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初めて レティシアの場合
水の滴る音がしている。さっき浴びた湯の残りが、どこかで音を立てている。
ケネスがそっと私を抱き寄せて、唇と唇が重なった。体の奥でじわっと何かが溶けるような、疼くような、私の体が切ないまでにケネスを求めているのがわかる。
「いいね?」
ケネスにささやかれて私はうなずく。私たちは結婚したのだ。
「今まで我慢できないぐらいだった」
ケネスが熱のこもった甘いささやきを耳元でする。私は身体中が熱を帯びて、震えるほどだった。
私は迫り来る快感の波の中で、ケネスと目を見つめ合い、あまりの気持ち良さを耐えているのか、ケネスが切なそうに表情を歪めて私を熱く見つめる様を見て、涙が溢れた。
私たちはしばらく抱き合って動かなかった。
私の二番目の愛は成就した。私は結婚初夜に大切にされてケネスに愛された。
心の奥からとても満たされて、私はケネスと抱き合っていた。シャン・リュセ城の窓の外には、満点の夜空に三日月とオリオン座が見えた。
私の涙は、少し離れたランヒフルージュ城のかすみ草まで届いたのだろうか。マクシムスの願いを私は叶えたと思う。




