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ep.6 その古さは・・・・・・

 入学式は長い。この長さは生徒にとってはかなり厳しいものを感じる。そりゃあ人によっては大切な日になるけど、俺からしたら校長の話は長いし役員のお言葉も長いしなんやかんやあってとにかく長いしでいい思い出がない。

 しかし今回は違う。かわいい妹の高校生の門出を祝う大切な日だ。これを喜んで見ない兄がどの世界に居ようか・・・・・・!!


「くぁ〜〜・・・・・・話長げぇよ・・・」


ごめんここに居たわ。


        *****


 現在は体育館の中で新入生の入学式を眺めている。いや、半分寝かけているって言うのが正解か?なんにせよ今日この学校に来たばかりの俺が新入生の入学を祝わねばならない?俺ものことも祝ってくれよ!!

 そんでもって今は政府のお偉いさんが喋っている。これが長いのなんのって。なんかこのまま永遠にしゃべるんじゃないかって思えてくる。いや、いいことはしゃべってるんだぜ?自分のためになることを言ってくれて、それを言うために事前に調べたりしているのもわかっているつもりだ。ただ長い。


「くぁぁ〜〜ダメだこりゃ熟睡コースだな・・・・・・」

「デカイ欠伸だな」


俺が眠りの体勢に入ろうとしていると隣の男が話しかけてきた。第一印象はチャラい奴。茶色い髪を整えてんだか整えてないんだかわからない髪型にしており、制服も着崩している。そして雰囲気が陽キャっぽい。


「別にいいだろ?」

「もちろんいいぜ、2年F組の柏木天音?」

「なっ・・・・・・どうして俺を!?」


そんな質問に彼は肩をすくめて見せる。


「そりゃあ俺があんたと同じクラスの人間だからだ」


 なるほど。それなら知っているのも当然か。


「それで?何か用か?」

「あぁ、実はいい提案を思いついてな・・・聞くか?」


俺はその言葉に訝しみながらも肯定して見せた。彼はそれを確認したのちその提案をする。


「俺がお前にこの学校の案内やシステムの紹介をする。でもその代わりに俺とダチになってくんねぇか?」

「ダチ・・・・・・?」


ダチ・・・・・・つまり友達になってくれってことか?俺にとっては願ってもないことだが。


「いいのか?そんなことで」

「いいんだ。それが俺の望みだから・・・・・・。お前は知ってるか?教室の隅で黙々と食べる飯の味を。休み時間を読書や寝たふりをして過ごすこの惨めさが・・・・・・!」

「!?」


まさかこいつ・・・・・・知っていると言うのか!?ぼっち飯の味を・・・・・・!休み時間の時間の潰し方を・・・・・・!!


「お前、友達が・・・・・・?」

「あぁ、今も昔も友達が1人もいない」


確定した。こいつは同志だ。俺と同じくぼっちのなんたるかを知っておりそのスキルを高みまで磨き上げた精鋭・・・・・・。


「俺と同じ同志じゃないか・・・・・・」

「同じってことは・・・・・・お前も?」

「あぁ、今まで1人も友達がいなかった」


涙が出た。悲しみと雪辱の涙が頬を横切る。


「・・・・・・大丈夫だ!俺らが友達になりゃあそれも消える!!」

「ま、まさか!!」

「俺らは今日から友達だ!!」


そう言い放ち彼はその場で立ち上がった。


「同志よ!俺の名前は君津一樹きみつ かずきだ!!よろしく天音!!!」

「よろしく一樹!!」


互いに手を取り友情の儀を結ぶ。俺はもうボッチではない!!


『楽しそうね君津くんに天音くん』


そんなマイクからの声に俺たちは壇上へ視線を向けた。そこには既に政府のお偉いさんの姿はなく学園長が立っていた。金色の長髪を後ろに流した外国人の女性だ。


『お友達ができて嬉しいのはわかるけど、今は入学式よ?時と場合を考えてね?』

「「す、すみません・・・・・・」」


は、恥ずかしい・・・・・・。高校生にもなってTPOについての話をされた。新入生や在校生、教師陣や保護者に至るまでクスクスと笑い声が聞こえてくる。

 でも仕方なくない?入学式ってのは気の合うやつを見つける絶好のスポット・・・・・・。この機を逃せばまたいつ友達を作るチャンスが来るかわからない。いくのは当然だろ?・・・・・・まぁ,俺らは新入生じゃないけど・・・・・・。


 

       *****


西暦2032年 4月6日 PM 12:20


「お兄ちゃん!帰ろ!!」


入学式のあとHRを終えた俺のところに葵がそう声をかけてきた。しかし俺には一樹と約束した説明が残っている。


「わるい、この後学校について教えてもらう約束をしたんだ。先に帰っててくれるか?」

「わかった!その約束をした人って・・・・・・」


 そう聞かれたので視線を隣に座る一樹に向けた。すると葵は満面の笑みで、


「お兄ちゃんにも友達ができたんだね!!じゃあ私は先に帰ってるね?」


 それだけ残してパタパタと走り去る葵の後ろ姿を見送りながら先ほどの言葉になんとも言えない気持ちを抱いた。・・・・・・どうして妹が兄に友達ができて喜んでいるんだ?普通は逆なんじゃ・・・・・・・・・。


「いいなぁ・・・・・・」

「なにが?」


唐突にそんなことを言い出した一樹に俺が聞き返すと彼は未だに葵がいた場所を眺めながら、


「あんなにかわいい妹がいてだよ。羨ましいぜ」

「そんなこと?そりゃ妹がいるのはその家庭や生まれたか環境によるんだから羨ましく思っても仕方ないんじゃないか?」

「んなことわかってるよ」


 じゃあなんで言うんだ?そう思った俺に応えるように彼は


「まぁようするに、かわいい女の子と同じ屋根の下で暮らすお前が憎いってことだ」

「はぁ・・・そうか・・・・・・」


 もう、それ以外に言葉が出てこねぇよ。


「そんじゃ仕切り直して・・・・・・俺は君津一樹だ。能力は・・・まぁ、あとでわかるだろ。強いて言うなら戦闘はできねぇってことだけだな」

「戦闘ができない・・・・・・。と言うことは回復か援助サポート、その他特殊な能力関係か?」

「まぁ、そんなとこだ。でもそこまで特殊なもんじゃねぇ。あまりにも特殊な奴らはデウスディザスターとしてSクラス行きだ」

「Sクラス・・・・・・?この学園はA〜Fクラスまでじゃなかったのか?」

「まぁ、それで大体合ってる。だけどこの学校のクラスは全てSPや個人の能力に依存している」


 彼が言うにこの学園はF〜Aと能力が高いにつれて上がっていくらしくその基準というのが入学時点でのその人の持つ能力の強さ。試験の時にそれらを判断され配属される。その時から与えられる初期SPスクールポイントに差が出る。そこからは定期筆記考査や実技考査の出来や特務クエストの難易度による成功報酬としてSPを加算しそれによって昇格や降格を左右するらしく生徒は血眼になって頑張る。・・・・・・ランクに応じて成功報酬金に上乗せがあるとの噂もあるらしいしな。

 そしてSクラスと言うのが他にないユニークな能力を持つデウスディザスターたちの特別クラス。彼らにスクールポイントの概念はなく必ずSクラス固定らしい。しかし彼らはクラス内で順位が決められるらしく生徒間での合意でのみ許される【決闘】にてクラス順位を争い、それぞれに称号を与えて生徒の成長意欲を高めるらしい。


「それじゃあ次は装備管理倉庫な?きっとそこにお前の装備が届いてるはずだぜ?」

「装備・・・・・・?クエストのか?」

「あぁそうだ」


 俺の装備・・・・・・どんなのか今から楽しみだな。


「じゃあ俺はまず装備に着替えてくるから、そこの事務員から装備を受け取ってくれ」

「わかった」


そう言って受付のところに行き事務のお姉さんに声をかける。


「すみません、今日来た2年F組の柏木ですけど装備届いてますか?」

「2年F組の柏木さん・・・・・・あぁ!その方の装備は学園長がお預かりになっていますので学園長室へご出頭ください」


は・・・・・・?学園長?なんでそんな人が俺の装備持ってんだよ・・・・・・。訳わかんねぇ。

 しばらくすると一樹が戻ってきた。一樹は白いカッターシャツに紺色のズボン、上から真っ赤なマントをつけ右耳にはインカムをつける装いで腰にはコンパクトなポーチが2つと右足に銃を一丁携えている。ポーチの中を聞いたら薬と折りたたみ式のスタンナイフ、メモとペンが入っていると言っていた。


「あれ?お前装備は?」

「わからん。学園長が預かってるって言ってた」

「学園長が?珍しいこともあるもんだな。あの人【能力者管理保護局】の局長だぜ?」


能力者管理保護局・・・・・・全ての能力者、特に学生を中心に能力の管理と本人の保護を目的とした政府直轄の組織だ。その曲調の名は星夢ソフィア(ほしみ ソフィア)確かイギリス人だったか?日本人の男性と結婚したことで苗字が日本式に変わったそうだ。確か同い年ぐらいの娘もいたはずだ。


「まぁ、なんにせよもらわないと始まらないし行こうぜ」


        *****


西暦2032年 4月6日 PM 14:25 学園長室


「「失礼します」」


 俺たちは装備を受け取るために学園長室に来た。わからないだろうか、学校のトップ・・・校長とかそう言う人の部屋に入るこの緊張感。扉の圧倒的存在感。こればかりは慣れそうにない。


『どうぞ』


 どうやら許可が降りたようで俺は扉を開けて学園長室に入室した。そこには微笑みながらこちらを見据える学園長がいた。茶色い長机に背景に大きな窓ガラス。窓からは太陽の光が差し込んできている。これが圧倒的存在感。


「どうかしら?学園長っぽい部屋でしょ?」

「そうですね」


台無しです。


「天音くんは自分の装備を取りにきたのね?」

「はい、そうです」

「わかったわ・・・・・・コレよ」


そう言って彼女は一つのトランクケースを渡してきた。何かしらの書類が挟まっている。


「そ、その書類の印字・・・・・・!!学園長印!まさか学園長のオーダーメイドですか!?」


 唐突に一樹がそう言うので俺は今一度学園長の方へ視線を飛ばした。


「そうよ。まぁ、半分正解半分不正解ってところかしらね。そんなことより早く開けて着てみてちょうだい!早くみてみたいわ」


そう言われたので俺はトランクケースを倒し開ける。

 そこには漆黒の布地と新品の拳銃と《使い古された》拳銃。ポーチ、そしてコレもまた刃は新しいが持ち手に使用感の残る漆黒のサバイバルナイフ。


「どう?気に入ったかしら?」

「・・・・・・・・・・・・えぇ」


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