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ep.2 escape? It's not so easy

 暗い暗い・・・・・・日本では珍しい・・・と言うほどでもないが洋風な街並みが広がる場所、それがここスラムだ。このスラムには密かに名前がつけられいる。【アンダーアトランティス】・・・・・・日本語に訳せば『冥府の理想郷』と呼ばれるこの地にはさまざまな人種の人間がいる。過去何人も殺した殺人鬼、薬物の過度使用によって廃れた廃人など、さまざまな経歴さまざまな理由の人間がここにそろっている。

 【アンダーアトランティス】略称AA。この場所は前も話したがそこいらのスラムとは違い危険が多い。まずは地形迷路のように入り組んだこの地を無策に走るのは厳しい。中の方まで来てしまうと、もう現地の住人に道を聞くしか変える手立てがないほどだ。もう一つは人の手の届きにくさ。この地形がゆえに警察や軍までもがかなり手を焼いている。よってここに来た犯人等は大抵《行方不明》扱いで処理されてしまう。地図からも消され法律も効かない(人の手が届かないから)忘れ去られた土地なのだ。しかしこの場所は今世間を揺るがしている【IRL】の研究所があった場所・・・・・・。その被験者はここに住むこどもたち、足りない分は大人を使っていた。だからここの約5割の人間は【IRL】感染者だ。


西暦2032年 3月20日 PM11:13


「ねぇ天音・・・・・・」

「なんだ・・・・・・?」


そんな緊迫した状況下で彼女は話しかけてきた。その表情はどこか呆れたような・・・それでいて少しがっかりしたような顔だった。


「私たちってこっちから来たんだっけ?」

「いや、少し違う。さっきのところに戻るならさっきの別れ道を右にいかなきゃならない」

「じゃあダメじゃん!?」

「そうでもないさ」


もちろん考えはある。なんの考えもなしにただ歩き回っているわけではない。


「さっきの路地裏・・・あそこは確かにこのスラムの入り口だけど別にあそこだけがここに繋がっていわけじゃないんだ」

「どういうこと・・・?」

「簡単に言えば入り口はたくさんあるってことだ」


このスラムはかなり広い。ひとたび「ここには何があるの?」とマップを指さされてしまえば答えざるおえない。


「ねぇ、ひとつ聞いてもいい・・・・・・?」

「・・・あとじゃダメか?今は1秒でも早くこの場所をでないといけないんだけど・・・・・・」

「今じゃないとダメ」

「・・・・・・・・・・・・」


流石にここまで言われれば俺も止まる。急いでいると言っても路地裏にいた奴らはこっちには入ってこない。しかもここら辺はまだスラムの入り口だ、そこまでやばいやつはいないはずだ。


「・・・・・・なんだ?」

「どうしてあなたはここの地理に詳しいの・・・・・・?」

「・・・・・・ここに、昔住んでいた知り合いがいたんだよ。そいつに聞いたんだ・・・」

「その人は今どこに・・・・・・?」

「・・・・・・7年前に死んだよ」

「・・・・・・ご、ごめんなさい・・・」

「いや・・・・・・」


そう、別に大したことではない。人はいつ死ぬかわからない。交通事故、病気、殺人の被害者、自殺・・・・・・若くして亡くなる要因なんていくらでもある。たとえそれが10歳ほどの人間であっても例外ではないのだ。


「とりあえず急ごう。あの筋を左に曲がれば出口が見える」

「わかった・・・・・・!」


いくらここで話し合っても限られた時間が消費されるだけだ。早いところ脱出してしまおう。

 そうして角を曲がりあともう少しでスラムを出るというその1番気の抜けるその瞬間・・・・・・。


「おいおい、どこ行くんだ?」


出口付近の筋から1人の男が出てきた。年齢は36・・・・・・くらいか?褐色のロングコートに白いインナー、古いジーンズを着用している。それらは破け裾もボロボロ、オマケにそこらじゅうが汚れている。髪はボサボサだが、それがどこか彼の印象を強くしている。


「そんなに急がなくてもいいじゃねぇか、今おじさん少し悲しんだよ・・・・・・な?おじさんのためだと思って大人しくしてくれないか?」

「無理だと言ったら・・・・・・?」


そう聞くとおじさんはあからさまにため息を吐きコートのポケットから手を出した。


「少し・・・大人しくしておいてもらうしかないな・・・・・・」

「・・・・・・過激だな。もうすぐそこはスラムじゃない、現実の世界だ。犯罪者にとっての楽園じゃない。それにこの距離なら出口付近の住人に音が漏れるぞ・・・・・・?」

「あぁ…そうだな。アドバイスありがとう」


そう言うと彼は指を鳴らした。すると彼の背後から見覚えのある男たちが現れた。


「お前ら・・・!さっきの!!」


そう彼らは先程色葉を捕まえていたヤンキー諸君・・・・・・。


「彼らが君たちを探していたから利害が一致したんだ。おじさん頭いいだろ?それにこいつは・・・・・・」


彼が促すと兄貴呼びしていたモヒカンが両手を合わせてからその手を広げた。刹那・・・そこいらがなにかドーム状の空間に覆われそれは姿を消した。


「驚いたろ?モヒカンくん【一定領域外に音を漏らさない】能力を持っているんだ。汎用能力だから他にもこんな力持つやつがゴロゴロいると思うと怖い世の中になったもんだとそう思わないかい?」

「さぁな・・・・・・高2で経験不足の俺にはなんとも言えないな」

「確かにそうだね」


なるほど・・・・・・あのモヒカンの能力で音が消えていたから色葉が連れていかれそうな時声が聞こえなかったのか。


「さぁ、これで準備は完了だ。暴れてもらっても構わないよ?でもおじさんだから暴れずついてきてくれたら嬉しいけど・・・・・・」

「でも断る。アンタらみたいな奴にはついていきたかないね」

「そうかぁ・・・・・・お嬢になんで言ったらいいんだろ。彼の生捕りは簡単だけど後ろのお嬢ちゃんは許しそうにないからなぁ。しかも彼女はデウスディザスターでしょ?」

「ジンさんこんな奴ら俺1人で十分っす」

「ジン・・・・・・?」


俺がそう聞き返すと彼は答えた。


「おじさんの名前だよ朝霧迅あさぎり じん。『タナトス』の力を持つそこら辺のおじさんだよ」

タナトス・・・・・・

  死の神。ギリシャ神話に登場する死を神格化した存在。

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