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ep.9 硝煙の記憶 Ⅰ

 昔はこんなんじゃなかった。物心ついた頃には親は居らず俺はAAアンダーアトランティスで暮らしていた。だから俺は親の顔を知らないしそれまでどうやって生きてきたのかも知らない。俺が持っていたのは漆黒のナイフと一枚の紙切れ…。そこには「天音」と書かれておりそれが自分の名前であること、そして残されたナイフで生き抜かなくてはならないことを悟った。

それからは盗みやゴミを漁って命を繋いだ。しかし栄養が足りないせいか身体が弱くナイフを使って人から物を奪い取ることは出来なかった。


 7歳になったとき根城ねじろにしていた空き家に【ドミネーター】と名乗る謎の武装の集団が待ち構えていた。その中のリーダー格の男に銃を向けられたとき、恐怖で足がすくむのを感じた。腰に装備したナイフの存在すら忘れてただただ怯えた。その時に俺は気づいたのだ、弱い人間は強い人間には絶対に勝てないのだと・・・。

 そうして気絶させられた俺が目を覚ました時は白い色でいっぱいになっていた。それが天井だと気づくのに数秒を要したほどだ。これまで汚れた世界しか見てこなかった俺にとってシミひとつないものは初めて見た。


「目が覚めたかな?」


 そう言いながら部屋に入ってきた白衣の男の第一印象は怠惰。やる気のない目つきによれよれの白衣。怪しい・・・というよりもどちらかというとそこが見えないようなやつだった。髪もボサボサだし白衣は少し汚れている。


「アンタ誰だよ・・・」


 そう言いつつ腰の辺をまさぐる。しかし装備していたはずのナイフはなく、そればかりか服装すら真っ白に変わっていた。


「僕かい?僕の名前は朝霧あさぎり 和也かずや。キミの持ち物は全て回収して保管してるよ」

「っ・・・気づいていたのか?」

「気づくっていうか僕ならそうするってだけかな」


 どうやら朝霧と名乗るこの男は一見だらしなそうに見えるが頭が少しばかり回るようだ。


「それで?誘拐してきて何の用だよ」

「手荒になったようですまないね。うちの実動部隊は頭に筋肉が詰まってる奴らばかりなんだ」

「実動部隊・・・ここは一体どこなんだ?」

「ロストエリア・・・【消失の迷宮】と呼ばれる場所だよ」

「ロストエリア・・・」


 俺のいた場所と同じ・・・


「・・・ここは何の施設だ?」

「ここ?ここはただの歴史研究センターだよ」

「歴史・・・?」

「昔はね電気こそない時代だったんだけど文献を読み解くと人間には【魔法と魔術】の概念が存在し【特使な力】の行使もできるようなんだ!」

「魔法・・・?魔術・・・?」


 何を言っているんだ?ゴミ捨て場に捨ててあった本・・・教科書というらしいそこに書いてあったのはホモサピエンス、人間の初期型が現れそれが新人になり縄文から徐々に発展を遂げてきた・・・それが日本の成り立ちなはずだ。


「何の話だ?日本は歴史を徐々に積み重ねてきたはずだ」

「ん?キミは本が読めるのかい?劣悪な環境で読み書きができるなんて優秀だね」

「・・・書くのは出来ねぇよ、読むだけだ」

「なるほどねぇ、それで何だっけ?歴史の積み重ねだっけ?」


 朝霧はコーヒーを一口啜るとまとめられた紙束をこちらに手渡してきた。

そこには《世界創生よりの超常現象の観測》と書かれていた。


「コレは・・・?」

「それはある文献についてまとめたものが軽く書かれている」


 朝霧は椅子にどさっと座り込みなり足を組み話し始めた。

新生活に戸惑ってしまったための遅れであって、サボりではない。

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