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銀河最強の厄災竜(フィアンセ)が、俺の部屋で「人間社会、チョロすぎw」とくつろいでいる件  作者: 秦江湖


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帝国のスーパーコンピューター vs 地球のオタクのゴミ箱(配信中)

「――シールド出力、低下! もう持ちません!」


 リビング(艦橋)で、ヴォルグが悲鳴を上げた。  窓の外では、無数の帝国無人機ドローンが、ハエの大群のように我が家を取り囲んでいる。  父さんが「窓ガラスが! ペアガラスがあぁぁ!」と叫び、母さんが「あらあら、すごい花火ねぇ」とお茶を啜っている。


「くそっ、数が多すぎる! リュミエ、迎撃できるか!?」 「無理だ湊! あれは『対竜用自律兵器』だ。私のブレスの弾道が完全に読まれている!」


 リュミエが悔しげに歯噛みする。  帝国の演算能力は、銀河随一。  単純なパワー押しでは、AIの計算速度を上回れないのだ。


「終わりだ……。我々の負けだ……」


 エクレアも膝をついた、その時だった。


「――どいてな、素人ども」


 カチャカチャカチャッ……ッターン!!


 軽快なタイピング音と共に、一人の男が前に出た。  ダイニングテーブルに愛用のノートPCを展開し、不敵な笑みを浮かべる男――権田だ。  彼はあろうことか、ウェブカメラを起動し、マイクに向かって喋り始めた。


「あー、テステス。……よし、繋がったな。へいリスナーども、聞こえてるか? これより『【緊急】自宅から銀河帝国の母艦をハッキングして世界救ってみたwww』を配信するぜ!」


「ご、権田!? お前、こんな時に配信かよ!?」 「バカ野郎、こういう時だからこそだろ! スパチャの準備しとけよ!」


 権田のPC画面には、凄まじい勢いでコメントが流れている。



【視聴者のコメント】 : タイトル釣り乙 : は? マジで宇宙じゃん : 合成乙……って、後ろにいるのリュミエちゃん!? : 【悲報】権田、ガチで宇宙戦争に参加していた : 相手、銀河帝国ってマ?



「ヴォルグさんよぉ。帝国のAIってのは、さぞかし賢いんだろうな?」 「当然だ! 一秒間に数京回の演算を行う超知能だぞ! 地球のPCなど、そろばん以下の玩具だ!」 「なら話は早ぇ。……賢すぎるがゆえに、馬鹿なデータは理解できねぇはずだ」


 権田がメガネをクイッと押し上げた。  まるで、某宇宙戦艦の技師長のような貫禄だ。


「『こんなこともあろうかと』、俺が夜なべして作った特製ウイルス……名付けて**『GONDA・バスター』**を喰らえぇええ!!」


 権田がエンターキーを叩き割る勢いで押した。


【視聴者のコメント】 : いけええええええ! : GONDA・バスター(名前ダサい) : お前のPCの中身(ゴミ箱)をぶちまけろ!



   ◇



 ――帝国艦隊、旗艦ブリッジ。


『警告。警告。外部より大規模データ侵入』 「迎撃しろ。どうせ下等生物のウイルスなど、瞬時に解析して……」


 指揮官が鼻で笑いかけた時、艦内の全モニターが赤く染まった。


『解析不能! 解析不能! 論理的整合性、ゼロ!』 「な、なんだこれは!? 敵は何を送り込んできた!?」 『デー、タ……中身ハ……』


 AIの音声がバグり始める。  モニターに映し出されたのは――権田が長年溜め込んできた「ネットの闇」だった。


 【 おめでとうございます! あなたのPCは感染しました! 】  【 今すぐここをクリックして100万円GET! 】  【 激ヤセ! 飲むだけでマイナス10キロ!? 】  【 ※削除されたエクレア騎士団長の恥ずかしい画像.zip(解凍パスワードなし) 】


 無数のポップアップウィンドウ。  極彩色の点滅。  そして、大音量で流れる『にゃんこ動画』の音声。


「な、なんだこの無意味な情報の羅列はァァァァ!? 理解できん! 『クリックして当選』だと!? 帝国のセキュリティを突破してまで、なぜ金を配る!?」


『思考リソース枯渇……。画像の意図、不明……。エクレア団長ノ……恥ずかしい画像……解析優先度、最優先……』


「馬鹿者! そんな画像を解析するな! AIが……『煩悩の迷宮』に入って熱暴走を……!!」


 プスン。ボンッ。  あまりに非論理的な情報の洪水に、真面目すぎる帝国のAIたちは処理落ち(フリーズ)を起こした。  無敵を誇るドローンたちが、次々と機能を停止し、宇宙の藻屑となっていく。



   ◇



「……へっ。ざまぁみろ」


 権田はPCを閉じ、カメラに向かってVサインを決めた。


「文明レベルが違いすぎて、セキュリティソフトが『スパム広告』に対応してなかったみたいだな。……これぞ、『レガシー(時代遅れ)・アタック』だ」


【視聴者のコメント】 : wwwwwwww : 【速報】銀河帝国、スパムに負ける : エクレア団長の画像詳細キボンヌ : 権田ァァァァァァ!!(歓喜) : スパチャ投げたぞ! 世界を救った代金だ!


「やったな権田! お前こそ、地球を守った英雄だ!」 「道が開いたぞ! 今だ、突っ込めぇぇぇ!」


 湊の号令と共に、九条家はフリーズしたドローン網を突破し、旗艦の横腹へと突撃を開始する。    ただ一人、顔を真っ赤にしたエクレアを除いて。


「……ご、権田ぁ……? 貴様、後で覚悟しておきなさいよ……? 私の何の画像をばら撒いたのですか……?」


 背後からの殺気に気づかないフリをして、権田は「高評価よろ!」と配信を締めくくるのだった。

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