トムの強さ
みなさんこんにちは、トムです。
冒険者ギルドに着いてすぐに、ごろつきに絡まれました。
ですがこれは ー計画通りー です。
正確に言うならば、計画のうちの1つというべきでしょうか……
ですので、ご安心ください。
それに、僕……
ー結構強いのでー
「おらぁ! くらえ!」 ブゥンッ!!
ふむ……右ストレートの拳と見せかけて左が本命ですか……
さすがは腐っても冒険者……
戦い方を心得ていますね。
ですが……
ー僕には届かないー
ドンッ!!
「ぐ……ぐあ……」
まずは1人。
みぞおちを強めに叩いたので
しばらくは戦えないでしょう。
ザワッ……ザワ……ザワ……
「えっ? 何? 今の?」
「嘘だろう……2級冒険者を一撃……だと……」
「新入りの攻撃が見えなかった……見えたヤツはいたか?」
「い、いや……」
「何をしたのかさっぱり……」
「……恐ろしく早い手刀……俺でなきゃ見逃しちゃうね……」
「お前、見えたのか!」
「いや、嘘だよ……真に受けんなって」
さて……あと2人……
「ヒ、ヒイッ! アニキ! こ、こここれっ! ヤバくないですか!?」
「クッ! 回り込んで袋叩きだ! お前は後ろに回り込め!」
ほう……今の状況では正しい判断です。
褒めてあげましょう……
ですが僕は黙って見ているつもりはありません。
シュンッ!
「う、うわあぁぁ! こっちに来やがったぁ! 助けブボァ!!」
ドサッ……
2人目。
アゴを叩き、脳を揺らしました。
意識を失ったのであとは1人。
ザワザワ……
「殺ったか!」
「いや……気を失っているだけだろう……そうだよな?」
「わからん……」
「なんてスピードだ……あの距離を一瞬で……」
「残すは1人だぞ……」
ギリリッ……
「テメェ……ナニモンだよ……」
ズリッ……ズリッ……
残すは1人。
せっかくですし、あからさまな時間稼ぎにも付き合ってあげましょうか。
「僕ですか? トムですよ?」
「ふざけてんのか!? そういう意味じゃねぇよ!」
怒られてしまいましたね。
「まぁいい……」
ススッ……
ふむ……
「ちんたらしてくれてありがとよォ! うらぁ!」
ガバッ!
「もらったぁ!」
フフフッ、倒れていた1人目が後ろから奇襲……
それに気を取られた僕を挟み撃ちにする……ですか……
ー計画通りー
ドドッ!!
「プゲッ!」
1人目を再度倒しました。
今度は、みぞおちに加えて男の急所も攻撃しました。
顔が分かりやすく青くなって面白いですね。
「あ……あぁっ……痛い……痛いよぉ……」
悶えて転がる1人目は放置して、
最後のごろつきをサクッと倒しましょうか。
「なっ! ま、待て! 話し合お……ウッ……」
ドサ……
終わりました。
パーフェクトゲーム、完全勝利です。
シンッ……
「……お」
「「「「おおおおおお!!」」」」
「す、すげぇ! すげぇよ! 新入り!」
「勝っちまった! あの3人相手に勝っちまった!」
「スカッとしたぞ! ありがとう! 新入り!」
「トム様! かっこよかったです!」
「……う、うぅ、リリーちゃん……」
「元気出せよ……星の数ほど女はいるさ……」
「うわあぁぁぁん!!」
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今回の騒動。
かえってトムの強さを知らしめるきっかけとなった。
だが皆は知らない。
全て、トムを操るダン・ジョン3世が予測し、
それに合わせた計画を裏で練っていた、ということを。
そう、全ては……
ー計画通りー
サクッとごろつきを片付けたトム。
やはりごろつきはトムを輝かせるための踏み台になってしまった。
冒険者にもトムの強さ、かっこよさに憧れる者が続出したようだ。
トムは王都中のウワサになってしまうのではないだろうか?




