。


「行きなさい、九条くん。……レディのエスコートは僕たちの役目だ」 「先輩……ヴォルグ……!」


 俺は拳を握りしめ、頷いた。  二人の男の背中が、やけに大きく見えた。


「頼んだぞ! 死ぬなよ!」 「ああ、晩飯までには帰る!」


 俺たちは二人を残し、先へと駆け出した。


   ◇


 残された廊下。  ゲオルグは呆れたように肩をすくめた。


「愚かな。作業員崩れと、包帯男に何ができる? ……秒で片付けてやる」 「やってみろ! うおおおお! 労働者のソウルを見よ!!」


 ヴォルグがツルハシを振り上げて突っ込む。  ガギィィィンッ!!  ゲオルグの光剣とツルハシが激突し、火花が散る。


「ぬぅっ、重い! これが……肉体労働で鍛えた腰の回転か!?」 「基礎工事ナメんなぁぁぁ!!」


 ヴォルグが押し込む。  だが、相手は4刀流。残りの3本の剣が、ヴォルグの死角を襲う。


「死ね!」 「おっと、チップを忘れているよ?」


 ドォォォォンッ!!


 横合いから放たれた閃光が、ゲオルグの剣を弾き飛ばした。  西園寺だ。  彼が構えているのは、ダイヤ弾を発射する「課金ガトリング」だ。


「な、なんだ貴様は!?」 「名乗るほどのものではないが……しいて言うなら、通りすがりの資産家だ」


 西園寺は懐からブラックカードを取り出し、不敵に笑った。


「いい鎧だね、ゲオルグ君。……いくらだい? その修理費は」 「は?」 「僕の攻撃は高くつくよ? 一発ごとに君の鎧の資産価値が目減りしていく!」


 ズダダダダダダダッ!!  宝石の雨あられ。  物理的な攻撃力もさることながら、「高価な宝石を弾丸にして使い捨てる」という狂気が、ゲオルグの精神を削っていく。


「き、貴様ぁぁ! もったいない! そのルビーは市場価格で数百万は……ぐわぁぁぁ!」 「ハハハ! 金ならある! 弾(宝石)切れなど僕の辞書にはない!」


 西園寺の飽和攻撃と、ヴォルグの肉体労働アタック。  最強(最凶)のコンビネーションに、エリート騎士は防戦一方となる。


「くそっ、なんなのだ貴様らはぁぁぁぁ!!」 「言っただろう! 我々は……」


 ヴォルグと西園寺が声を揃えて叫んだ。


「「地球ここを守る、警備員ガードマンだッ!!」」


 ダブル・インパクト。  ツルハシの一撃と、純金の延べ棒(投擲)が、ゲオルグの黄金の鎧を粉砕した。


   ◇


 数分後。  廊下には、気絶してパンツ一丁になったゲオルグと、ハイタッチを交わす二人の男の姿があった。


「やりましたな、西園寺殿!」 「フッ、いい汗かいたよ。……さて、後で請求書を帝国に回しておかないとな」


 男たちは傷だらけになりながらも、清々しい顔で湊たちの後を追うのだった。

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