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漫才シリーズ

漫才「ライセンス」

作者: まさかす

ボ=ボケ

ツ=ツッコミ

二人「みなさんこんにちはー」


ボ「早速ですが」

ツ「何でしょう」

ボ「ちょっと相談しても良いですか?」

ツ「何です? コンビなんで何でも聞いて下さい」

ボ「免許が欲しいんですよね」

ツ「持ってないんでしたっけ?」

ボ「ええ。君は持ってますよね?」

ツ「高校卒業前に取りました」

ボ「高校卒業前ですか? 随分と早いですね?」

ツ「そうですか? そのタイミングで取る人は多いんじゃないですか?」

ボ「そうなんですか……。知らなかったです……」

ツ「普通だと思いますけどね」

ボ「そうですか……。あ、それでですね、免許を持っている君にどうすれば取れるんだろうなって相談です。実際に取ろうとすると大変そうだし」

ツ「案ずるよりも産むが易しですよ」

ボ「そうですか?」

ツ「ええ、時間とお金がかかるだけで、それ以外特に心配する必要もないですよ」

ボ「確かに時間とお金はかかりそうですね」

ツ「技術も必要ですけどね」

ボ「技術も? まあ、そうか。確かにそうかもしれませんね。でも自信ないなぁ」

ツ「ちょっと試してみますか?」

ボ「試す?」

ツ「教習所のてい(・・)で私が教官役で君が生徒さん役で」

ボ「教習所? 教習所なんてあるんですか?」

ツ「試験場での一発試験てのもあるらしいですが、それは激ムズらしくてまず受からないと聞きますよ? なので教習所に行くのが一般的じゃないですか?」

ボ「なるほど……。しかし一発試験なんて物があるんですか……」

ツ「じゃあ私は助手席で」

ボ「助手席?」

ツ「ええ。君が運転席、私が助手席に」

ボ「車ですか?」

ツ「ええ」

ボ「はあ……そうですか……。まあ、良いですけど……。何か緊張してきました」

ツ「はは、そんな緊張せずに。では早速始めましょう」

ボ「ガラガラガラ」

ツ「何の音ですか?」

ボ「あ、ドアを開ける音です」

ツ「いや横開きのドアもなくはないけど玄関扉みたいな音はしないから」

ボ「あ、そうなんですか? 緊張してまして」

ツ「まあまあ、練習ですから緊張せずに」

ボ「はい。では改めて」

ツ「いや、私の後ろの席に座るんじゃなくて私の右側の運転席に座って下さい」

ボ「あ、すいません。緊張してまして」

ツ「はは、まあしょうがないですね」

ボ「はい、すいません」

ツ「では最初に座席位置を合わせて下さい」

ボ「はい」

ツ「いや私の方に向いて座らないで下さい」

ボ「あ、すいません。緊張してまして」

ツ「良いです良いです。ではルームミラーの位置を合わせて下さい」

ボ「はい」

ツ「いや、私を見る位置に合わせないで後ろを見るように合わせて下さい」

ボ「あ、すいません。緊張してまして」

ツ「良いです良いです。ではブレーキを踏んでエンジンを掛けて下さい」

ボ「エンジンと掛けましてブレーキと解きます。その心―――――」

ツ「いやそういう『かけて』じゃなくて」

ボ「あ、すいません。緊張しちゃって」

ツ「良いです良いです。じゃあ改めてエンジンをかけましょうか」

ボ「はい。じゃあエンジン掛けます」

ツ「はい、お願いします」

ボ「キュルルルルドガンドガンバリバリバリバリ―――――」

ツ「ちょっと待って! 何その音!」

ボ「近所に住んでいる子が乗っている車の音です」

ツ「それたぶん違法改造車の音だから! 普通そんな音しないから!」

ボ「あ、すいません。緊張しちゃって」

ツ「まあまあ、しょうがないです」

ボ「ブルルン」

ツ「じゃあブレーキを踏んでギアをドライブに入れて下さい」

ボ「はい」

ツ「ではブレーキを放して発進して下さい」

ボ「ねぇねぇ聞いて聞いて。私ね―――――」

ツ「違う違う! 『ブレーキと話して』じゃなくて『ブレーキを放して』です」

ボ「あ、すいません。緊張しちゃって」

ツ「まあ練習ですから良いです良いです。では交差点を右に曲がりますので、ハンドルを軽く切って下さい」

ボ「ギコギコギコ―――――」

ツ「ノコギリで切ってじゃないから。そもそも普通の人はノコギリを運転席に持ち込まないしね。持ちこんでいたら警察の御厄介になりかねませんよ?」

ボ「あ、すいません緊張しちゃって」

ツ「良いです良いです。では左右を確認して曲がって下さい」

ボ「はい」

ツ「じゃあ次は『止まれ』の標識があるつもりで止まって下さい」

ボ「はい」

ツ「左右を確認して」

ボ「はい」


 10秒ほど沈黙


ツ「ん? 何故止まったままなんですか? 左右を確認したら動いて良いですよ?」

ボ「いや、動けません」

ツ「は? 『止まれ』で止まって左右を確認したら動かないと」

ボ「でも標識は『止まれ』のままです」

ツ「いや『止まれ』の標識はずっと『止まれ』のままで『動け』には変わりませんから」

ボ「そうなんですか? 日本はハイテクだと聞いていたので『動け』に切り替わるのかと」

ツ「ああ、確かに『止まれ』のままで動くのはおかしな話ですね。でもここは動いて良いんですよ。『止まれ』の標識は『それ以上動くな』というホールドアップ的な意味では無くて、『そこで一旦停止して左右を確認しつつ進んで下さい』という意味ですから」

ボ「そうなんですか」

ツ「そうでないとどこもかしこも車が止まったままになりますからね」

ボ「ああ、そうなんですね。知りませんでした」

ツ「ははは、大丈夫ですよ。その為の練習でもありますから」

ボ「しかし命令口調で『止まれ』って書いてある場所で動くというのは、何となく背徳感がありますね」

ツ「ははは、そういえばそうですね。気にした事も無かったですが、他にそういう標識はあまり見ないですし、信号は赤の止まれから青の行っていいに変わりますもんね。まあ良いです良いです」


 しばらく運転


ツ「とまあ、こんな感じでやれば免許は取れますよ。ほかにも座学がありますが、それはそれで別途勉強して下さい」

ボ「はあ……座学ですか……」

ツ「ん? 何か?」

ボ「いや……その……」

ツ「何かあれば質問して下さい」

ボ「あの……」

ツ「何です?」

ボ「車の運転しかしてませんよね?」

ツ「それがメインですからね」

ボ「これで本当に許されるんですかね……」

ツ「許される? まあ、免許は取れるんじゃないですか?」

ボ「車の運転でですか?」

ツ「はい」

ボ「本当に許されるんですかね?」

ツ「そりゃ君次第ですけどね」

ボ「車の免許で何故に許されるんですか?」

ツ「どういう事ですか?」

ボ「免許って『これに免じて許してね』って事ですよね?」

ツ「まあ、免じてというか許可しますというか」

ボ「車の運転をして何故に浮気が許されるんですか?」

ツ「浮気?」

ボ「何でこれで浮気が許されるんですか? ドライブに誘ってご機嫌取れって事ですか? これで『浮気のライセンス』が取れるんですか?」

ツ「『浮気のライセンス』って何だよ! そんな物ねぇよ! 車の免許が欲しいって言ってたじゃないですか?」

ボ「免許が欲しいとは言いましたが車なんて一言もいってませんよ!」

ツ「一般的に免許って言ったら車の免許と思うでしょ?!」

ボ「思いませんよ!」

ツ「何でキレ気味なんすか!」

ボ「『殺しのライセンス』ってのがあるなら『浮気のライセンス』もあるでしょ!」

ツ「それ映画の話だろ! つうか言葉が物騒すぎるわ!」

ボ「じゃあ浮気はどうすれば許してもらえるって言うんですか!」

ツ「何キレてんですか! そんなの知らないですよ! そもそも前にも浮気してプレゼントで許してもらったばかりでしょ? 終わった話でしょ?」

ボ「またやったんですよ! どうすれば良いんですか!」

ツ「だから何キレてんすか! つうか学べよ!」

ボ「だったら一緒に謝って下さいよ! とりあえず一緒に土下座して下さいよ!」

ツ「何で私が君の奥さんに君の浮気の件で謝らなきゃいけないんですか! へたすりゃ私も怒られるでしょ!」

ボ「コンビなら一緒に地獄に落ちて下さいよ!」

ツ「しらねぇよ! 1人で地獄に落ちろ!」

ボ「見捨てないで下さいよ!」

ツ「しらないよ!」

ボ「だったら街中に『止まれ』みたいにして『浮気するな』って標識を立てといて下さいよ! 店前に『進入禁止』の標識立てといて下さいよ! そうしたら行きませんよ!」

ツ「そんな標識立ててる国なんて世界中のどこにもないよ! 立てたとしても速度制限ぽく年齢制限の標識位だよ!」

ボ「禁止されてなきゃするでしょ!」

ツ「しないよ!」

ボ「君も行ったじゃないですか!」

ツ「いや行ったけどさ……」

ボ「だいたいエッチなお店に行っただけで浮気って厳しすぎでしょ!」

ツ「確かに厳し過ぎだなとは私も思うけどさ……」

ボ「君だって『エッチな店行くな』って標識があったら行かないでしょ?」

ツ「そんな標識立てたらどれだけエッチが好きな国民なんだって思われるだろ!」

ボ「でも好きでしょ!」

ツ「いや好きだけど……」

ボ「行きたいでしょ!」

ツ「行きたいけど……」

ボ「なら行くでしょ!」

ツ「だから行くなよ!」

ボ「止まれの標識が無い所で止まりますか!?」

ツ「交通ルールと一緒にするなよ! そこはモラルの問題だよ!」

ボ「話になりませんね」

ツ「そりゃこっちのセリフだよ!」


ボ「…………あ、ひょっとしてそう言う事ですか?」

ツ「は? 何の話ですか?」

ボ「車の教習所に行くって事にすればバレないよと」

ツ「は?」

ボ「今迄の話は全て隠語だったって事ですね?」

ツ「隠語って何の話だよ」

ボ「一発試験とかお金が必要とかもそういう意味だったんですね」

ツ「どういう意味だよ! つうか何か卑猥に聞こえるからやめろ!」

ボ「じゃあ仮免とったら一緒にいきましょうね」

ツ「仮免って何のだよ! つうか何処へ行く気だよ!」

ボ「免許持ってる君が帯同してくれれば良いんですもんね」

ツ「はあ!?」

ボ「仮免でも免許保持者を帯同すれば実技教習しても良いと、そういう事でしょ?」

ツ「何の免許の話だよ! つうか話の流れ的に実技って言葉が卑猥に聞こえるからやめろ! それに私は運転免許は持ってるけど『浮気のライセンス』なんて持ってないよ!」

ボ「あれ? その際には初心者マークが必要なんですかね? まあ、初心者では無いですが。ははは」

ツ「何の初心者だよ! つうか話の流れで全部卑猥に聞こえるからやめろ!」

ボ「という事は今まで無免許運転してたって事になるのかな? だから怒られたのかな? ならしょうがないかな。ははは」

ツ「だから『浮気のライセンス』なんて存在しねぇよ!」

ボ「だとすれば店の中はアウトバーン(速度無制限道路)って事でXXXXXって事ですね!」

ツ「だから何の話をしてんだよ!」

ボ「あれ? あれあれ?」

ツ「あ? 何だよ?」

ボ「ひょっとして先程の『とまれ』の標識の話は『それ以上はダメよ♡』みたいな意味だったんですか?」

ツ「無免許で逮捕されちまえ!」


2021年05月03日 初版 


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