プロローグ
この世界は未知に溢れている。数字で表したりするものもあれば形として表すものもある。中には簡単に表すことのできないものもあるだろう。例えば「生物学」・・・と言ってもどちらかと言うと思想などの方が言いたい。これらは一重に表すことのできない、なぜなら考え方は人それぞれ違うからだ。別の話もしてみよう。例えばVRゲームあれは形で未知を表したものではなかろうか?仮想空間はまだまだ研究が続けられている・・・これからの進歩が今から楽しみである。
これらはすでに解決・・・つまり誰かが発明したり発見したものだから未知と捉える人はいないかも知れない。それは単純に自分の学が足りないから変な方向に考えが傾いてしまったという可能性も視野に入れておこう・・・。しかしこれらは実際開発されるまではわからないもの・・・未知の世界だったのだ。
ここまで話しておいてすまないが、これらの話は正直言って俺の1人語りでありただの前口上だ。ではここからが本題だ。西暦2025年、科学が発展し自動運転式自動車などの開発が確立し今やリニアの技術を用いて車も宙に浮く時代・・・。同年12月25日、研究所内のウイルスが外に流出してしまった。警察が事情聴取に行くとその研究所で人体実験が行われていたのだ。研究所の所長が言うには、外に流出したウイルスを身寄りのない孤児に感染させて実験を行なっていた・・・と言う。そのウイルスの名前は【ミラノウイルス】病名は【異能解離性症候群】・・・通称【IRL】この病気にかかると人間ではありえない力が引き出せると言う・・・。そんなマンガやラノベみたいな病気あるわけがないと思った。でもその数週間後手から火が出せる人間が現れた。そのほかにも数名超常的な力を発揮する人間が現れ、その9割は13〜18歳の学生ばかり・・・。世界はこの状況を踏まえIRL・・・のちに能力者と呼ばれる学生を一箇所に集めるため中高一貫の【高度異能特務学園】をおよびその寮を設立。彼らにできる限り普通の生活と管理体制を兼ね備えている。そして学園名に『特務』と書いている通り彼らには正義感を高めそれらを犯罪に用いないように警察と合同で犯人逮捕のために尽力するのだ。
しかしそれはただの始まりに過ぎない。彼らは考えてなどいなかった。この奇妙な病気、不可解なウイルスの本当の目的を・・・。
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第1章
ep.1 襲撃
西暦2032年 3月20日 AM8:00
「お兄ちゃん!どうこの制服!?」
「似合ってるんじゃないか?」
この早朝(?)からうるさいのは俺の妹、柏木葵。と言っても実際に血の通った兄妹ではない。7年前・・・俺が10歳の時(今はまだ16歳だが今年17だ)にこの家、柏木家に拾われた。当時9歳だった葵が義妹となるのは必然的で・・・
「もうちょっと反応してくれてもいいんじゃない?」
「十分反応したと思うけど・・・」
「足りないよ!だって今年から私も高校生なんだよ?華のJKなんだよ!?」
だからなんだよ・・・って言う話なのだがそれを振り切れる兄などこの世にはいな・・・
「・・・だから?」
ごめんここにいたわ。
「もういい!」
そっぽ向いてしまった・・・。でもどうせコンビニでプリンでも買ってきたら機嫌治るんだろうなぁ、と考えつつもテレビに視線を飛ばす。
今やっているのは最近起こった犯罪についてだ。なんでも手から火を出す男が暴れ回って現在行方不明・・・とのことだ。え?アニメの見過ぎ?手から火?あぁ、実は数年前から変なウイルスが流出してからそんなラノベやゲームみたいな特殊な力を扱う人が現れているそうだ。今やこの病気について信じない人間などいないだろう。なんたって今回みたいにこの力を用いて犯罪行為をする輩が増えているのだ。信じないわけにはいかない。それに俺が信じてる理由はもう一つある。それは・・・
「葵、入学式いつだ?」
「え?えーと、確か4月6日だよ」
「楽しみか?」
「うん!楽しみ」
「【高度異能特務学園】・・・か」
それは、何を隠そう妹が【異能解離症候群】通称【IRL】にかかったので【高度異能特務教育学園】略して【異能学園】に通うことになったのだ。葵の力は
個体識別 非戦闘型
特殊固有能力系統
識別名 アスクレピオス
だったか・・・?
いや、実は俺もそこまで詳しくないんだ。葵が能力を得て(去年だったかな)その検査に行ったときにつけられたもので、確か能力としては《どんなものでも治すことのことのできる能力》だったか?治癒系の能力を持った人間は他にもいるそうなんだけど葵の治癒能力はかなり高くどんな傷でも治るそうで唯一の能力として識別名がつくらしい。そのような能力者を唯一無二の・・・神の力を持つ能力。【神想異能】(デウスディザスター)と呼ばれている。
アスクレピオス・・・ギリシャ神話で医学の神として登場する神・・・・・・。それは葵の能力まんまだ。葵が入学するのを見るのは楽しみである。
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西暦2032年 3月20日 PM10:34
IRLにかかった人間はアニメやマンガ同様に【能力者】と呼ばれている。それはやはり男の俺からしたらカッコいいと感じてしまうもので・・・こどもっぽいかな?でも、そう言うものに憧れを抱かなくなるとそれはもう男ではない(もちろん別のものに興味を持つ奴は居ると思う)と思う。大人であってもこういうのは憧れを抱くな相違ない。しかし今あるのは全部病気だ。特に他の不具合が起きないだけでアレは病気の症状なのだ。だから憧れはするがかかりたいとは思わない。誰も病気にかかりたい奴などいないからだ。
「ん・・・・・・?」
そんなことを考えていると路地裏に女の子が連れて行かれるのを目撃した。年は自分と同じぐらい。金色に輝く髪を二つ結びにして夜の月明かりをも吸収し綺麗に輝いている。え・・・、俺がここで何してるかって?そんなの葵の機嫌を治すためのプリンを調達しに来てんだよ。我ながら優しい兄だ。
「離して・・・ください!!」
「へへ、君の力じゃ俺たちには勝てねぇよ!!おらっ!こっちに来い!」
「・・・・・・・・・」
あまり聞こえない・・・。騒いでると思うんだけどなぜかここまで声が届かない・・・・・・何喋ってんだ?でも、態度からして女の子の方は嫌がってるみたいだ。大の男が数人で女の子を襲うとは・・・危険な世の中になったものである。
「誰か・・・!誰か助けてください!!」
その女の子は大人たちに引っ張られて路地裏に引き摺り込まれていく。あの路地裏の奥には少し広いスペースがあって、昔はうちの学校のヤンキーのベースキャンプだったはずだが・・・。まぁ、誰が連れて行かれようと俺の知ったことでは無い。・・・え?助けに行かないのかって?確かにラノベの主人公なら助けに行くであろうこのシチュエーション・・・。ここで助けに行けば俺にあの子からの恋愛フラグが立ち人生初の彼女ができることだろう・・・でも怖くない?もし俺のようなオタクくさいガキが行こうものなら、「おい、ここにイモくせぇクソガキいるぜw捕らえて見せもんにしたれ!」とか言われてフルボッコにされてしまうのだろう。うん、という訳で見なかったことにしよう。俺は早く家に帰って葵のご機嫌を取ってやらねばならないのだ。
「・・・・・・・・・」
それから明日の学校の準備もしなくてはならないのだ。なぜか先生の実験用マグネシウムをコンビニ(通販したらしい)まで取りに行かされたのはまた別の話だが・・・。
「・・・・・・・・・」
後花火って・・・まだ3月だぞ?早すぎないか?打ち上げが好きな人だからこれないと怒るんだよなぁ・・・。
「・・・・・・・・・」
*****
「おいおい、こりゃえれぇ上玉だな!スタイルも抜群だぜこりゃあ!!売らずに俺の奴隷として働いてもらおうか?」
「ちょっ、兄貴ずりぃよ!俺たちが遊ぶ分も置いといてくださいね!」
「バカやろう!こいつはもう俺の女になったんだ!テメェらはさっさと次の女連れてこい!」
「へーい」
ヤベェ、なんで俺ここにいるんだ・・・?確かあの路地裏をスルーして帰ろうとしたが・・・彼女ができるという千載一遇のチャンスの輝きに当てられてしまったのだろうか?気づけば彼らを追っていた。
「ヘヘッ・・・嬢ちゃんどんな遊びがお好みだい?」
「こ、こないで!!」
助けられれば晴れて彼女持ち(確定じゃないけどね?)ミスれば見せ物にされる。相手は3人、兄貴と呼ばれた厳つい男と着崩した制服を着た男が2人、兄貴と呼んでいたモヒカンの男が1人どこかへ行ってしまった。さて、どう出るか・・・やっぱ帰ろうかな?
「兄貴・・・」
すると制服を着た男が1人兄貴と呼ばれていた男に何かを言いに行った。耳のそばで話しているせいか、聞こえない。
「なに・・・?・・・・・・おい、そこに誰か隠れてるな!?出てこい!!」
「なっ・・・・・・!」
ば、バレた!?どうして!?物音も立ててないのに!!・・・ハッタリだ。隠れていればやり過ごせる・・・。
「確認に行け」
「了解兄貴」
まずいぞこっちを見にくるのか!?隠れられる場所はない・・・どうすれば・・・・・・!!
「っ!!」
カラン・・・
「ん?なんだ今の?」
その瞬間あたりが光と大音響に包まれた。その場にいたものは全員うずくまり悶えている。
・・・そう、俺以外は。
「さぁ、走るよ!!」
「!?」
「ま、まて・・・クソガキ!」
マジか・・・あのとっさの攻撃を防いだのか!?いや、でも防ぎ切れなかったのか少しよろめいてる・・・。今のうちに逃げないと!!
*****
「助けていただいてありがとうございます」
「いえいえ、連れて行かれるところを見つけたから・・・なにもされてないか?」
「はい、大丈夫です・・・。私、姫咲色葉と言います」
「俺は柏木天音だよろしく」
あれから少し離れた場所に俺たちは隠れていた。逃げる際に音に気づいたどこかに行っていたはずのモヒカン男に見つかりそうになり反対側へ来てしまったのだ。
「さっきの光は・・・」
「あぁ、あれ?『スタングレネード』だよ」
「す、スタングレネード!?」
「も、もちろん!本物じゃないぜ!?作り物だよ・・・」
俺はあの時落ちていたライターを使うことを決意した。最初はただ打ち上げ花火を使って注意をさらせるだけにしようと思ったのだが(先生のお使いの品)手元にマグネシウムがあることを思い出した(先生の通販物)。マグネシウムは燃やすと強い光を発する・・・。俺は打ち上げ花火を解体してその中にマグネシウムを大量に入れ火薬を入れ直し、点火・・・。結果かなりうまく行き今彼女をここまで逃すことに成功した。しかしまだ油断はできない。まだ路地裏にいるままだ。・・・それにここは。
「スラム街・・・」
そう、あの路地裏は入り口こそただのヤンキーの溜まり場だが、一度足を伸ばせばそこは外界から切り離されたスラム街へと変貌する。しかもこの場所は特に危ないと有名で、7年前・・・あの【IRL】の病原体の実験を行なっていた研究所があったとされる地だ。ここの人間は気性が荒く平気で殺人も行なってくる。慎重な行動が必要だ・・・。
「あの・・・私の力を使えばもしかしたらどうにかなるかもしれません・・・・・・」
「えっ・・・もしかして君は【IRL】にかかった能力者か!?」
「は、はい・・・私は【生物に対しての攻撃を増加させる】能力を持っています」
「・・・デウスディザスター、アルテミスの称号か」
アルテミス・・・狩猟と純潔を司る神。生物の命を取り扱う神だ。
「でも・・・だったらなんでさっき、捕まった時は使わなかったんだ?」
「それはこの能力には制限があるからです・・・」
「制限・・・?」
「はい、この力は増加する時もあれば増加しない時もあります。その値は私に戦う気持ちがあるか・・・。その大きさで変わります。・・・私は意思が・・・心が弱いせいでこの能力をうまく扱えません。あの時もあの不良の人たちが怖くて・・・」
なるほど・・・つまり1人で心細かったから力が増加しなかった。それではただの女の子と同じだけの力しか発揮できない。それでは男に女の力がかなわないのは日を見るよりも明らかである。
「でも、なんで今なら大丈夫なんだ?」
「それは・・・天音さんがいるから・・・・・・」
「お、俺・・・?」
おい待て俺、喜ぶな・・・!!まずはそれがどんな意味かを聞かないと大変なことになる。例えば「それは俺のことが・・・◯◯とかかな・・・・・・?」
などと言おうものなら。きっと「え?」みたいな顔で見られて口を聞いてくれなくなるかもしれない。まだプロジェクト『ハニースティール』(今考えた)は遂行されていない!
「・・・なんで俺なんだ?」
「信じられる人がついているなら・・・決意できます・・・・・・!!」
「今日出会ったばかりの俺にどうしてそこまで・・・?」
「・・・天音さんは私の命の恩人です。助けていただいた恩があります」
「ならその恩とやらでお願いしてもいいか?」
「な、何ですか・・・?」
彼女は一瞬身構えるような動作をしたが俺は気にせずに言った。
「敬語、取ってくれよ。俺ら多分同い年だろ?ならない方が喋りやすい。あと、友達になってくれると助かるかな。俺友達いないし」
ほんと悲しいことに友達ゼロだ。友達がいないから学校の変人(教師)と仲良くなったのだ。はぁ、彼女は無理でも友達くらいは欲しいよ。
「・・・ふふ、ごめんなさい。わかったわ、一緒に逃げましょ!」
「もちろんだ!」
そうして俺たちは出口に向かって走り出すのだった・・・。
はじめましてKaitoです!なろう投稿が初めてで緊張しました!!この話が誰かに刺さればいいなぁーと思いながら書いていたのですが、やはり今時はファンタジーと恋愛でしょうか?
自分は恋愛したことがなく、そういうシーンを書こうとしてみたのですが友人から「何もわかっていない」と不評だったので悔しさのあまり恋愛マンガやゲーム、小説を読み漁りました・・・。なのでなんとか恋愛要素を入れていきたいと思っています。
誤字脱字、言葉の意味を間違えている等があれば、教えていただけると幸いです。
話の中に出てくる理論などはあっているものもあれば、間違っているものもあります。あっているか間違っているかギリギリなラインや強行突破したところもあります(これらの方が多いかも・・・)。なのでそういう点での指摘は優しい目でスルーしていただけると少し気持ちが軽くなります・・・(指摘していただいてもいいです!頑張って直せるよう努力します!!)。
これからもこの小説をよろしくお願いします!!