王冠が示す第3の宝石のルート
朝目覚めると、すぐに栗色の髪をもつジュリアが寝室の外から声をかけてきているところだった。
「旦那様、奥様、陛下からの早馬でございます」
私はがばっと身を起こした。昨晩ラフェエルに愛されたので、私は幸せな気分で眠ったのだけれども、『陛下からの早馬』という言葉に一瞬で目が覚めた。
「あなた、『陛下からの早馬』でございますわ」
ラファエルを起こすと、ラファエルもその言葉にハッとしたらしく、すぐにベッドから起き上がって寝室のドアを開けた。
「ジュリア、いますぐにいく」
「お城の客間でお待ちでございます。第二王子のケネス様がお見えです」
「ケネスが?」
「左様でございます」
ジュリアはキビキビとした仕草ですぐに私の衣装を準備に取り掛かった。私はネグリジェからドレスに着替えて髪を整えなければならない。ラファエルは自分でサッと上着を着て身支度を整えると「先に行っている」とだけ短い言葉で告げると寝室を出て行った。
真っ赤な赤毛でそばかすだらけのベアトリスもすぐに寝室に入ってきて、ジュリアと一緒に私の身支度を素早く整えてくれた。
「二人ともありがとう」
私もすぐに寝室を出て城の客間に向かった。朝とても早い時間で、太陽は上がったばかり冬景色の城の庭は、ぼんやりとした日の光に照らされて、静かな楽園といった趣だった。
――第二王子のケネス自らが早馬を駆けさせるとは、何か良くないことが起きたに違いないわ。従者に任せられないような何か非常事態を知らせる便りかもしれない。
私は焦る気持ちで客間に急いだ。
――お母様に何かあったのかしら?それともマリアンヌお姉様に何かあったの?それとも、第一王子のウィリアムに何かあったのかしら!?もしくは、陛下自ら病を伝えるという選択肢をしたのかも?
私はグッと怖い思いが込み上げてくるのを感じながら、唇を噛み締めて客間の中に駆けるようにして入った。
「第二王子ケネス様!」
ラファエルと固く出来合っていたケネス王子が私の顔を見るなり、少し微笑んだ。ケネス王子の瞳には涙が光っていて、ラファエルの目線も下に下がっている。暖炉にくべられた薪の燃える音しか聞こえないほど、客間は静まり返っていた。
――やはり、不幸のお知らせね……
「やあ、ロザーラ、久しぶりだが元気そうで何よりだ」
ケネス王子は快活そうに振る舞った。でも、私は騙されなかった。
「正直に本当のことを教えていただけますでしょうか」
私がそっとケネス王子に問いかけると、ラファエルが答えてくれた。
「私の母上が亡くなったそうだ。襲われたそうだ。父を襲った矢が母上にあたってしまったようだ。父上は元気だ」
私はラファエルの言葉に絶句した。
「つ……つまり、ラファエルだけが狙われているのではなく、同時にお父様も狙われていて、お父様を狙った長弓の矢がお母様に当たり、お母様が亡くなってしまわれた。あなたを狙った長弓の矢はレティシアが素早く叩き落としました。だからあなたはこうして今生きているということになりますね。」
私はそこまでいうと、ジュリアとベアトリスに合図をしてレティシアをを連れてきてもらった。ラファエルにそっと寄り添う。ラファエルは涙をこらえて唇をかみしめていた。瞳には涙が溢れている。私は彼を抱きしめた。
「朝早くから、いかがされたの?」
レティシアが慌てた様子で客室に入ってきた。
「第二王子のケネス様よ、レティシア」
「えっ!あなたはとてもラファエルに似ているわ」
レティシアは小さな声で叫ぶと、胸に手を当てて立ち止まった。確かに、第二王子とラファエルは似ている。血のつながったいとこ同士だ。
「ラファエルとは従兄弟だからね。父の妹がラファエルのお母様なんだよ。父の妹君、つまりラファエルのお母様が亡くなったんだ。ラファエルのお父様が襲われた矢に射られてしまった。長弓で不意打ちで襲われたようだ。とても残念だ。僕にとっても大切な叔母だった」
「まあ、なんと!ラファエル、おばさまが亡くなったなんて!」
レティシアは静かに佇むラファエルに駆け寄った。
「最近はあまりお会いできていなかったの。とても残念だわ」
レティシアの声は震えていた。
「あなたを狙った長弓、あの敵は同時にあなたのお父様も狙ったのね。この国のブロワとジークベインリードハルトの同時に敵は襲ってきたのね」
「そういうことだわ。あなたがラファエルを狙った矢を剣で振り払ってくれた。レティシア、本当にありがとう」
私は掠れる声でレティシアにお礼を言った。今更ながら恐怖が込み上げてきた。
「父上は、つまり陛下はラファエルも狙われるとおっしゃったんだ。父にとってはとても大事な妹だったんだ。大変な悲しみようだ。しかし、甥の君まで失ってはたまらないと、私を使いによこしたんだ」
第二王子ケネスは私たちに告げた。
「ちょっと待っていてくださるかしら?」
私はそう皆に告げると、急いで寝室に戻った。
――ケネス王子に全てを話そう。敵が水路で進むとあらかじめ知っていて、当時の皇后の側近が敵の一味だとしたら、私たちの進むルートが全て敵に知られているわ。
王冠を手にすると、地図も持って私は急いで皆が待つ客間まで戻ってきた。ベアトリスとジュリアには部屋の外に出てもらっている。この客間には、第二王子ケネス、ラファエル、レティシアと私しかいない。
「こちらをご覧いただけますか」
私は第二王子ケネスに今までのことをお話しした。私が陸路で死にかけて死神と契約して戻ったこと以外の、この大陸を横断する旅のことを打ち明けたのだ。
「つまり、敵には君たちがこれからどこの街を訪れるのか、全て知られているということだね。その王冠をもう少し見せてくれないか」
第二王子ケネスは非常に頭の良い良い方だった。武術は第一王子ウィリアムの方が得意だが、ケネス自身はとても賢明だと評判だった。兄のウィリアムと違って女好きという噂もない。
「この王冠の残りの穴は7つ。ラファエルのおばあさまが告げた街のルートはこれだな」
私が地図にあらためて印をつけてみせた地図の川沿いの城を眺めた。不意に、何気ない様子で、ケネスが王冠に埋められた昨晩見つけた宝石をくるりと回した。ケネス王子がエーリヒ城の迷宮から見つかった第二の宝石を回すと、暗号文字が王冠に浮き出るように現れた。
「なんとこれは……!」
――これはなんだろう?
皆が息を飲んだ。こんな仕掛けがあるとは誰も気づいていなかったのだ?ケネス王子が何気なく回したダイヤが暗号文字を浮かび上がらせる仕掛けは、今初めて気づいたことだった。
「『オリオン座が救う者を決める』、『冬のオリオン座のベテルギウスとベルタの城で見つかった宝石を重ねて第二の宝石が見つかった』」
ケネス王子は豊かな褐色の髪の隙間からのぞく緑色の瞳を輝かせて、ぶつぶつとつぶやいた。目を閉じて何かを考え込む仕草をして、ハッとした様子で小さな声で私たちにささやいた。まるで大発見をした子供のように興奮している。聞き取れないほどの小さな声で彼がささやいた言葉は……
「これは、おそらく3つ目の城を示す座標だ」
「座標?あの船の旅で使う座標か……?航海の旅の道標となる座標?」
「そうだ、冬の南の空に燦然と輝くオリオン座のベテルギウスが示す第二の宝石。次の第三の宝石のありかは『大陸を治める力を与える石』が示しているんだよ。間違いないと思う」
興奮したようにラファエルと第二王子ケネスはささやきあっている。私はふと隣に立つレティシアを見た。彼女は頬を赤らめて胸に手を当てて、第二王子ケネスが子供のように興奮して話す様を眺めている。
――えっ?レティシア……?まさかケネス王子に?
私はとっさにレティシアの腕を取り、さりげない様子でケネス王子の隣に彼女を立たせた。そのまま私はラファエルの隣に立つ。レティシアはうっとりとケネス王子のお顔に見惚れたままで、ささやくような声で彼に言った。
「つまり、8年前に皇后様が訪れた城を地図上で見たものは、罠にハマるということね?王冠を手にして、第二の宝石を見つけた者だけが、第三の城を知るということですね?」
ケネス王子はレティシアの言葉にハッとした様子で隣に立つ彼女を見つめた。プラチナブロンドの彼女は天使のように美しい様子で、彼を惚れ惚れと見つめている。
「そ……そうなりますね……」
ケネス王子は隣に立つレティシアの瞳をのぞきこむような状態で頬を赤らめた。
――ケネス王子もレティシアの魅力に気づいてくれた……レティシア!ついにあなたの恋が動き出すわよ
私は自分のことのように嬉しかった。レティシアとケネス王子はおそらく恋に落ちるのではないか。
「城には順番があるのですね。ケネス王子のおかげで私たちも罠にはまらなくてすみましたわ」
私の言葉にレティシアとケネス王子は手を取り合わんばかりの勢いでうなずいた。二人とも瞳を輝かせている。
「君がいてくれて本当によかった。3つ目の城のトラップにひっからなくてすんだよ。ダイヤが次の城の座標を示すなら、王冠を手にした者にしか宝石の順番がわからないということだから」
ラファエルは悲しみに暮れる様子から、謎解きで心を悲しみから引き離すことに少し成功した様子で、ほっとしたように私の肩を抱き、第二王子ケネスに感謝の言葉を伝えた。
「この旅に私も同行するよ。君たちの旅の行く末を見守りたい。私も王冠の宝石を探す旅に参加したいから」
「ありがとう!本当に君がいてくれると助かる。だが、命の保障はない危険な旅だ。敵は私たちを執拗に狙うだろう」
「父からは、君を守るようにと言われている。私もその気持ちに変わりはない」
ラファエルと第二王子ケネスは硬い握手をした。
「私も参加するわよ。どこまでもついて行って、この旅の終着を無事に見届けるわよ。よろしく、ケネス王子。私はラファエルの幼馴染のレティシアよ」
花が開花するような笑みを無邪気に浮かべてケネス王子にささやくレティシアは、本当に美しかった。私は心の中で、彼女の恋を応援すると決めていた。
――死神さま、私は必ず生き延びて、強くてカッコ良くて、領地の民に愛される領主であるラファエルを見届けたいと思います。そして、レティシアの恋の成就を応援します。
私は暖炉で燃える薪がぱちぱちとはぜる音を聞きながら、ラファエルに寄り添った。彼を守り抜き、自分の命を守り抜く、王冠の宝石を巡る旅が始まっている。
レティシアと第二王子ケネスは恥ずかしそうに互いを見つめあいながらも、互いのことを知る会話を二人で始めたようだ。
朝目覚めると、すぐに侍女のジュリアが寝室の外から声をかけてきているところだった。
「旦那様、奥様、陛下からの早馬でございます」
私はハッとして身を起こした。昨晩ラフェエルに愛されたので、私は幸せな気分で眠った。しかし、『陛下からの早馬』という言葉に一瞬で目が覚めた。フランリヨンドのオットー陛下からの早馬とあれば緊急事態だろう。
「あなた、『陛下からの早馬』でございますわ」
ラファエルを起こすと、ラファエルもその言葉にハッとしたらしく、すぐにベッドから起き上がって寝室のドアを開けた。
「ジュリア、いますぐにいく」
「お城の客間でお待ちでございます。第二王子のケネス様がお見えです」
「ケネスが?」
「左様でございます」
ジュリアはキビキビとした仕草ですぐに私の衣装の準備に取り掛かった。私はネグリジェからドレスに着替えて髪を整えなければならない。ラファエルは自分でサッと上着を着て身支度を整えると「先に行っている」とだけ短い言葉で告げるとサッと寝室を出て行った。
真っ赤な赤毛でそばかすだらけのベアトリスもすぐに寝室に入ってきて、ジュリアと一緒に私の身支度を素早く整えてくれた。
「二人ともありがとう」
私もすぐに寝室を出て城の客間に向かった。朝とても早い時間で、太陽は上がったばかり冬景色の城の庭は、ぼんやりとした日の光に照らされて、静かな楽園といった趣だった。
――第二王子のケネス自らが早馬を駆けさせるとは、何か悪いことが起きたに違いないわ。従者に任せられないような何か非常事態を知らせる便りかもしれない。
私は焦る気持ちで客間に急いだ。
――お母様に何かあったのかしら?それともマリアンヌお姉様に何かあったの?それとも、第一王子のウィリアムに何かあったのかしら!?もしくは、陛下に何かあったのかしら。
私はグッと怖い思いが込み上げてくるのを感じながら、唇を噛み締めて客間の中に駆けるようにして入った。
「第二王子ケネス様!」
ラファエルと固く出来合っていたケネス王子が私の顔を見るなり、少し微笑んだ。ケネス王子の瞳には涙が光っていて、ラファエルの目線も力なく泳いでいた。しばらく暖炉にくべられた薪の燃える音しか聞こえなかった。客間はしずまり返っていた。
――やはり、不幸のお知らせね……
「やあ、ロザーラ、久しぶりだが元気そうで何よりだ」
ケネス王子は快活そうに振る舞った。でも、私は騙されなかった。
「正直に本当のことを教えていただけますでしょうか」
私がそっとケネス王子に問いかけると、ラファエルが答えてくれた。
「私の母上が亡くなったそうだ。襲われたそうだ。父を襲った矢が母上にあたってしまったようだ。父上は元気だ」
私はラファエルの言葉に絶句した。
「つ……つまり、ラファエルだけが狙われているのではなく、同時にお父様も狙われていて、お父様を狙った長弓の矢がお母様に当たり、お母様が亡くなってしまわれた。あなたを狙った長弓の矢はレティシアが素早く叩き落としました。だからあなたはこうして今生きているということになりますね」
私はそこまでいうと、ジュリアとベアトリスに合図をしてレティシアをを連れてきてもらった。ラファエルにそっと寄り添う。ラファエルは涙をこらえて唇をかみしめていた。瞳には涙が溢れている。私は彼を抱きしめた。
「朝早くから、いかがされたの?」
レティシアが慌てた様子で客室に入ってきた。
「第二王子のケネス様よ、レティシア」
「あなたはとてもラファエルに似ているわね」
レティシアは小さな声で叫ぶと、胸に手を当てて立ち止まった。確かに、第二王子とラファエルは似ている。血のつながったいとこ同士だ。
「ラファエルとは従兄弟だからね。父の妹がラファエルのお母様なんだよ。私の叔母上でもあるラファエルのお母様が亡くなったんだ。ラファエルのお父様が襲われた矢に射られてしまった。長弓で不意打ちで襲われたようだ。とても残念だ。僕にとっても大切な叔母上だった」
「まあ、なんと!ラファエル、おばさまが亡くなったなんて!」
レティシアは静かに佇むラファエルに駆け寄った。
「最近はあまりお会いできていなかったの。とても残念だわ」
レティシアの声は震えていた。
「あなたを狙った長弓、あの敵は同時にあなたのお父様も狙ったのね。このフランリヨンドのブロワとジークベインリードハルトで同時に敵は襲ってきたのね」
「そういうことになるわ。あなたがラファエルを狙った矢を剣で振り払ってくれた。レティシア、本当にありがとう」
私はかすれた声でレティシアにお礼を言った。今更ながら恐怖が込み上げてきた。
「父上は、つまり陛下はラファエルも狙われるとおっしゃったんだ。父にとってはとても大事な妹だったんだ。父は大変な悲しみようだ。甥の君まで失ってはたまらないと、私を使いによこしたんだ」
第二王子ケネスは私たちに告げた。
「ちょっと待っていてくださるかしら?」
私はそう皆に告げると、急いで寝室に戻った。
――ケネス王子に全てを話そう。敵が水路で進むとあらかじめ知っていて、当時の皇后の側近が敵の一味だとしたら、私たちの進むルートは全て敵に知られているわ。
王冠を手にすると、地図も持って私は急いで皆が待つ客間まで戻ってきた。ベアトリスとジュリアには部屋の外に出てもらっている。この客間には、第二王子ケネス、ラファエル、レティシアと私しかいない。
「こちらをご覧いただけますか」
私は第二王子ケネスに今までのことをお話しした。私が陸路で死にかけて死神と契約して戻ったこと以外の、この大陸を横断する旅のことを打ち明けたのだ。
「つまり、敵には君たちがこれからどこの街を訪れるのか、全て知られているということだね。その王冠をもう少し見せてくれないか」
第二王子ケネスは物分かりが非常に良い方だった。武術は第一王子ウィリアムの方が得意だが、ケネス自身はとても頭が良い方だと評判だった。兄のウィリアムと違って女好きという噂もない。
「この王冠の残りの穴は7つ。ラファエルのおばあさまが告げた街のルートはこれだな」
私が地図にあらためて印をつけてみせた地図の川沿いの城を眺めた。不意に、何気ない様子で、ケネス王子が王冠に埋められた昨晩見つけた宝石をくるりと回した。ケネス王子がエーリヒ城の迷宮から見つかった第二の宝石を回すと、暗号文字が王冠に浮き出るように現れた。
「なんとこれは……!」
――これはなんだろう?
皆が息を飲んだ。こんな仕掛けがあるとは誰も気づかなかった。ケネス王子が何気なく回したダイヤが暗号文字を浮かび上がらせる仕掛けは、今初めて気づいたことだった。
「『オリオン座が救う者を決める』、『冬のオリオン座のベテルギウスとベルタの城で見つかった宝石を重ねて第二の宝石が見つかった』」
ケネス王子は豊かな褐色の髪の隙間からのぞく緑色の瞳を輝かせて、ぶつぶつとつぶやいた。目を閉じて何かを考え込む仕草をして、ハッとした様子で小さな声で私たちにささやいた。まるで大発見をした子供のように興奮している。聞き取れないほどの小さな声で彼がささやいた言葉は……
「これは、おそらく3つ目の城を示す座標だ」
「座標?あの船の旅で使う座標か……?航海の旅の道標となる座標?」
「そうだ、冬の南の空に燦然と輝くオリオン座のベテルギウスが示す第二の宝石。次の第三の宝石のありかは『大陸を治める力を与える石』が示しているんだよ。間違いないと思う」
興奮したようにラファエルと第二王子ケネスはささやきあっている。私はふと隣に立つレティシアを見た。彼女は頬を赤らめて胸に手を当てて、第二王子ケネスが子供のように興奮して自分の考えを話す様を眺めている。
――えっ?レティシア……?まさかケネス王子に?
私はとっさにレティシアの腕を取り、さりげない様子でケネス王子の隣に彼女を立たせた。そのまま私はラファエルの隣に立つ。レティシアはうっとりとケネス王子のお顔に見惚れたままで、ささやくような声で彼に言った。
「つまり、8年前に皇后様が訪れた城を地図上で見たものは罠にハマるということね?王冠を手にして、第二の宝石を見つけた者だけが、第三の城を知るということね?」
ケネス王子はレティシアの言葉にハッとした様子で隣に立つ彼女を見つめた。プラチナブロンドの彼女は天使のように美しい様子で、彼を惚れ惚れと見つめている。
「そ……そうなりますね……」
ケネス王子は隣に立つレティシアの瞳をのぞきこむような状態で頬を赤らめた。
――ケネス王子もレティシアの魅力に気づいてくれた……レティシア!ついにあなたの恋が動き出すわよ
私は自分のことのように嬉しかった。レティシアとケネス王子はおそらく恋に落ちるのではないか。
「城には順番があるのですね。ケネス王子のおかげで私たちも罠にはまらなくてすみましたわ」
私の言葉にレティシアとケネス王子は手を取り合わんばかりの勢いでうなずいた。二人とも瞳を輝かせている。
「君がいてくれて本当によかった。3つ目の城のトラップにひっからなくてすんだよ。ダイヤが次の城の座標を示すなら、王冠を手にした者にしか宝石のありかと順番がわからないということだから」
ラファエルは悲しみに暮れる様子から、謎解きで心を悲しみから引き離すことに少し成功した様子で、ほっとしたように私の肩を抱き、第二王子ケネスに感謝の言葉を伝えた。
「この旅に私も同行するよ。君たちの旅の行く末を見守りたい。私も王冠の宝石を探す旅に参加したいから」
「ありがとう!本当に君がいてくれると助かる。だが、命の保障はない危険な旅だ。敵は私たちを執拗に狙うだろう」
「父からは、君を守るようにと言われている。私もその気持ちに変わりはない」
ラファエルと第二王子ケネスは硬い握手をした。
「私も参加するわよ。どこまでもついて行って、この旅の終着を無事に見届けるわよ。よろしく、ケネス王子。私はラファエルの幼馴染のレティシアよ」
花が開花するような笑みを無邪気に浮かべてケネス王子にささやくレティシアは、本当に美しかった。私は心の中で、彼女の恋を応援すると決めていた。
――死神さま、私は必ず生き延びて、強くてカッコ良くて、領地の民に愛される領主であるラファエルを見届けたいと思います。そして、レティシアの恋の成就を応援します。
私は暖炉で燃える薪がぱちぱちとはぜる音を聞きながら、ラファエルに寄り添った。彼を守り抜き、自分の命を守り抜く、王冠の宝石を巡る旅が始まっている。
レティシアと第二王子ケネスは恥ずかしそうに互いを見つめあいながらも、互いのことを知る会話を二人で始めたようだ。
昨晩寝室で見たアフリカンマリーゴールドの花言葉にもう一つあった。「絶望を乗り越えて生きる」だ。冬の寒空に朝日がのぼりつつあった。




