二人の恋はいつまでも〜届け〜
前回同様つまらなくても感動しなくても文句は受け付けません。
それでもよろしければお読み下さい。
二人の切ない恋のお話を。
私がとある病院で看護師をしていたときの話。
受け持っていた患者さんに北見 湊という人が居た。その人は白血病を罹って入院していた。しかも20代の患者さんだったから進行も早く、余命宣告までされていた。
しかしこの人。湊さんには家族が居なかった。
両親ともに同じ病気で若くしてこの世を去ってしまったらしい。
だから湊さんの御見舞に来る人は一人もいなくて心做しか寂しげな表情を浮かばせていた。
私は何度も何度も足を運んだ。私には湊さんの気持ちがわかるからだ。
私が高校生のころ、両親が交通事故で死んだ。それから祖父母の家で育てられ今に至る。
私も湊さんも孤独だったのだ。
その話からだんだん馬が合うようになり、いつしか湊さんを好きになっていた。
だけどその気持ちを言い出せずにいた。
毎日のように湊さんの病室へ足を運び1ヶ月が経った。
私は湊さんから手紙を受け取った。
そして自分が死んだら読んでほしいと言われた。
いつしか私は湊さんが死ぬわけがないと思っていたので急に現実を突きつけられたような気がした。
湊さんは余命宣告までされている病人だ。
健康な私達よりずっと短い余命で生涯を終えてしまうのだ。
それがなんだか悲しく思えて仕事にも身が入らなかった。
手紙を受け取ってから半月後、港さんは息を引き取った。
想定より4ヶ月半も早かった。まだ港さんは生きていたはずだったのに死んでしまった。
私は家に帰ったときに泣き叫んだ。
家中に鳴き声が響き渡る。そして疲れ果てて寝てしまった。
翌日。私は手紙のことを思い出した。
引き出しにしまっておいた手紙を読むことにした。
麻里さんへ。
今まで僕の面倒を見ていただきありがとうございました。僕のように先が短い人のお世話は意味がないし大変だったと思います。
ご迷惑をおかけして申し訳ございません。
こんな出だしでいいのでしょうか。
すみません。手紙…書き慣れてないもので(汗)
こんな事はおいておいて。
この手紙を麻里さんが読んだということは僕はもう死んだのですね。
なんだか悲しいです。本当はもっと生きたかったです。
しかしそれは叶わない願いでしたね。
最初は別に死んでもいいと思っていました。
だけど麻里さんに出会ってから変わりました。
もっと生きていたいと思いました。
いつしか麻里さんのことが好きになっていました。
直接伝えられなくてごめんなさい。
僕は麻里さんの事が好きです。
これだけでも伝えたいです。
麻里さんが僕のこと嫌いでも僕はずっと好きだと思っています。
今まで僕なんかの世話をありがとうございました。
これからの仕事も頑張ってください。
そしてこんな手紙なんて捨てて僕なんかのこと、忘れちゃって下さい。
長文ですが読んでいただきありがとうございました。
今までご迷惑をおかけしていたことを心よりお詫び申し上げます。
そして今までありがとうございました。
湊より。
私は泣き崩れた。両思いだったのに気付かなかった。
自分は馬鹿だと思った。もっと早く気づいてあげたかった。
好きだって伝えたかった。
後悔と自責の念で立ち上がることができなかった。
しばらくして落ち着いたころ、私は天国にいる湊さんに手紙を書くことにした。
湊さんへ
私は湊さんの事がずっと好きでした。
湊さんと一緒にいると心が軽くなっていました。
ずっとずっと大好きでした。
この想いを届けられなかったことに、とても後悔しています。
湊さんの寿命が短いことを知りながら、その事実から逃げて、告白をためらっていました。
なので今こそ。
この場で告白させていただきます。
私も湊さんのことがずっと好きでした。
こんな私でも良ければいつかまた会いに来て、私と付き合って下さい!
いつまでも待っています。
もし、湊さんがこの手紙を読んだのなら。
もし、湊さんにこの手紙が届いたのなら。
私のことをまだ覚えているのなら。
お返事下さい。
麻里より
知っていた。分かっていた。この想い。この手紙。
それが届くことがないことを。
だけど信じたくなかった。届いてほしかった。
届けたかった。
だからこそ郵便局まで足を運び、この手紙を届けてもらうことにした。
届くことを信じて。
あれから5年の月日が経った。
私に謎の手紙が届いた。差出人は掠れてて、薄くて読めない。
手紙にはこう書いてあった。
お久しぶり■す。
お元■でし■か。
そろ■■新しい彼氏が■■■■■しょうか■
僕は■■世でも■気■やってます。
■は■うあな■に■い■くても会えま■ん■
■せにな■て■■い■
も
う
一
度 会い
た
か ■
た
もう■わな■で■ね
これが ■当の■後で■。
さよ■なら。
ところどころ乱雑で掠れてて読めない字ばっかだったけど分かった。
これは湊さんの字。湊さんが最期に遺した手紙である。
病気でもう手に力が入らない状態で書き上げてくれた手紙。
私は5年前と同じように泣いた。
しかし一文だけ読めたところがある。
それは
「これからも沢山の人を救って下さい。」
という文だった。
私は湊さんの遺志を背負うことにした。
ああそうだ。私は人を助けたくて看護師になったんだ。
湊さんの言葉で思い出せたことに感謝しながら今日もまた一歩一歩歩き出す。
今日も少しずつ救っていこう。
今までの辛い気持ちが一気に吹き飛んだ気がした。
湊さんが近くにいる気がした。
ぼそっとつぶやいた。
湊さん以外誰が愛しますかよっ。
前回同様エピローグを書こうと思います。
あの手紙から数日後、一人のお兄さんが私を尋ねてきた。
「麻里さんですか?」
そうだと答えると安堵して言った。
「湊が麻里さんにこれをって」
私は謎の箱を貰った。開けてみると中にはHAPPYBIRTHDAYと書かれたメッセージカードとともにキーホルダーが入っていた。
湊さんが亡くなってからちょうど1週間後が私の誕生日だったのだ。
キーホルダーは猫の形をしていた。
お兄さんは「湊、猫が好きなのです。だから誕生日に猫のキーホルダーをこっそり用意したのでしょうね。わざわざ俺をパシらせて来たのですよww」
私は嬉しさと感動で涙を垂らした。
ちなみに猫のキーホルダーは私の看護バッグについている。