運がいいトム
ー王都の門にてー
「衛兵さん、戻りました」
ザワ……
「おっ! トム忘れ物か……ってなんだソレ!?」
「薬草の束か!? まさか取ってきたっていうんじゃ!?」
「100枚はあるぜ?」
「まだ1時間も経ってないぞ!?」
少し騒ぎになってしまいましたね。
言い訳しましょう。
「運よく薬草の群生地を見つけることができたんですよ」
「なるほどな……初仕事からラッキーを引き当てるとは大した野郎だぜ!」
本当は、魔力感知を使っただけですけど……ね。
ー冒険者ギルドにてー
ギイィィ…………バタンッ
コツッ……コツッ……コツッ……コツッ……
ザワ……
「おい……トムだぜ……」
「見ろよ……手に持ってるアレ……」
「薬草の束……まさかっ!」
「薬草が集まる群生地……アタリを引いた、ってわけか?」
「トム様! お帰りなさいませ! ってそれ……」
「はい。薬草を100枚ほど集めてきました。
ちょうど薬草の群生地があったので」
ザワザワ……
「初仕事から引き当てるなんて……運もいいのかよ……」
「俺、今まで群生地なんて見た事ないぜ?」
「普通はそうさ」
「トムの運がおかしいだけだろう」
「トム様は運がいいんですね! すごいです!
……そのうえイケメンですし(ボソッ)」
聞こえてますよ? 僕はあいにく難聴系主人公ではないので。
「いえいえ、それほどでも」
……ですが好意を向けられるのはうれしいです。
内心照れますね。
「薬草100枚……確認しました! 1000ゴールドになります!」
「ありがとうございます」
さて、次のクエストを消化していきましょう。
薬草を無事に売却できたトム。
薬草の見つけ方をごまかすことができたようだ。
ただ、初仕事からものすごい幸運を引き当てた(ということになっている)ため、
余計にウワサが広がることになった。
次のクエストも何か狙いがあるのだろうか?




