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男の嫉妬は見苦しい

「おい! テメェ! 聞こえてんのか!」


「アニキ! コイツきっとビビっちまって声も出ないんですよ!」


「いい気味だ!」



「「「ハハハハハ!」」」



ごろつきがトムに突っかかってきた。



「あいつもかわいそうだな……あんなヤツらに目を付けられるなんて……」


「あんなごろつきでも2級冒険者なんだよな……はたしてどうなるか……」



そんな光景を黙って見ていられなかったのだろう。


トムをすっかり気に入ってしまったリリーは、



「あ、あなた達! トムさんになんてこと言うんですか!」



ごろつきに注意をうながした。


しかしごろつきは気にも留めない。



「あぁん? 知らねぇよ。ちょいと新入りに声かけてるだけだ。


なぁ! お前ら! そうだろ?」


「そうですよアニキ! 俺たちはただ新入りに声をかけてるだけですよ!」


「そうだよ!」



「私にはとてもそんな雰囲気には見えません! ひどいと思わないんですか!」



ごろつきはうっとおしく思ったのだろう。


ごろつきがリリーに手を伸ばして、


「はぁ、うるせぇ女だな……どけよ」



ドンッ!


「キャッ!」



リリーを突き飛ばした。



リリーの体が硬い床へと近づいていく……




もちろんそれを黙って見ているトムではない。



サッ!



「あ……あれっ? 痛くな……ってトムさん!?」



「リリーさん、お怪我はありませんか?」



「「「なっ!」」」



トムの素早い身のこなしでリリーを助けたのだ。


なお、お姫様抱っこの体勢である。



トクンッ……



リリーの胸は高鳴った。




ザワ……ザワ……



「おい……今の動き……」


「……あぁ……見えなかった……」


「なんて野郎だ……行動までイケメンかよ……」


「とんでもないヤツが来たな……」



周りで見ていた冒険者たちは目を見開いて驚いた。



「あっ……あのっ……トムさんありがとうございます……」


「いえ、怪我がなかったようでなによりです」ニコッ


「ひゃうっ! イケメンすぎるっ!」



目の前で面白くないものを見せつけられたごろつき。


イラッ……


「おい! テメェら! なにイチャイチャしてんだ! 不愉快なんだよ!」


ドシッ!! ドシッ!!


足を踏み鳴らして、怒りを表現し始めた。




ヒソヒソ……


「おっ? もしかして嫉妬か? 嫉妬なのか?」


「アイツ、ついさっきまで出会いがないこと嘆いてたもんな」


「あぁ、だから朝なのに飲んだくれてたのか」


「そういうこった」




そして、怒りが限界に達したごろつきはついに、



「もう我慢ならねぇ! お前ら! やっちまえ!」



拳を握りしめて、襲い掛かってきた。




「や、やめなさ「リリーさんは下がって」はいっ♡」




イライラッ……


「オラァ!!!! テメェ!!!! 覚悟しろやぁ!!!!」


「アニキ!!!! コテンパンにヤっちゃいましょう!!!!」


「そのツラ殴らせろ!!!!」



ごろつきの、嫉妬の炎に油が注がれた。



だが腐っても冒険者。



ジリッ……ジリッ……



トムを警戒しつつ慎重に距離を詰めてくる。



ザワッ……


「おい、始まるぞ」


「3対1か……数では新入りが不利だが……」


「俺は新入りが勝つのに1000ゴールド賭けるぜ!」



「……どっちに掛けるよ?」


「俺は新入りだな」


「俺も新入り」



「アイツらに賭けるヤツはいないのか?」




「「「「…………」」」」




哀れ、ごろつき。

冒険者ギルド受付嬢リリーに惚れられたトム。


ごろつきが燃やす嫉妬の炎に、盛大にぶちまけられた油。


戦いは避けられない。


はたして勝つのはどちらだろうか?

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