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異世界転生オブザデッド

作者: 日口史矢

初投稿ですがよろしくお願いします。

誤字脱字の指摘やアドバイスなどしていたただければありがたいです。

 異世界転生。強力なチートを得て何百何千の敵をバッタバッタと、倒したり何人もの女の子と仲良くしたり、当たり前に持ってる知識で大金稼いでウッハウハ。そんな夢を見ていた自分を殴りたいと転生してから何度思ったことだろう。


「あー、やってらんないや。」


 ある時、何もかもが嫌になって逃げだして道路に飛び出してトラックに轢かれて俺は即死。転生前にあの世で知ったことによるとその運転手は一家心中してしまったそうだ。家族が皆泣いていたのを知らされた時は本当にバツが悪かった。


「それで俺は享年十八で人生終了。運転手を自殺に追い込んだり親より早死にして泣かせたりっていう生前の罪に対する罰として地獄に落ちるか、異世界転生してこのクソッタレな世界でこんなクソみたいな仕事に従事して罪を償えっていう強制二択なんだからな。」


 納得はいかないが、自分でも他人事だったらそんな奴地獄に落ちてもおかしくないなんて思うかもしれないって考えて自己嫌悪に陥ってしまう。地獄で責め苦を受けてる亡者の姿を見せられただけでも地獄落ちを選ばない選択肢があるだけマシなんだけど。


 そんなことを考えているとゾンビが背後から襲い掛かってくる。こいつはこの世界にいっぱいいるノロノロとしか動かないゾンビと違って時々いる早く動けるタイプだ。気づいた俺はそちらに向かって持っている棒を振るってぶん殴る。ゾンビは大した感触もなく粉となって消えていった。文字通り粉砕ってヤツだな。本来なら俺の力なんかじゃこうはならないはずなんだが、転生を選んだ際に貰った力のおかげだ。


「リョウ様。油断なさらないでくださいといつも言ってるじゃないですか。」


 ゾンビばかりの世界にはにつかわしくない落ち着いた雰囲気のスタイルのいいシスターがこちらに声をかけてくる。彼女の名前はクリス。


「いや、大丈夫だって。俺なら問題ないって知ってるだろ。実際に攻撃食らったことが何度もあって大丈夫だったんだから。」


 何度も聞いた説教に少しうんざりして彼女に答える。この世界に転生する際に貰った力を使うと俺がゾンビ触っただけでもさっきみたいにゾンビを倒したりできる。気持ち悪いから直接触らず棒とかの武器を使ってるけど。ちなみに向こうの攻撃はこいつみたいな雑魚相手ならよほど連続で喰らわないとこちらはノーダメージ。


「分かってても心配なんです。もし本当にリョウ様になにかあったらと思うと私はどうしたらいいのですか。」


 こうやって心配してくれてるクリスも実はゾンビだったりする。この世界に転生する際にゾンビを倒せる力とは別にゾンビを支配する相方が欲しければ自分で探せってゾンビパウダーってヤツを一人分貰ってんだが、たまたま見かけて気になってしまったゾンビ状態の彼女に与えたらこう勝手に付いてくるようになってしまった。与えた途端に生前の姿と思われる状態に戻ってたりもしてたけど。種族的にも普通のゾンビからフレッシュゾンビというものに変わって生きた人間とのそんなに大きな違いがない状態に戻っているらしい。本人に聞いたら元の姿の通りって喜んでたから細かいことはどうでもいいか。


「こんなに世話を焼かれなくても、例えゾンビでもいいから話し相手ぐらいにはなってくれればいいなと思っただけなんだけどな。」


 俺のクソみたいな異世界転生で数少ないよかったことだ。一人でゾンビ退治なんて繰り返してたら気が狂ってたかもしれないからそれを防ぐためのサポートだとかありえる話かもな。いくら美人でも相手がゾンビだと何故か性欲がわかないのは残念だが。


「この町で後どのくらいゾンビが残ってるんだろ。この町の規模を考えたらそろそろ終わりだと思うんだけどな。」


 どうもこの世界は何があったのか過去に一度滅んだらしく、その時に死んだ人達の一部がゾンビとして死にきれないまま残ってるそうだ。何で滅んだのかは転生前に教えて貰えなかったし、周りはゾンビばかりで誰からもその辺りの話を聞けそうにない。クリスに聞いてもそのことについて何も知らなかったようだ。それで結局、贖罪のために転生させられた俺に課された仕事がこの世界でゾンビたちを倒して成仏させることってわけだ。


「リョウ様。あちらにボスと思われる敵が現れたようです。お気を付けください。」


 ゾンビ同士ということでわかるのかクリスが指さした方向に嫌な気配を感じる。町中のゾンビを残り一匹になるまで倒すとやたら強力なゾンビが現れる。どこかから湧いてくるのか残った奴がボスに昇格するのかわからないがとにかくこいつを倒せばこの町のステージはクリアだ。


「今回はなかなか厄介そうなボスじゃないか。倒せないってほどじゃないけどさ。」


 戦ってみると今回のボスゾンビはゾンビのくせにこちらを待ち構えて初っ端から火の玉の飛ばす魔法を使ってきた。魔法とか使うのを見ると流石異世界だと感嘆する。ゾンビが魔法を使う異世界というのは勘弁してほしいけど。


「まあ、魔法を使うったってコイツの魔法の使い方じゃ脅威じゃないさ。」


 俺に撃ってきた魔法の使い方から考えて詠唱の声みたいなのは聞こえないくせに一発撃つのにもタメがいるみたいだし、連射もできないようだ。ということはこちらから攻撃を続けて魔法を撃つ隙を与えなければいい。早く動けるタイプだけど対応できないほどじゃないし、雑魚と違って一発で粉砕できないけどボス敵といえど叩き続ければいつかは終わるのは経験から確認済みだ。


「これで三発、そろそろいけそうだ。」


 ボスの攻撃の隙を伺いながら叩き続けてもう一発で倒せるという手応えを感じる。


「これで、トドメだ。」


 ボスゾンビの大ぶりの攻撃を躱しながら思い切り力を入れて四発目の攻撃を加えるとボスゾンビは爆発して消えていく。


「ご苦労様でした。しばらくそちらでお休みください。」


 俺が倒してきた町中のゾンビたちの魂が次々に浄化され、天に帰っていくのを見ながらクリスが祈りを唱えている。彼女の祈りが終わるのを待ち、声を掛ける。


「今日は疲れたからお祈りが終わったらもう休もうぜ。」


 そう声を掛けた後で適当な家を探し、勝手にその家に入って休むことにする。今までの例によれば朝になって目が覚めて家から出たら何故か新しい町になってて次のステージに入ってまたゾンビ退治だ。


「こんな仕事がいつまで続くんだろうな。クリスがいてくれることだけは救いなんだけどさ。」


 罪を償い切ったと認められたときか、この世界中のゾンビを倒し尽くしたときか。それが終わったらどうなるかも分からないがただ今はこのクソゲーみたいな仕事を続けるしかない。


「ああ、クソッタレ」


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