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(β版)  作者: 自彊 やまず
第六章 過去編
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閑話➂ 手記

5月1日 きょうからにっきおかきはじめる。


5月2日 あきた


5月9日 いいことが、あたらかく。


5月25日 ■■■■■■■■■■■■が■■■■。


9月10日 ■■■と■■しょに■■■■■


2月21日 ■■■■■■


3月8日 おかさんおとおさんとおねえちゃん■■■■■■■■■■■■■かた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


1490年7月2日

 父から農作業の合間に、たまにでいいから日記を書けと言われた。この日記を引っ張り出して来たのはいつぶりだろうか。


7月10日

 来週、僕と隣村のソフィアさんとの縁談がある。緊張してきた。


7月19日

 ソフィアさんは教会に連れていかれたらしい。魔女狩りというのは本当にあるのだろうか。恐ろしい。


7月21日

 母から急に一家で逃げると言われた。よくわからないが、僕たちは特別な血筋を持っているらしい。魔女?悪魔?天使?それとも神?


7月22日

 僕たちが家を出てから、故郷は跡形もなく燃やされた。もう少し遅ければ家族皆死んでいただろう。何が何だか分からない。姉は怯えている。


7月25日

 父から、私たちは吸血族という神聖な一族であると言われた。魔女狩り師というのは異端審問だけでなく、吸血族やその他異種族(未確認だが)を捕らえ、実験や兵器にしようと考えているらしい。我々に自由はないのか。


1491年2月10日

 目の前で父、母、姉が殺された。皆が磔にされ、僕は聴衆の最前列で他人の振りをしていた。買い物から帰ったらこうなっていた。そのまま、生きたまま焼かれた。

 それから半年が経った。日記は気持ちの整理のために書こうと思う。今でも家族の悲鳴が耳にこびりついて離れない。自分が吸血族であることを憎む。それ以上に魔女狩り師を憎む。彼等は単純に私達を狩るのに快楽を見出している。


2月28日

 ついに私の番がや■■■■。足の爪を全部剥がされ、全て再生し■■、また爪を剥がされた。腕を千切って逃げて来た。■で■れているが、左手で書いた。すぐに家から逃げないと。


3月4日

 憎い。


3月5日

 日記を書いて気を紛らわせているが、もう限界が来ている。捕まっている間にされたことは何も爪を剥がれるだけじゃない。それよりも遥かに苦■■


3月6日

 今まで楽しかった思い出がより今の自分を惨めにさせる。今まで日記に書いて来た楽しい思い出を全て塗りつぶした。


3月7日

 気づかなかったが、新しい目玉になってから視力が戻っていることに気づいた。再生すると少し補強されるらしい。


4月8日

 また追われている。怖い。誰か助けて。


1632年12月25日

 リュッツェンの戦いの後自宅に帰り、私物を整理している間に、久々に日記を見つけた。私は吸血族でも特異な何千年を生きる存在であるのに、日記の長さがこれだけであるというのは滑稽である。

この間に私は囚われ、兵器として使われ、そのうちに人権を得て、将校として成功した。何千年前の記憶などとうに忘れた。これから中心部へ行き、私の存在を知る上層部と謁見する予定だ。これからは私の人生を覚えておくため、私の転機となった出来事について書こうと思う。


12月26日

 私は遂に陛下…

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ではないかと思う。


8月9日

 やはり病だった。初めて愛した女性が老い、私の手を握れなくなることがこんなにも苦痛であるとは思わなかった。これまで会って来た友人や家族の顔は忘れてしまったが、彼女の顔はいつまでも忘れないだろうと思う。追記:似顔絵も依頼しておいた。


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1940年2月10日

 寂しくなった私は、一人の弟を作ることにした。酔っぱらいとの喧嘩で死にかけていた不憫なこの青年をブルートと名付け、我が眷属とした。私もゼリクと名乗るようにした。


1942年3月9日

 隠居生活をし、王家に散々恩を着せてきた私が軍曹として徴兵されることとなった。低俗な種族の思い上がりも甚だしい。一応ここに記す。ブルートは一般兵として徴兵された。


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1950年10月2日

 人類は進化しすぎた。彼等は人の手に負えない兵器を作り出している。それでいて使用するものは少しも何も感じていないのだ。異常だ。人類が怖い。こんなにも狂気に満ちた獣だとは思っていなかった。


10月5日

 私は密かに同志を集めようと思う。これは私たちのためだ。私達が常に虐げられていた世界を変え、吸血族が頂点となる世界を作るのだ。今日を結成日とする。


12月17日

 ブルートと再会した。彼の心は傷付き、痩せていた。同志を集めて世界を変える。


3月23日

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2003年2月22日

 秘密警察に見つかり、20年間毎日数々の拷問を受けた。久しぶりにこのような苦痛を味わった。人類が憎いという感情を思い出した。だが、私の脳は限界まで来ているらしい。拷問の内容を覚えていない。ほとんどの幹部は死んだが、世界中に同志はいる。計画実行まですぐだ。追記:身体能力の向上が著しい。どれだけ拷問されたのだろうか。


3月30日

 自分が自分でなくなっていく。怖い。ただひたすらに怖い。


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2024年1月1日

 戦争は始まった。人類を虐げる準備はできた。


2月27日

 人類同士で争い始めた。決着する頃には、地球の緑は無くなっているかもしれない。我が軍の兵力は戦争終結後に動き出すだろう。


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2123年3月10日

 王国設立。これから、確実に、我が支配を絶対的なものにする。手始めに、ブルートに弟を創った。カシムと名付けられた少年には私の血が流れている。


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とする。


2257年12月2日

 もう私の記憶はこの日記の中にあるものしかない。老いてきたのだろうか。しかし、私がするべきことはわかっている。このヴァンパイア支配をつづけることだ。命をかけている。これがくずれることがあってはならないと感じる。そのためならどんな手段も使う。


豆知識:吸血族が生物工学や人体の移植の研究を進めているのは、食用の人工血液を作って食糧難から逃れるため。因みに栄養満点の人工血液が既に完成している。

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