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夏の紙飛行機

作者: 昼月キオリ

夏になると紙飛行機を飛ばして遊ぶ。

そんな習慣がおばあちゃん家にはあった。

中学一年の夏。

夏休みになると僕は決まって母さんに連れられておばあちゃん家に遊びに行っていた。

母さんは僕を届けた後、仕事に向かった。

おばあちゃん家には時々来る事はあったけど、長期的に来るのは久しぶりだった。

今回は一週間泊まる事になっている。

おばあちゃん家は田舎で一人暮らしをしている。

周りには民家がいくつかあり、時々おばあちゃんの様子を見に来てくれたり、食材を分けてくれたりする優しい人たちだ。

電波も届かないような場所にある。

強制的なデジタルデトックス。

遊ぶものは何もなかった。

あるのは山と川だけだ。

だけど不思議と退屈だと感じたことはなかった。

おばあちゃん家に行った帰りは何故か頭の中がスッキリしていて清々しい気持ちになれたのだ。

おじいちゃんが亡くなってからというもの、僕はこの家に行く回数が増えた。

おばあちゃんと僕はよく紙飛行機を作って飛ばしあいっこした。

海堂天(かいどうてん)「おばあちゃんは紙飛行機が好きなの?」

おばあちゃん「ああ、好きさ、紙飛行機を飛ばしているとねおじいさんを思い出すんだ」

昔、おじいちゃんはパイロット、おばあちゃんはキャビンアテンダントだったそうだ。

天「僕はパイロット時代のおじいちゃんを知らないけど、カッコ良かった?」

おばあちゃん「ああ、誰にも負けないくらいカッコ良かったよ」

天「どうして紙飛行機を夏の間だけ飛ばすの?」

おばあちゃん「それはね、私がおじいさんに恋をしたのが夏だったからだよ」

天「え!!そうなの!?」

おばあちゃん「懐かしいねぇ」

遠い空を眺めるおばあちゃんは懐かしい気持ちに浸っているようだ。

天「ねーねー!せっかくだから教えてよ!二人がどうやって付き合い始めたのかさ!」

おばあちゃん「そうだねぇ、たまには昔の恋話に花を咲かせるのも悪くないかもしれないね」

天「聞かせてきかせて!」

おばあちゃん「それじゃあ紙飛行機を拾ったら部屋に入って話の続きをしようね」

天「うん!」

僕はその後、日が暮れるまでおばあちゃんの恋話を聞いた。

紙飛行機が二つ、風に揺られておばあちゃんの方を向く。

紙飛行機はおばあちゃんを見守るように机の上で夕陽に照らされていた。

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