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陛下の結婚戦略

「午後過ぎから今日は天候が急変して大雪が降りますわ」


 私は騎士たちにすぐに戻るように告げた。リシェール伯は執事と侍女と料理番を手分けして探してくれて、捕らえられていた三人を解放してくれた。


 そして、私の姉と母が帰宅するのを待つと言い張って彼が聞かないので、私はお礼を告げて、実家の応接室に案内した。姉と母にはお昼には帰宅するように告げていたので、まもなく帰宅するはずだ。


 暖炉の火が焚かれて、部屋の中はとても暖かかった。陛下の褒賞おかげで今年は薪がたっぷりある。


「陛下の手紙を確認してくれないか」

 

 彼がまっすぐな瞳を私に向けつつ、少しぎこちない様子で手紙をもう一度差し出してくるので、私は騎士たちがほとんど無事に帰宅したのを見届けると、手紙を読み始めた。

 

 手紙には王家の紋章が入っていて、王冠の蜜蝋で封がしてあった。




『親愛なるロザーラ嬢。


 君の結婚相手を探しておいたよ。私の結婚戦略はなかなか目が高いと周辺では評判なんだが、果たして君は気に入るかな?


 彼は辺境のコンラート地方を治めるリシェール伯爵だ。私の甥だ。つまり、君を私の縁戚に迎えたい。君は非常に優秀だからね。きっと私の甥と君は国益に貢献してくれるだろう。持参金は私が用意する。これは褒賞金の一部だ。この国の行方を左右する未来の妃選びに君は非常に役にたったのだから、当然だ』





 私の頭から残りの文字がこぼれ落ちて行き、陛下の手紙の後半が理解できない。


 姉と母の帰ってきた弾むような声が遠くに聞こえる中で、私は目の前の背の高くて立派な体格のリシェール伯の凛々しい顔を穴が開くほど見つめていた。


 ――この人のところに私は嫁に行くの?辺境伯のところに?コンラート地方まで大陸をはるばる横断して!?



 その日、大雪で帰れなくなったリシェール伯爵と側近の騎士の4名が我が家に泊まった。大雪で私が死んだであろう時間を過ぎても私は暖かい暖炉の部屋で生きていた。


 ――死神さま。無事に死を回避できました。けれども、私は思ってもない方のところに嫁ぐようです!



 こうして私の本当の人生が始まったのだ。




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