ep.4 星空の下で縁を結んで・・・・・・
「さようなら少年。また来世の君と巡り合おう・・・・・・」
そうして目を瞑った瞬間、ゴツンッと鈍い音が響いたのがわかった。それは何かからの攻撃を《防いだ》かのような・・・・・・。そうして俺が目を開くと障壁のようなものが目の前にあった。
「それをするのは許さないよ」
「お嬢・・・・・・どうして!?」
助かった・・・・・・のか?でもどうして?なぜ彼女は俺のことを助けてくれるんだ?
「天音を殺すのはダメ。殺したなら私があなたを殺すわ」
「!!・・・・・・了解お嬢・・・。天音少年命拾いしたね。また会おう」
(こっちはもう2度と会いたくないがな)
俺はそう思いながらヤンキーと共に去っていく迅たちを見送ったあと少女の方へ視線を向けた。彼女はこちらを見据えその視線は空へと向けられた。
「今日も綺麗な夜空だね・・・・・・」
「え・・・・・・?」
唐突のことゆえにそんな間抜けな声しか出せなかった。
「私はね夜空が好き。特にお月様が好き。日に日に形を変え生きていることを実感させてくれる。・・・・・・あの出会いも満月の、それも綺麗な星が散りばめられたそんな日だったなぁ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
その言葉に何も答えられなかった。何を答えたらいいかわからなかった、の方が適切か?彩葉もどうしたらいいのかわからずオドオドしている。
「天音は月は好き?」
「・・・・・・好きだよ。でもどちらかと言うと月よりも星空の方が好きかな」
「それはどうして・・・・・・?」
「・・・・・・星空は全てを受け止めてくれる。悩みや苦しみ、悲しいことも全てを受け止めてくれる。・・・・・・子どもの頃から何かあればすぐに空を見上げて星空を見てた」
「・・・・・・そう」
静寂が訪れる。月が雲に隠れあたりを暗くする。3月の終わりといえど冷たい空気が流れその時間の長さを誇張させる。やがて雲は晴れ月明かりがまた無機質な路地裏に照らされると・・・・・・。
「私はもう行くね?またね天音・・・・・・」
そうして少女はこの場を立ち去った。再び訪れた静寂は先程の戦いをなかったことにするかのように深く・・・・・・沈み込ませるのだった。
*****
西暦2032年 3月20日 PM11:50
帰還・・・・・・いやまだ家に着いたわけじゃないけどのね?まだ路地裏から出ただけだけどね?
「今日はありがとう・・・・・・それとごめんね、さっきは動けなくて・・・」
「いや、あれは仕方がないと思う。あんなものを見れば誰でも動けない」
実際俺がその現場を見ている側ならチビって逃げていただろう。まぁ、現場側の俺が言うのはアレだかな・・・・・・。
「そう言ってくれると嬉しい」
「まぁなんにせよ無事に生きて帰れた。もうすぐ日付越すぞ早く帰れよ〜」
「ま、待って!!」
その声に足を止め彩葉の方へ振り向く。そこには顔を少し赤らめた彼女がいて・・・・・・。
「また・・・・・・会えるかな?」
「・・・・・・さぁな、そればっかりはわからない。でも・・・・・・」
俺は彩葉の目を少し逸らしながら言った。
「でも・・・・・・縁があればまた巡り会えるかもな」
無責任なことを言った。確かに同じ地域に住んでおり(仮定)能力者である以上異能学園に通っているだろう。そうなれば妹と同じ学校、入学式にでも会うかもしれない。でも、それは必ずしも会えるという訳ではない。だからこそ言ったのだ。『縁があれば』と・・・・・・」
「・・・・・・そう・・・だね・・・・・・。うん、縁があればまた会える・・・・・・。それまでは一旦お別れだね」
「そうだな・・・・・・」
ここで連絡先を交換すれば良いんじゃね?っと思ってしまったが、それを懸命に振り払い家のある方角へ体を向けた。
「じゃあね天音くん、また会う日まで・・・・・・」
その言葉に俺は無反応を貫いた。ここでイケメンなら手を振るのかもしれないが陰キャでフツメン(そう思いたい)の俺にはそんなことはできなかった。
・・・それにしてもアイツ・・・・・・・・
どうして俺を天音『くん』って呼んだんだ?